ノート:ベルクソン『道徳と宗教の二源泉』(1932)

 

道徳と宗教の二つの源泉 (ちくま学芸文庫)
 

 

*※本能と知性 自然的なものと人間的なもの 種・社会と個 ダイナミズム、跳躍・飛躍

 

(目次) 

第一章 道徳的責務 

・社会的秩序と自然的秩序 *禁止、服従 社会 有機体の細胞と社会 習慣、社会的責務 人間社会は自由な存在の総体 宗教

・社会における個人 *社会的自我 ロビンソンやキプリングの孤独人

・個人における社会 *良心 社会的自我と個人的自我の葛藤 罪人の心理 社会的責務 習慣的、多くの責務は自動的に果たされる

・抵抗への抵抗 *カントらの道徳説 リウマチの比喩 無意識的な習慣か思案すべき義務か 責務の全体 せねばならないから、せねばならない 責務と理性は別物

・断言命法について *蟻たち 本能的な形式

・責務と生命 *知性と本能、原初は相互浸透、発展して分離 道具、社会 蜜蜂や蟻の巣、人間社会 

・閉じた社会 *閉じた社会と開いた社会 戦時の道徳 社会的本能は閉じた社会をめざす 国家と人類 家庭/公民社会・国家/人類一般、祖国愛と人類愛との断絶 宗教は神を、哲学は理性を介してのみ一挙に人類普遍を説く

・英雄の呼び声 *完全な道徳とは 極小と極大、質的差異、非個人的還元と特異な人格に体現、法則とモデル(呼び声) 真似たいという願望 社会道徳と人類道徳との質的な差異 ※自然的な世間と人為的な社会、ヨーロッパ的発想 人が集まれば人類になるわけではない

・開いた魂と閉じた魂 *個と全体が一致した閉じた魂 開いた魂、全人類、自然全体 

・情緒と推進 *音楽は万人を理屈なくその感情に引き入れる 同様に道徳先達者も

・情緒と創造 *創造された芸術 創造された感情 ルソーによる自然 日本の音 中世の恋愛、神秘学 情緒、感情、感性 知性以上の情緒 創造する情緒、文学・芸術、科学的発見、天才 ※インスピレーション

・情緒と表象 *道徳と情緒 例えば、キリスト教と愛 道徳の英雄たち 圧迫と抱負、習慣・本能と人物・人格的

・解放 *快や富からの解放、無関心 知性では隣人愛は得られない 英雄的行為 魂から神、神から人類への流れ

・前進 *魂の障害 ゼノンのパラドックスが如き 生命の真実と分析知性 抱負、飛躍の力 閉じた社会のための人間の道徳的本性 自然のプランを超えるもの 非生殖的な性行為 自然を裏切る 戦争 生の飛躍 所産的自然から能産的自然へ

・閉じた道徳と開いた道徳 *静止と運動 快楽と歓喜 福音書は開いた道徳 ソクラテス

・閉じたものと開いたものとの間にあるもの *開く魂 静止と運動の間、知性以下と以上の間、知性そのもの、観想 圧力と豊富

・自己尊敬 *ローマ市民の自尊心

・正義 *平等、釣り合い、償い 喧嘩、仇討ち、反座の刑の法則 階級社会 絶対的正義への跳躍 人間的平等の思想、キリスト教 正義、平等、自由 閉じた正義と開いた正義との質的な差

・威圧力と抱負 *理性 人間の社会責務は蟻や細胞の紐帯のようなものだった

主知主義 *神秘的な魂と純粋な抱負 2つの道徳、命令の体系と呼びかけの全体、中間に知性 蟻の巣の哲学者

・生命の飛躍 *道徳の二源泉 社会的圧力と愛の飛躍

・躾けと悟り *道徳教育の2つの方途 宗教的、神秘的 個と全体、個人と社会

 

第二章 静的宗教

・理性的存在における背理 *理性があるから迷妄もある、動物に理性も宗教もなし 知性は進化したか 

・想話機能 *人は生きねばならない 宗教 想話・仮構作用による経験・事実が迷信を生む ※人は見たいものを見る、見れるものしか見れない 

・想話作用と生命 *宗教は必要の故に存続してきた

・『生命の飛躍』の意義 *生命や進化は単に物理化学的なものか 内的推進力 「生命の飛躍」(エラン・ヴィタル)の諸観念 知性と社会性

・想話作用の社会的役割 *人間社会、社会と個人 秩序と進歩、相互相補的 本能と知性は生命が生きる2つの道具・手段、しだいに分離した 純粋本能の支配する昆虫社会 想話作用は本能の残滓か 宗教は知性の社会解体力に対する自然の防御反作用 古代の慣習、法律、道徳、宗教 道徳的病気、正義の女神

・断片的人格 *※逆順序に再構成することが哲学

・秩序破壊に備えた保障 *原始社会や原始人におけるタブー

・解体に備えた保障 *知性による死の認識 宗教はこれへの自然の防御的対応

・有益な仮構作用の一般的テーマ *死者の永続 魂 死後の生存

・非条理なものの異常発達 *魂の、精霊の観念との結合

・予知可能でないことに備えた保障 

・成功の意志 *願い 運を味方に

・偶然 *人の死や病気 なぜ? 人間的意味が問われる 偶然的なものは認めない 小銃で狙われて死ぬか砲弾で誰彼なく死ぬか 悪魔、呪い 意図、意向(動機) ※偶然論にも必然論と同じく時間遡行がある、たどれば必然だが人間には自由(系の乗り換え可能性)がある

・文明人における原始的心性 *信仰の起源は知性の、自然の防御的反作用 W.ジェイムズの地震記 (意図などない自然現象か、意図ある警告あるいは制裁か) 無人称の恐怖ではなく人格的な親しみ 突発的な大事件への冷静で客観的とさえ言える対応 自然の、本能の知性への防御的反作用

・魔術 *未開人の研究の意義 本能・原初的信仰を蔽う知性・科学 魔術・宗教/科学 神々・精霊、現世利益(マナ・霊力)

・魔術の心理学的起源 *まず魔術(願望達成の祈祷行為)ありき、この力を一般化概念化したものがマナ  

・魔術と科学 *ともに自然の操作や征服をめざす 実効性の有無の違い 進歩と障害

・魔術と宗教 *「宗教」をどう解するか次第

・精霊信仰 *アニミズムの前に自然全体か やがて精霊と神々、マナ・霊力に二分 静的宗教から動的宗教へ ギリシアローマ神話

・類として取扱われた動物 *動物崇拝 古代エジプト 原始的宗教からの脱出

・トーテミスム *類と種 血統の二元化

・神々の信仰 *静的宗教は過剰な知性の防止弁、知性以下、自然的な宗教 人間進化の一時停止:知性、危険防止の想話機能、魔術、原初的アニミズム 進化の再開、動的宗教(知性以上)へ 中間形態、原初的アニミズムと魔術による変奏曲、精霊信仰、神話と古代文明(エジプトからローマまで)

・神話的幻想 *世界の神々と神話 ※日本のイザナミら神々も

・想話機能と文学 *ギリシア神話ローマ神話 分析と直観、跳躍・飛躍

・神々はどんな意味で存在していたか *神話の多神教潜在的一神教

・静的宗教の一般的機能 *祭祀や儀式 祈祷 供犠、動植物、特に動物の血、共食 自然の意図、自然が知性をもった人間に与えたものが宗教 静的宗教は個人を社会を愚かな知性の暴走から守る機制 道徳と宗教は同一ではない、一般道徳と国家道徳宗教は違う

 

第三章 動的宗教

・宗教という言葉の二つの意味 *進化の一時停止、静的宗教 再飛躍、動的宗教へ

・なぜ同一語を使用するか *神秘主義

ギリシャ神秘主義 *密儀、エレシウス、ディオニソス(酒の神)、オルフェウス W.ジェイムズの亜酸化窒素 オルフェウスプラトンプロティノス 

・東洋神秘主義 *神秘学と弁証法ギリシアでは別物、他所では混合 インド、特に仏教 輪廻、神々も救いを求める ソーマ(酒)、ヨガ、神秘主義 観想、解脱、涅槃、行動しない、厭世主義

キリスト教神秘主義 *愛の行動、完全な神秘主義 神秘体験の記述

神秘主義と革新 *人間知性は自分の食物を自然や他者と争奪するための武器と道具を得るためにある 待つこと、修道院・修道会 神秘主義は書かれない 神秘主義の燃焼、巧妙な冷却化した結晶が宗教 宗教ではなく信仰の復興・リヴァイバル 福音書におけるイエスの役割(ユダヤ教のリヴァイバル)の反復、模倣者・継承者

イスラエル預言者たち *唯一行動的

・神の存在 *アリストテレスの神?、哲学者の神 プラトンイデアアリストテレスの思惟の思惟 運動や時間に対して不動で永遠

神秘主義の哲学的価値 *神秘的体験は病気、狂気や詐術ではない 同一体験 本能と知性、直観と分析 神秘的体験の直観性

・神の本性 *哲学的な擬似問題は知性の構造に基づく錯覚 神秘家の見神、神は愛、愛の対象

・創造と愛 *2つの著作法 人類が神を必要とするように神も人類を必要とする 地球における生命の存在理由は人類 『創造的進化』の結論を超える 生命と物質は創造の二側面 愛し愛されるべき運命 創造的エネルギーそのものである神 進化のこぼれ屑である多数の種 道具性や物質性を克服すること、つまり再び神を見出すこと

・悪の問題 *人間は卑小か 広大無辺の肉体 デカルト人間機械論 ライプニッツの弁神論 部分の除去は全体の排除 全体、全能は偽概念 ※全体を全体と評価できるメタ視点が必要 哲学であるなら経験から立論すべき

・永生 *彼岸、魂の永生も経験から思考すべき 

 

第四章 結び ―機械学と神秘学

・閉じた社会と開いた社会 *閉じた社会は相互敵対する社会 開いた社会は全人類を包容するもの 道徳的革新 天才による飛躍、動的宗教 純粋な主知主義が還元する「進歩的」道徳主義 ※相対主義? ※社会文化水準、教育、社会教育は重要

・自然的なものの永続 *閉じた社会は変わらない スペンサーの社会進化論への誤解

・自然社会の性格 *人間は小社会のために作られている 大国家の中で国民はどんな政治を良い政治だと言えるか 大科学者等に比べて大政治家は稀有 小社会の拡大、戦争と征服 ポリスと国家の愛国心 首長=寡頭政 人間の残虐さ

・自然社会とデモクラシー *自然社会は階級社会、王政、貴族政 デモクラシー、ルソーとカントによる宗教的基礎 デモクラシーは自然とは逆ベクトルの営為 

・自然社会と戦争 *自然社会の特徴:自己抑制、団結、階層制、首長の絶対的権威→規律、戦争精神 所有権争い 偶然的な喧嘩と決定的な戦争 欧州大戦 人は神か、狼か 総力戦と最新兵器・武器 国際連盟 閉じた社会と開いた社会

・戦争と産業時代 *戦争の原因、人口増加、販路喪失、燃料と原料の欠乏 産業文明や機械は人類に幸福をもたらしたか

・傾向の進化 *親世代と子世代のギャップ 利便と不愉快さ デモクラシー 善政と過誤 不満足の強調

・両分と二重狂奔 *生物は分散的に発達する 両分・二分法 人間においては振り子運動のように両極に行ったり来たり 両分の法則、二重狂奔の法則、二者・二国が対立抗争するドラマ 中世の禁欲的生活から近代の慰安と贅沢を求める生活へ 哲学の快楽主義と禁欲主義 生活の単純化と複雑化 ここにも周期的両分があるか

・単純生活への可能な復帰 *物理学と化学、生理学と医学 食欲、性欲 今日の文明全般が扇情的 かつては香料を求めて大航海、今では食品店で入手可能 自動車

・機械学と神秘学 *機械技術(テクノロジー)と科学は違う テクノロジー産業革命で人間自身が生み出したもの 重農主義が望ましい 産業主義はただ販売利益のために発明し製造する 18世紀の百科全書派、発明精神(テクノロジー)とデモクラシー、背景に宗教改革ルネサンス 道具から機械へ 精神生活を求める神秘学は機械学を招き、機械学は神秘学を要求する 帝国主義は「神秘主義」(静的宗教)になる(セイエール) 神秘的天才を待ちながら 物理科学と精神、精神の学 脳髄 心霊学 快楽と歓喜 人間はただ生存するために生きるのか、それとも



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ヒューマニズム、ヨーロッパ人間中心主義の匂い

 整合性、調和、美、屁理屈、常套句、真理 公式的図式的

 テイヤール・ド・シャルダン 創造的進化 目的論、形相因、可能態

 

物質と記憶』で実体主義へ転落 物質と精神

 禅的、不ニの弁証法

 

「本能」という言葉

 本質主義 トートロジーではないか 

 

「自然が為した」は理神論? 「責任は人間にあるとともに自然にもある」P.353

シャルダンの宇宙進化論

存在の大いなる連鎖GCB

 

宮崎隆  ベルクソン『道徳と宗教の二源泉』の理論構成.pdf(横浜国立大学教育人間科学部紀要2016)

 引用ページ:A-266/B-345/C-67/D-268/E-324/F-372/G-66/H-18/I-225/J-141/K-315

*『二源泉』は神秘説の哲学 ソクラテスの立場 ソクラテスプロティノスではない

 愛の躍動 開かれている絆関係と自我との間の高次の均衡 呼びかけ

 ソクラテスとは今ここに踏み留まりつつ未来へ向かう、 対象なき永遠の運動のこと

 

思考と動き (平凡社ライブラリー)

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