ノート:ベイトソン『精神と自然―生きた世界の認識論』1979

精神と自然―生きた世界の認識論

精神と自然―生きた世界の認識論

 

ベイトソン『精神と自然―生きた世界の認識論』1979 ベイトソン:1904-80

 佐藤良明訳 思索社刊 1982年版

 

(目次) 

謝辞

 *ニューエイジ リンディスファーン・センター エサレン協会

1 生きた世界への誘い 

 *「進化的な考え」「学校の生徒もみんな知っておる」 学校で真に重要なことは教えない 生物、進化、科学 環境適応 聖蹟サクラメント)とエントロピー プロレマ(非生物)とクレアトゥラ(生物) 結び合わせるパターン、生物の共通性 系統発生的相同、連続的相同 形態の発生的対称・非対称 生物種の類似性 メタパターン 精神、観念 ※幽霊、モノではない 巻き貝 ※科学は自然のメタパターンを捉えるもの 生物は精神を持ち、物語で考える ※環境情報 コンテキスト(文脈)の中での意味 コスモス感の喪失、エコロジー思想の本源 「存在の大いなる連鎖」 ネットワーク、マトリクス

 

2 学校の生徒もみんな知っておる

 *前提 ※自動、無意識、ロボット、最上層・表層

 その1―科学は何も証明しない *知覚は有限、識閾を超えられない ※全体は不可知

 その2―地図は土地そのものではなく、ものの名前は名づけられたものではない *論理と感情 左脳と右脳 命名は分類、クラス分け

 その3―客観的経験は存在しない *私の痛み

 その4―イメージは無意識に形成される *知覚の過程と産物・結果 無意識の効用 ※自動的に見えていると意識的に見ている 

 その5―知覚された世界が部分と全体に分かれるのは便利であり、必然なのかもしれぬが、その分かれ方の決定に必然は働いていない *複雑図形の伝達 記述、説明、解釈の恣意性

 その6―発散する連続は予測できない *ガラスの割れ方、鎖の切れ方、沸騰の始まり 個と類の論理階型の違い、個がわからない 歴史の担い手、進化論はダーウィンかウォレスか マルクス主義歴史論の誤り(説明できていない)は類と個の論理階型混同、誰かがわからないから予測できない

 その7―収束する連続は予測できる *発散と収束、論理階型 発散は類の中の個を追う、収束は個の集団としての類を追う 確率計算 歴史と個人

 その8―「無から有は生じない」 *進化は連係進化 情報では無も技量によりコンテキストたりうる エピジェネシス(後天的発現、発生)、進化と学習 発生とトートロジーは反復と複写 進化と学習はランダム、探求と変化 両者を結ぶ説明という橋

 その9―数と量は別物である *非連続と連続量 パターン 自然界の数やパターン 数のトートロジー、無限の言い換え、説明 ある数と「たくさん」

 その10―量はパターンを決定しない *パターンは量のメタ階型

 その11―生物学に単調な値は存在しない *適度(白か黒かではない、グレー) ※中庸、過ぎたるは及ばざるが如し、ギリシア哲学

 その12―小さいこともいいことだ 4倍体の馬の物語 *生物の大きさ 体長、表面積、体積・質料  

 その13―論理に因果は語りきれない *因果と論理は別 因果には時間あり、論理に時間なし

 その14―因果の逆転はあり得ない *目的因 適応という問題

 その15―言語は通常、相互反応の片側だけを強調する *日常言語と科学言語

 その16―「安定している」または「変化している」と記述される現象の側で、そうした全体的記述の各部分が記述されている *サーカスの綱渡り、生命体のホメオスタシス 論理階型

 *グルーピング 1-5:認識の限界 エイムズの実験 6-8:エントロピー、ランダムと秩序 9-12: 13-16: 

 

3 世界の重なりを見る 

 *理解のボーナス

 ケース1―差異 *2つあっての差異 隻手の音声

 ケース2―両眼視覚 *2つの差異(論理階型)から奥行きの発生

 ケース3―冥王星のジャンプ *変化に気づくための工夫

 ケース4―シナプス加重 *階型区分

 ケース5―まぼろしの短剣 *マクベスの幻影分析

 ケース6―異句同義 *代数学トートロジー 奇数の積み上げ計算、論理階型

 ケース7―2つの性 *異常の抑制と交配の多様性

 ケース8―うなりとモアレ現象 *2つのパターンによる第3のパターン発生 ※生命現象とは沸騰でありうなりである

 ケース9―記述・トートロジー・説明 *左右は内的言語で、独立定義は不可能 説明での欺瞞、詐術 トートロジー、論理のすり抜け、すり替え等 ※錯誤もあり

 *「私の」認識論を求めて 進化、思考、適応、発生、遺伝の世界(精神)のメタ科学

 

4 精神を定義する

 *心身二元論の克服に向けて

 基準1―精神とは相互に反応する部分ないし構成要素の集体である *原子は精神ではない

 基準2―精神の各部の間で起こる相互反応の引き金を引くものは差異である *精神は変化、出来事に気づく、知覚する 変化を知る方法:時計、カレンダー エネルギーと情報

 基準3―精神過程は傍系エネルギーの随伴を必要とする *馬を水辺に連れていくことと馬が水を飲むこと、水栓をひねることと水が流れ出ること

 基準4―精神過程は循環的(またはそれ以上に複雑な)決定の連鎖を必要とする *フィードバックシステム、論理階型

 基準5―精神過程では、差異のもたらす結果を、それに先行する差異の変換物(記号化されたもの)と見ることができる *アナログスイッチとデジタルスイッチ、量と数、連続と非連続 脳はアナログかデジタルかという問い 生態系はアナログフィードバックシステムか 鋳型コーディング(傷の修復)、指差しコミュニケーション(直接指示、部分提示)

 基準6―これら変換プロセスの記述と分類は、その現象に内在する論理階型のヒエラルキーをあらわす *論理階型 メタ・コミュニケーション パブロフの犬、ダブル・マインド イルカ調教、メタコンテキストの学習 探求、犯罪、遊び 論理階型の誤り 因果という論理へのこだわり

 *自律性、自己制御、フィードバック 死、組織崩壊、フィードバック破綻 情報、学習、記憶、エネルギー、論理階型(混乱の可能性あり) 美意識 意識

 

5 世界の区切りを動かす

 *自他の区別、境界はあいまい ※精神はプラグマティスト 二重記述、両眼視覚、「関係」の先行、新しい論理階型 関係メカニズム:刺激・反応・強化(反作用)

 1「汝自身を知れ」 *自己、作り事、道具 異種動物間の遊び、相互関係・システム構築、情報・環境変化 二重記述:遊び、探求、犯罪、精神病 探求:自己探求、克己 

 2 トーテミズム *エコロジカルな関係、紋章の動植物 神話のイソップ童話

 3 アブダクション(abduction) *アナロジカル、相関的観方 二重要件、二重規定

 

6 大いなるストカスティック(stochastic)過程 ※確率的、淘汰的

 *進化、相同ホモロジーと適応 ランダムの重要さ、遺伝でも学習でも ※偶然と必然、自由と意思 種の進化と個体の体細胞的学習、どちらも確率淘汰的プロセスだが論理階型が異なる ダーウィニズムは精神・自由意志を排除 種進化と個体学習のシステム統一が生命現象

 ステップ1―ラマルク学説の誤り *獲得形質の遺伝への3反論 単に自然淘汰なら偶然的・デタラメすぎる、ラマルク流なら必然的すぎる 

 ステップ2―用・不用 *種の進化と個体の適応変化 経済性、柔軟性 不可逆な形質適応(順化)か可逆的な機能適応か 遺伝的変化は変数のバイアス・スイッチの変更

 ステップ3―遺伝的同化 *体細胞的変化による表現模写、そして遺伝模写

 ステップ4―体細胞的変化の遺伝的制御 *論理階型の輪、ヒエラルキー

 ステップ5―「無から有は生じない」―その発生版 *情報により(誤情報でも)受精卵の細胞分裂は始まる 器官の左右対称、非対称 情報の欠落(3→2次元情報)は非対称を対称に生じさせる

 ステップ6―相同(ホモロジー) *系統発生

 ステップ7―適応と耽溺 *過剰適応 

 ステップ8―ストカスティックな過程、発散する過程、収束する過程 *ランダムと制御、革新と保守

 ステップ9―2つのストカスティック・システムを比較すること、組み合わせること *ランダムと選択・淘汰システム ランダムな遺伝的変化と反応的な体細胞的変化、発生と適応、内的と外的、デジタルとアナログ 進化と思考の比較 名前・名づけとプロセスの螺旋構造

 

7 分類から過程へ

 *脳と精神、モノと名前・観念、交差しない平行性・トートロジー、論理階型のジャンプ 各生物が持つ知覚世界 トートロジーと記述、形態とプロセス、外(外部世界・森羅万象、自己身体や他者を含む)と内(私たちに知り得るのは観念のみ、他は一切知り得ない)※私秘性、独我論 文化人類学研究での類型化・名づけとプロセスの弁証法的往還 キャリブレーションとフィードバック、高次論理階型と低次論理階型 室温調整、スピード違反取締 システム制御レベルのヒエラルキー入れ子構造、マトリョーシカ人形 ※パラドックス再帰性、自己言及 存在の階層:原子、分子、細胞、器官、個体、種、類、…)、短絡は不可 クラスのヒエラルキー、回帰性の等級 不変と変化、パルメニデスヘラクレイトス、ニワトリと卵 時間の問題、不連続性、閾(限界) ※普遍と個、個は死に普遍は生きる

 

8 それで?

 *父と娘の会話 書かれざる・次に書くべきテーマ、美、意識、神聖、その三角形 ※『天使のおそれ』

 ※世界の矛盾、必ず死ぬのに生きている メタシステム、生かされている

 

付記―時の関節が外れている 1978

 ※弁証法:対立項A・Bの止揚ではない、次元の異なるシステムの統合、有効なプラグマティズム(システム内正解ではない)

 

用語解説

 

訳者あとがき―本物の対抗文化的知性

  ※対抗文化的:非オーソドキシー *メタファー

 

(2001年改訂版目次)

1 イントロダクション

2 誰もが学校で習うこと

3 重なりとしての世界

4 精神過程を見分ける基準

5 重なりとしての関係

6 大いなる確率的過程

7 分類から過程へ

8 それで?

付記 時の関節が外れている

 

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13 生成のコミュニケーション(G. ベイトソン)  矢野智司 (『人間学命題集』)

 *サイバネティックスのフィードバックシステム、自己ー環境の循環回路としての精神プロセス。論理階型論、パラドックス。情報に関する情報(コンテクスト、メタ・メッセージ)とメッセージのダブルバインド分裂病、一方でソクラテス対話法、禅問答。病理の一方で、回心や覚醒をもたらす。遊び、メタファー、ユーモアはパラドックスのコミュニケーション。

 

レイン、ラカン メルロ=ポンティ(※意味と無意味、コンテンツとプロセス、言語と非言語)

 

詩的、ポエジー バシュラール ニューエイジ

 

AI以前 サイバネティックスの時代

 

進化

 

スピード

 

時代の変化も階型変化

 土台が変わる 延長線上にはない 真のリーダーは豹変しなければならない

 

神秘性と科学性

 

 

眩暈、酩酊、いかがわしさ

 

世界の秘密に触れている

 宗教、秘教、哲学奥義、世界の底 人間の秘密

 

グレゴリー・ベイトソン+メアリー・キャサリン・ベイトソン

『天使のおそれ ─ 聖なるもののエピステモロジー』書評

 

エルンスト・カッシーラー

『英国のプラトン・ルネサンス』書評

ベイトソンプラトニストだった

 

デカルトからベイトソンへ ――世界の再魔術化
 
精神の生態学

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