ノート:大森荘蔵『知の構築とその呪縛』
(目次)
文庫版へのはしがき
*常識から自然科学へ、略画から密画へ 論理的科学史 「心」の排除、価値からの自由・無縁、全世界はいわば死物(伊藤仁斎)
1 概説的序論 *近代科学以前と以後の近代的世界観
世界観の交替 *死物的自然観/心のありか/現代の世界観の誤り *密画化厳密化は常識を超える/活きた自然との一体性/感性の復元の可能性
2 略画的世界観
細部による理解の限界 *例えば植物生長は人知を超える/不透明による理解の限界 *見えないこと/心の透明性 *私秘性、他我問題/「私に擬して」 *「自分と同様」と感じる範囲の違い/略画的世界観 *目的因果論
3 日本における略画世界
古代日本の神々/日本の霊たち/朱子学/陰陽二気論/理と気が自然と人間を貫通/天地自然は活物 *王陽明、荻生徂徠(聖人には至れず、丸山真男は誤解釈)/伊藤仁斎の場合 *人倫、人間中心主義
4 西欧古代中世における略画的世界観
古代ギリシアの生きた自然 *アナクサゴラス/魂と物質 *エピクロス/アリストテレスの霊魂/パターンの認識/錬金術/略画の細密化
5 略画の密画化、その始まり
人体地図/西洋古代中世の人体地図/生命の原理/動物機械/プネウマ *気息 生命プネウマ、霊魂プネウマ/プネウマと霊魂原子/ハーベイとプネウマ説/略画から密画へ/数量化の不可欠性 *血液量の算定/死物世界観への進行
6 略画の密画化、不可避の過程
少しく精しく追想する/自然で無理のないこと/略画から密画への過程/天文学における密画化/略画天文学の破綻/ガリレイの密画的観察 *ガリレイの望遠鏡と天才的洞察:月面は凸凹であり、われわれは太陽光と同一方向から見ている。月の影は地球の影、すなわちわれわれの地球も月同様に宙に浮いている天体である/太陽の黒点の発見/新星の距離決定における考察/地球の差別視の訂正/天動論者の密画的論駁/ガリレイの密画的回答
7 密画化と数量化
「整合性」の必要/密画的描法による不整合の暴露/動力学における密画的思考の萌芽 *ガリレオとアリストテレス主義者シンプリチオ/密画描写の本質としての数量的描写 *『新科学対話―機械学および地上運動に関する2つの新しい科学についての対話および数学的証明』/略画的世界観との対立/数量化に対する誤解 *シンプリチオ継承者としてのフッサール/数量化の意味 *数量化は現実を抽象化できない、性質を比較できるものにするだけ ※微妙
8 密画の陥穽―物の死物化
細密描写の対象/根本的誤解/「死物」物質の概念/裸にされた「物」/現代科学の基本的物質観
9 感覚的性質のストリップ
無人の死物世界/感覚は主観的印象/感覚的性質の所在/デカルト生理学の基本的構図/感覚産出機構の謎/自然の数学化/知的革命の革新/フッサールへの反論/道具としての数学
10 二元論の構造的欠陥
*主客二元論、第一性質と第二性質との分離
誤解の上に立つ構図/バークリーの批判/デカルトの反論/感覚的な形状と幾何学的な形状/デカルトの誤り/デカルトの方法的懐疑 *本当・真があるとの前提/だが懐疑は致命的、バークリーの指摘 *写真に写る街は実在するか不可知
11 二元論批判
現代科学は誤りか/ヒュームの批判 *知り得るのは知覚だけ/可感的な性質なき物体/二元論は不可知論を内蔵/カントの同様の批判/現代のわれわれは?/「重ね描き」 *多重の答え、いくつもの「正解」/現代科学と重ね描き
12 原子論による密画描写
時間的空間的描写の終点/点描法/「場点描」と「原子論描写」/「変化の描写」/「不安」と「同一」 *エレア学派のパラドックス/「同一」の意味 *論理階型・クラスの違い/「同一性」の指標 *煙の同一性/原子論描写/古代原子論/エピクロスの原子/知覚因果説 *見える・見えないで区別、原子=不変=真を求める性癖
13 人体の密画描写と知覚因果説
人体描写の密画化 *望遠鏡と顕微鏡/デカルトの人体描写/人体機械/人体の機械化・死物化 *オートマトン(自動機械)/知覚因果説 *「機械の中の幽霊」ではなく松果腺連結?/投影の困難/知覚因果の難点/方法的懐疑 *知覚は説明不可能なトートロジー
14 物と感覚の一心同体性
科学は感覚を説明できない *物理化学過程は精神心理現象ではない/科学者の実際/錯覚論法/幻滅論法の知覚因果説への影響 *知覚因果説は定義、単なる「同定」化/「物」と「知覚像」の一心同体性 *否、むしろ同体。主観=客観/感覚の十人十色性 *知覚=モノはらっきょ/感覚もまた客観的
15 自然の再活性化
*知覚とモノが別物なら知覚因果説は不成立(越境だから)。だが、知覚因果説は科学的常識として横行
視覚風景は透視風景/透視風景の遠近順/透視構造の有界性 *われわれの視線カメラはどこにあるのか/知覚因果説解明の謎 *覗くのではなく、すでに見えていることが肝心/知覚は脳産でない *知覚「像」ではなく実物視/前景因による論理的変化/日常描写と科学描写との重ね描き/迷路の呪縛/近代科学と活自然との共生/活きている物と自然感/感性を取り戻すということ
1自分の褌 2「論理的科学史」の構想 3「重ね描き」から「物活論」へ
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世界観転換への誘いであるが、近代科学的世界像は微動だにしていない。人間たちは変わらない。また、残念ながら「以前=中世の前の古代」が理想郷(真なる世界観)だったとも思われない。
多重的、多層的、論理階型の認識モデル
モノと心はメビウスの輪、同じでないが一体 物理知覚が精神知覚へ、知覚はいつの間にか認知・認識へ
ノート:デーデキント『数について―連続数と数の本質』
Julius Wilhelm Richard Dedekind
STETIGKEIT UND IRRATIONALE ZAHLEN. 1872
WAS SIND UND WAS SOLLEN DIE ZAHLEN ? 1887
(目次)
第一篇 連続性と無理数
序文
1 有理数の性質
2 有理数と一直線上の点との比較
3 直線の連続性
4 無理数の創造
5 実数の領域の連続性
6 実数を扱う計算
7 無限小解析(微積分)
第二篇 数とは何か、何であるべきか *エピグラフ「いつでも人間は数論する」
第一版序文 *数学は論理学の一部 数学は人間精神の創造物(→エピグラフ)
第二版序文
第三版序文
1 要素の集合 *事物、われわれの思考の対象となるもの ※概念・観念
2 集合の写像
3 写像の相似、相似集合
4 集合の自分自身の中への写像
5 有限と無限 *私の思考の世界、われわれの思考の対象となり得るあらゆる事物の全体Sは無限である(不証明)
6 単純無限集合、自然数系列 *自然数、人間精神の自由な創造、数の科学・数輪
7 「より大きい数」と「より小さい数」
8 数系列の有限部分集合と無限部分集合
10 単純無限集合の類
11 数の加法
12 数の乗法
13 数の累乗
14 有限集合の要素の総数
解説
*連続性と無理数の数学史 無理数とは無比数(irrational number)のこと 有理数域は稠密だが、直線には無理数域がある 代数的数域を超える超越数(対数、π、三角関数) ギリシア数学3つの作図題 ピタゴラスプロジェクト(有理数)の失敗
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※直線、点の連続性の神秘 すべての実数がここにある(虚数は別方向にある)
自然数(正の整数)、負の整数、小数、分数(表現可能数)、直接表現できない無理数
※なぜわれわれには無限切断・分割が可能か ∵思考・概念であるから
※ベイトソンの「数と連続量・量の違い」から。誤解(早とちり)があった。
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自然数:natural number 整数:integer 分数:fraction 小数:decimal
有理数:rational number 無理数:irrational number
実数:real number 虚数:imaginary number
代数的数:algebraic number 超越数:transcendental number
複素数:complex number
https://www.denken3.net/lecture-s/list/s007/
https://miz-ar.info/math/algebraic-real/posts/00-intro.html
ノート:ローレンツ『ソロモンの指環』
コンラート・ローレンツ『ソロモンの指環―動物行動学入門』日高敏隆訳
(目次)
まえがき
1 動物たちへの忿懣 *ハイイロガンその他
2 被害をあたえぬもの―アクアリウム *生物共同体、小さな自然
3 水槽の中の二人の殺人犯 *ゲンゴロウの幼虫、ヤンマの幼虫ヤゴ
4 魚の血 *トゲウオ、トウギョ 婚姻ダンス、闘争ダンス
5 永遠にかわらぬ友 *コクマルガラス 夫婦の形 人間的なあまりに人間的な、いや人間の方が動物たちを受け継いでいる
6 ソロモンの指環 *動物たちのコミュニケーション能力 同種内での身振り言語(前言語) 人間の意図の理解 非言語的能力
7 ガンの子マルティナ *ハイイロガン
8 なにを飼ったらいいか! *ホシムクドリ、ゴールデンハムスターその他
9 動物たちをあわれむ *動物園
10 忠誠は空想ならず *人間とイヌ
11 動物を笑う *困らされたこと
12 モラルと武器 *強い武器を持った生物種は「モラル」(騎士道)を持つ
訳者あとがき
ノート:ベイトソン『精神と自然―生きた世界の認識論』1979
ベイトソン『精神と自然―生きた世界の認識論』1979 ベイトソン:1904-80
佐藤良明訳 思索社刊 1982年版
(目次)
謝辞
*ニューエイジ リンディスファーン・センター エサレン協会
1 生きた世界への誘い
*「進化的な考え」「学校の生徒もみんな知っておる」 学校で真に重要なことは教えない 生物、進化、科学 環境適応 聖蹟(サクラメント)とエントロピー プロレマ(非生物)とクレアトゥラ(生物) 結び合わせるパターン、生物の共通性 系統発生的相同、連続的相同 形態の発生的対称・非対称 生物種の類似性 メタパターン 精神、観念 ※幽霊、モノではない 巻き貝 ※科学は自然のメタパターンを捉えるもの 生物は精神を持ち、物語で考える ※環境情報 コンテキスト(文脈)の中での意味 コスモス感の喪失、エコロジー思想の本源 「存在の大いなる連鎖」 ネットワーク、マトリクス
2 学校の生徒もみんな知っておる
*前提 ※自動、無意識、ロボット、最上層・表層
その1―科学は何も証明しない *知覚は有限、識閾を超えられない ※全体は不可知
その2―地図は土地そのものではなく、ものの名前は名づけられたものではない *論理と感情 左脳と右脳 命名は分類、クラス分け
その3―客観的経験は存在しない *私の痛み
その4―イメージは無意識に形成される *知覚の過程と産物・結果 無意識の効用 ※自動的に見えていると意識的に見ている
その5―知覚された世界が部分と全体に分かれるのは便利であり、必然なのかもしれぬが、その分かれ方の決定に必然は働いていない *複雑図形の伝達 記述、説明、解釈の恣意性
その6―発散する連続は予測できない *ガラスの割れ方、鎖の切れ方、沸騰の始まり 個と類の論理階型の違い、個がわからない 歴史の担い手、進化論はダーウィンかウォレスか マルクス主義歴史論の誤り(説明できていない)は類と個の論理階型混同、誰かがわからないから予測できない
その7―収束する連続は予測できる *発散と収束、論理階型 発散は類の中の個を追う、収束は個の集団としての類を追う 確率計算 歴史と個人
その8―「無から有は生じない」 *進化は連係進化 情報では無も技量によりコンテキストたりうる エピジェネシス(後天的発現、発生)、進化と学習 発生とトートロジーは反復と複写 進化と学習はランダム、探求と変化 両者を結ぶ説明という橋
その9―数と量は別物である *非連続と連続量 パターン 自然界の数やパターン 数のトートロジー、無限の言い換え、説明 ある数と「たくさん」
その10―量はパターンを決定しない *パターンは量のメタ階型
その11―生物学に単調な値は存在しない *適度(白か黒かではない、グレー) ※中庸、過ぎたるは及ばざるが如し、ギリシア哲学
その12―小さいこともいいことだ 4倍体の馬の物語 *生物の大きさ 体長、表面積、体積・質料
その13―論理に因果は語りきれない *因果と論理は別 因果には時間あり、論理に時間なし
その14―因果の逆転はあり得ない *目的因 適応という問題
その15―言語は通常、相互反応の片側だけを強調する *日常言語と科学言語
その16―「安定している」または「変化している」と記述される現象の側で、そうした全体的記述の各部分が記述されている *サーカスの綱渡り、生命体のホメオスタシス 論理階型
*グルーピング 1-5:認識の限界 エイムズの実験 6-8:エントロピー、ランダムと秩序 9-12: 13-16:
3 世界の重なりを見る
*理解のボーナス
ケース1―差異 *2つあっての差異 隻手の音声
ケース2―両眼視覚 *2つの差異(論理階型)から奥行きの発生
ケース3―冥王星のジャンプ *変化に気づくための工夫
ケース4―シナプス加重 *階型区分
ケース6―異句同義 *代数学のトートロジー 奇数の積み上げ計算、論理階型
ケース7―2つの性 *異常の抑制と交配の多様性
ケース8―うなりとモアレ現象 *2つのパターンによる第3のパターン発生 ※生命現象とは沸騰でありうなりである
ケース9―記述・トートロジー・説明 *左右は内的言語で、独立定義は不可能 説明での欺瞞、詐術 トートロジー、論理のすり抜け、すり替え等 ※錯誤もあり
*「私の」認識論を求めて 進化、思考、適応、発生、遺伝の世界(精神)のメタ科学
4 精神を定義する
*心身二元論の克服に向けて
基準1―精神とは相互に反応する部分ないし構成要素の集体である *原子は精神ではない
基準2―精神の各部の間で起こる相互反応の引き金を引くものは差異である *精神は変化、出来事に気づく、知覚する 変化を知る方法:時計、カレンダー エネルギーと情報
基準3―精神過程は傍系エネルギーの随伴を必要とする *馬を水辺に連れていくことと馬が水を飲むこと、水栓をひねることと水が流れ出ること
基準4―精神過程は循環的(またはそれ以上に複雑な)決定の連鎖を必要とする *フィードバックシステム、論理階型
基準5―精神過程では、差異のもたらす結果を、それに先行する差異の変換物(記号化されたもの)と見ることができる *アナログスイッチとデジタルスイッチ、量と数、連続と非連続 脳はアナログかデジタルかという問い 生態系はアナログフィードバックシステムか 鋳型コーディング(傷の修復)、指差しコミュニケーション(直接指示、部分提示)
基準6―これら変換プロセスの記述と分類は、その現象に内在する論理階型のヒエラルキーをあらわす *論理階型 メタ・コミュニケーション パブロフの犬、ダブル・マインド イルカ調教、メタコンテキストの学習 探求、犯罪、遊び 論理階型の誤り 因果という論理へのこだわり
*自律性、自己制御、フィードバック 死、組織崩壊、フィードバック破綻 情報、学習、記憶、エネルギー、論理階型(混乱の可能性あり) 美意識 意識
5 世界の区切りを動かす
*自他の区別、境界はあいまい ※精神はプラグマティスト 二重記述、両眼視覚、「関係」の先行、新しい論理階型 関係メカニズム:刺激・反応・強化(反作用)
1「汝自身を知れ」 *自己、作り事、道具 異種動物間の遊び、相互関係・システム構築、情報・環境変化 二重記述:遊び、探求、犯罪、精神病 探求:自己探求、克己
2 トーテミズム *エコロジカルな関係、紋章の動植物 神話のイソップ童話化
3 アブダクション(abduction) *アナロジカル、相関的観方 二重要件、二重規定
6 大いなるストカスティック(stochastic)過程 ※確率的、淘汰的
*進化、相同ホモロジーと適応 ランダムの重要さ、遺伝でも学習でも ※偶然と必然、自由と意思 種の進化と個体の体細胞的学習、どちらも確率淘汰的プロセスだが論理階型が異なる ダーウィニズムは精神・自由意志を排除 種進化と個体学習のシステム統一が生命現象
ステップ1―ラマルク学説の誤り *獲得形質の遺伝への3反論 単に自然淘汰なら偶然的・デタラメすぎる、ラマルク流なら必然的すぎる
ステップ2―用・不用 *種の進化と個体の適応変化 経済性、柔軟性 不可逆な形質適応(順化)か可逆的な機能適応か 遺伝的変化は変数のバイアス・スイッチの変更
ステップ3―遺伝的同化 *体細胞的変化による表現模写、そして遺伝模写
ステップ4―体細胞的変化の遺伝的制御 *論理階型の輪、ヒエラルキー
ステップ5―「無から有は生じない」―その発生版 *情報により(誤情報でも)受精卵の細胞分裂は始まる 器官の左右対称、非対称 情報の欠落(3→2次元情報)は非対称を対称に生じさせる
ステップ6―相同(ホモロジー) *系統発生
ステップ7―適応と耽溺 *過剰適応
ステップ8―ストカスティックな過程、発散する過程、収束する過程 *ランダムと制御、革新と保守
ステップ9―2つのストカスティック・システムを比較すること、組み合わせること *ランダムと選択・淘汰システム ランダムな遺伝的変化と反応的な体細胞的変化、発生と適応、内的と外的、デジタルとアナログ 進化と思考の比較 名前・名づけとプロセスの螺旋構造
7 分類から過程へ
*脳と精神、モノと名前・観念、交差しない平行性・トートロジー、論理階型のジャンプ 各生物が持つ知覚世界 トートロジーと記述、形態とプロセス、外(外部世界・森羅万象、自己身体や他者を含む)と内(私たちに知り得るのは観念のみ、他は一切知り得ない)※私秘性、独我論 文化人類学研究での類型化・名づけとプロセスの弁証法的往還 キャリブレーションとフィードバック、高次論理階型と低次論理階型 室温調整、スピード違反取締 システム制御レベルのヒエラルキー(入れ子構造、マトリョーシカ人形 ※パラドックス、再帰性、自己言及 存在の階層:原子、分子、細胞、器官、個体、種、類、…)、短絡は不可 クラスのヒエラルキー、回帰性の等級 不変と変化、パルメニデスとヘラクレイトス、ニワトリと卵 時間の問題、不連続性、閾(限界) ※普遍と個、個は死に普遍は生きる
8 それで?
*父と娘の会話 書かれざる・次に書くべきテーマ、美、意識、神聖、その三角形 ※『天使のおそれ』
※世界の矛盾、必ず死ぬのに生きている メタシステム、生かされている
付記―時の関節が外れている 1978
※弁証法:対立項A・Bの止揚ではない、次元の異なるシステムの統合、有効なプラグマティズム(システム内正解ではない)
用語解説
訳者あとがき―本物の対抗文化的知性
※対抗文化的:非オーソドキシー *メタファー
(2001年改訂版目次)
1 イントロダクション
2 誰もが学校で習うこと
3 重なりとしての世界
4 精神過程を見分ける基準
5 重なりとしての関係
6 大いなる確率的過程
7 分類から過程へ
8 それで?
付記 時の関節が外れている
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13 生成のコミュニケーション(G. ベイトソン) 矢野智司 (『人間学命題集』)
*サイバネティックスのフィードバックシステム、自己ー環境の循環回路としての精神プロセス。論理階型論、パラドックス。情報に関する情報(コンテクスト、メタ・メッセージ)とメッセージのダブルバインド。分裂病、一方でソクラテス対話法、禅問答。病理の一方で、回心や覚醒をもたらす。遊び、メタファー、ユーモアはパラドックスのコミュニケーション。
レイン、ラカン メルロ=ポンティ(※意味と無意味、コンテンツとプロセス、言語と非言語)
AI以前 サイバネティックスの時代
進化
スピード
時代の変化も階型変化
土台が変わる 延長線上にはない 真のリーダーは豹変しなければならない
神秘性と科学性
禅
眩暈、酩酊、いかがわしさ
世界の秘密に触れている
宗教、秘教、哲学奥義、世界の底 人間の秘密
ノート:巽孝之『アメリカ文学史―駆動する物語の時空間』
(目次〉)
はじめに― 「アメリカ文学史」とは何か
第1章 アメリカ文学史序説―ロード・ナラティブの千年紀
1 アメリカン・ドリームは移動する
2 ロード・ナラティヴのフロンティア
*ルート66(シカゴからロスアンゼルスへ) ウディ・ガスリーとスタインベック『怒りの葡萄』
*ピンチョン『メイソン&ディクソン』
第2章 神権制下の文学―ピューリタニズム
1 キャプテン・ジョン・スミスの遺産
*ポカホンタス伝説(捕囚体験記) 法螺男の系譜(フランクリン、トウェイン)
2 丘の上の町
*ピューリタン信条 マサチューセッツ初代総督ウィンスロップ 純粋=排他主義の誓い
3 反律法主義論争
*1636年 形式主義への反対、ハチンソン(『緋文字』モデル) 牧師ジョン・コットン
4 異端者と異民族と
*『緋文字』と同時代(1640年代) 1636年、ロジャー・ウィリアムズ インディアンの土地強奪批判でマサチューセッツ追放(ロードアイランドへ)
5 セイラムの魔女狩りとは何であったか
*女性奴隷ティテュバのヴードゥー呪術の真似事 ピューリタンの内圧で集団ヒステリー 牧師コットン・マザー(1663-1728)、インディアン=サタン=フレンチ・カトリック
6 アメリカ的主体の多元的起源
*1630年代 ボルティモアが開いたメリーランド州はカトリックの地
7 マザーからエドワーズへ
*ジョナサン・エドワーズ(1703-58) 18世紀啓蒙時代の牧師、厳格なピューリタニズム復活リバイバルを目論む
1 マザー、エドワーズ、フランクリン
*ピューリタンの系譜 フランクリン(1706-90) ボストン生まれ 家出、印刷工 クエーカーの大都会フィラデルフィア中心にマルチに活躍 ウェーバー『プロ倫』の勤勉 『自伝』で人生成功の秘訣13徳目
2 自伝のタイム・パラドックス
*人生の誤植は修正可能、詐欺師フランクリン
3 信仰ではなく信用を
*理神論的、民主制的信仰 召命から天職へ フィッツジェラルド『華麗なるギャツビー』の自戒
4 隠喩としてのファミリー・ロマンス
*父と子、世代交代、植民地と独立 フランクリンの私生児、トマス・ジェファソンの混血黒人奴隷との私生児
5 パンフレットの文学
6 『コモン・センス』から『独立宣言』へ
*『独立宣言』はアメリカ娘がイギリス男にたぶらかされてきた物語
7 コネティカット・ウィッツ
*『イリアッド』ならぬ『アナーキアッド』 最初の国民文学者集団、連邦主義
8 アメリカ小説の起源
*共和制文学 ウィリアム・ヒル・ブラウン(1765-93)『共感力』など 『独立宣言』と同レトリック 権利意識、父と子、男と女、私生児出産や近親相姦の物語、ファミリーロマンス
9 共和制読書のアレゴリー
第4章 膨張主義の文学―トランセンデンタリズム
1 アメリカン・ロマンスの曙
*ファミリーロマンスからインディアン・ゴシックロマンスへ チャールズ・ブロックデン・ブラウン(1771-1810)、インディアンは外敵
2 インディアンはひとりではない
*クーパー『最後のモヒカン族』(1826)の白人英雄ホークアイ、チャイルド『ホボモク』(1824)混血児 ロングフェロー『ハイアワサの歌』(1855)でインディアン部族同士の和解 変質の背景に1810年代以来のインディアンの掃討、30年のミシシッピ川以西への強制移住(アンドルー・ジャクソン)、黒人奴隷制拡大、プレ南北戦争期(antebellum)状況
3 ペイル・フェイス、レッド・スキン
*最初の職業作家アーヴィング(1783-1759)『スケッチブック』(1819-20) 白人インテリのヤンキーと野性的な赤い肌 敗者と定まったインディアンからパワーを受け継ぐ(トマホークミサイル等) アメリカ拡張主義とほら話ロマン
*独立宣言の思想の血肉化 エマソン「自己信頼」(1841)人間中心の超絶主義、ソロー「市民的不服従」(1849)奴隷制とメキシコ戦争反対 啓蒙主義を超えてアメリカ的ロマン主義 ピューリタニズム批判の超絶クラブ 黄金期としてのアメリカン・ルネサンス 1850-55年に傑作集中、ポウやディキンソンを加えて1832年頃から南北戦争前後まで エマソンの『代表的人間』(1850)、ニーチェとナチズムへ ※また内村鑑三『代表的日本人』(1894)へ、エマソンは無教会主義者、自己啓発セミナーの走り
5 ヤング・アメリカの文学的独立
*明白なる使命=領土拡張運動 アメリカ独立の意識(ロマン主義、超絶主義、膨張主義) ポウのアメリカ文学独立 ホーソーンのアメリカの歴史意識(ピューリタニズム、女性)
6 一八五〇年の妥協
*逃亡奴隷法 南北戦争へ向けた衝突 ピューリタニズムの腐敗(禁酒運動家や聖職者の退廃) 内的矛盾
7 白鯨オン・ザ・ロード
*『白鯨』1851年 アメリカ捕鯨文化、日本沖での白鯨との死闘、沈没 アメリカ膨張時代 すべてを神をも呑み込む白 多文化状況下での白人支配
8 白の女たち
*閉じ籠もるディキンソン 女性、周縁
第5章 進化思想の文学―ダーウィニズム
1 ダーウィン以前
*プレ南北戦争期(アンテベラム) 人種・性差・階級 アメリカン・ルネッサンス:白人・男性・北部インテリ 1859年『種の起源』の衝撃 黒人劣等動物論(オランウータンと同格、人類学者タイラー) 見世物としての黒人 文学史の南北戦争前後の分断=『種の起源』前後(動物差別から人種差別へ)
2 ストウ夫人『アンクル・トムの小屋』
*南北戦争前後は女性作家の時代 『アンクル・トムの小屋』(1852)には当時の黒人と女性が重ねられている
3 もうひとりのハリエット
*文学ジャンル「奴隷体験記」 混血黒人女性奴隷による自伝的物語
4 南北戦争以前・以後
*ロマン主義や懐疑主義からリアリズムやナチュラリズム(自然主義)、富の神崇拝やKKKの金ぴか時代への転回 分断と連続
5 ゲティスバーグの演説
*キリスト教を下地にした周到なアメリカ市民教(独立宣言)の再説 社会ダーウィニズム、自由競争と適者生存、神による選民・決定論
6 マーク・トウェインの冒険
*金ぴか時代の名付け親 トウェインとは? オプティミズムでもペシミズムでもなく、善悪など人間的価値に囚われることの愚かさを風刺
7 リアリズムとナチュラリズム
*ヴィクトリア朝の市民的美徳、ダーウィン後の人間性悪説 アンビバレントな関係
8 ヘンリー・ジェイムズの想像力
*読者にこそ想像力を要求
9 クレオールの世紀末的
*ケイト・ショパンのフェミニズム(女の生き方)、ラフカディオ・ハーンの民俗学
第6章 荒地以後の文学―コスモポリタニズム
1 イエロー・ペリル
*黄禍論 ジャック・ロンドン「比類なき侵略」(1906/10)、トウェイン ウェルズ『宇宙戦争』(1897) ハーン・小泉八雲
2 蝶々夫人症候群
*日本人芸者と米軍海軍士官 ジャポニズム 起源は米人小説(モデルはクラバー夫人ツル・蝶文様の着物のマダムバタフライ) コスモポリタニズム
3 一九〇〇年の奇遇―ボームとドライザー
*ボームのファンタジー『オズの魔法使い』とドライザーの自然主義小説『シスター・キャリー』 エジソンの時代、物質消費文明の時代
4 パリのアメリカ人
*G.スタイン(女性)のパリのサロン、永遠に続く現在 ポール・ボウルズ アメリカニズムからの脱出
*パウンドの弟子、エリオットの共時的詩学 アメリカニズムから多元文化主義、故郷喪失のコスモポリタニズムへ
6 「荒地」のあとで
*ヨーロッパ神話と「荒地」 エリオットと西脇順三郎
7 失われた世代
*1919-29 ジャズ、フィッツジェラルド、ガーシュイン、デュシャン、フロイト、シカゴ・カポネの時代 パリのスタインの命名 19世紀的伝統と切断したモダニスト世代、アメリカが海外へ取り逃がした若手作家たち
8 荒地を越えて氷山の一角へ―フィッツジェラルドとヘミングウェイ
*「荒地」の影響 『華麗なるギャツビー』成り上がり者の悲劇への仕掛け ヘミングウェイ『日はまた昇る』は「荒地」の小説化、強いアメリカの復権 氷山の一角理論、映画化への可能性、ハードボイルドの文体 30年代パリ・亡命者たちが集まる無国籍都市
9 三〇年代への転換―ウィラ・キャザーの闘争
*恐慌後の30年代、社会的処方箋、男性化の時代 コールドウェル『タバコ・ロード』、スタインベック『怒りの葡萄』、パール・バック『大地』
1 アメリカの世紀
2 さまざまなルネッサンス
*1910-20年代、シカゴ・ルネッサンス 1920-30年代、ハーレム(黒人)・ルネッサンス 1920-50年代、サザン(南部)・ルネッサンス
3 敗北の想像力―フォークナー、バック、ミッチェル
*南北戦争敗者 フォークナー『響きと怒り』(1929) バック『大地』(1931) ミッチェル『風と共に去りぬ』(1936)
4 米ソ冷戦以前・以後
*キリスト教的社会主義者 ゲイ詩人ホイットマンを熱愛 フロイト以後の同性愛者の苦境 自殺
6 失われた世代からビート世代へ―またはサンフランシスコ・ルネッサンス
*待つ男ソール・ベロー パリのミラー教祖ヘンリー・ミラー モロッコのポール・ボウルズ ビートの名付け親ジャック・ケルアック キンズバーグ
7 アメリカ黄金時代
*1950年代 サリンジャー
8 サイバネティックス時代の文学
*捕縛の論理
10 二十世紀アメリカ小說最高傑作
11 文学史的自意識―ジョン・ベリマンの陰に
13 ドン・デリーロ『アンダーワールド』または世紀転換期の夢と悪夢
第8章 アメリカ文学の正典を読む
1 ナサニエル・ホーソーン『緋文字』1850
2 ハーマン・メルヴィル 『白鯨』1851
4 トマス・ディクソン『クランズマン』1905
5 ウィリアム・フォークナー『響きと怒り』 1929
6 ジョン・スタインベック『怒りの葡萄』 1939
8 J・D・サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』 1951
9 トニ・モリスン『ビラヴド』1987
10 トマス・ピンチョン『メイソン&ディクソン』1997
11 アン・ブラッドストリート『十番目の詩神』1650
12 ウォルト・ホイットマン『草の葉』1855
13 ガートルード・スタイン『やさしい釦』1914
15 アドリエンヌ・リッチ『血、パン、詩』1986
16 ユージーン・オニール『楡の木陰の欲望』1924
18 テネシー・ウィリアムズ 『イグアナの夜』 1961
19 T・S・エリオット原作 アンドリュー・ロイド・ウェッバー作曲
ミュージカル『キャッツ』 1982
20 トニー・クシュナー 『エンジェルス・イン・アメリカ』
第一部「至福千年紀が近づく」1991 第二部「ペレストロイカ」 1992
Column
1 船旅のフロンティア―ウィリアム・L・ヒート=ムーン『水路アメリカ横断8500キロ西へ!』
3 アメリカ禁酒運動の運命
4 ネイチャー・ライティング
5 リンチ国家アメリカ
6 ヴードゥー・ジャズ小説の最高峰―イシュメール・リード『マンボ・ジャンボ』
8 アメリカン・ゴシックの達成―ポール・ボウルズ 『遠い木霊』
9 同毒療法のビート的伝統―ウィリアム・バロウズ『ウェスタン・ランド』
10 映画「すべての美しい馬」考―現世界の終わりと新世界の始まりを告げる
11 ブラック・フェミニズム―トニ・モリスン『パラダイス』
12 韓国系アメリカ文学の可能性―チャンネ・リー『最後の場所で』
13 ポストコロニアル文学の収穫―ジャメイカ・キンケイド『アニー・ジョン』
14『小説作法』――スティーヴン・キングの極意
15 スポーツ小説を超えて―デイヴィッド・プリル 『葬儀よ、永久に続け』
16 ナノテク文学の未来―ニール・スティーヴンスン 『ダイヤモンド・エイジ』
参考文献
アメリカ文学年表
索引
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ジェイムズ、プラグマティズムの背景
独立から半世紀(rf. 明治維新→明治末〜昭和初期)
ベクトル(膨張)と内部矛盾(相克、腐敗)
独立ナショナリズムの核はピューリタニズムと定む
白人主義、インディアン排斥、明白なる使命(膨張は善)
ピューリタニズムとしての禁酒運動や黒人公民権
南北戦争:近代と前近代の闘争(rf. 明治vs江戸)
インディアンやメキシコなど異物排斥のナショナリズム(rf. アイヌ排斥)
ノート:プラトン『ソクラテスの弁明』
(納富信留 訳・解説)
(目次)
訳者まえがき――『ソクラテスの弁明』を読む前に
ソクラテスの弁明
第一部 告発への弁明
・前置き 第1〜2章
*ソフィストの弁論との違い、真実を語る徳 ※真実とは何か、本質か? 2つの告発
・古くからの告発への弁明 第3〜10章
1古くからの告発 *知識人、自然科学者とソフィストへの疑念や嫌悪 不敬神、詭弁的弁論術 アリストファネスの『雲』、ソクラテスは詭弁的ソフィスト ※デューイ ソクラテス自身は自然科学をせず、金銭的教師ではないと弁明
3人間的な知恵 *神託による「知」の意味の探求 無知の「知」ではなく、不知の自覚あるいは認識 神ではない人間の有限さ 知ろうともせず思い込みの中で人生を送る愚かしさ
4ソクラテスへの憎悪 *本当には知らないことを知っていると当たり前に言う有り様、これが真実 不知を暴かれることへの恐怖と憎悪 ソクラテスの若い弟子たちによる人々の不知という真実を暴く振る舞いを堕落と非難 真実を話すと憎まれる
・新しい告発への弁明 第11〜15章
1告訴状とその解釈 不敬神と若者堕落の罪の逆転、現民主政権では問えなくなった旧怨が真の狙いと見抜く
2尋問としての論駁 *対話による反論、論理の矛盾を突く 言葉と知への無自覚、無認識、無責任 ※そのまま現代、現在へ続く問題 言葉など信じてはいけない、プラグマティズム、だが真実をそのまま言えば死刑さえ賜る
・哲学者の生の弁明 第16〜22章
1恥 *金銭や評判への配慮、真善美や魂への配慮 不知への無自覚(知ったかぶり)の醜さ
2死と生
3魂への配慮 *魂(プシュケー)と肉体・物(ソーマ) ※イエス、キリスト教、キルケゴール
4不正と害悪
5政治(ポリスのこと) ※公と私、「〜とは?」と問わないこと ペリクレスのアテネ全盛期後の清貧反動期ではある
・弁明の締めくくり 第23〜24章
*真理と政治、哲学と弁論術の違い ※イデアと仮象、こういう区別ではなく産湯だけを流すこと
〔ここで有罪・無罪の投票がなされる]
第二部 刑罰の提案 第25〜28章
〔ここで死刑・罰金刑の投票がなされる]
第三部 判決後のコメント第29〜33章
1最期の言葉として
2敵と仲間への語りかけ
3ソクラテスの敬神
解説 納富信留
プラトン対話篇を読むために(生涯と著作)
プラトンの生涯 ソクラテスと「ソクラテス文学」 学園アカデメイアでの哲学活動 プラトン著作集の成立と伝承 プラトン対話篇のグループ分け 初期対話篇 中期対話篇 過渡期対話篇 後期対話篇 偽作? 書簡集 日本で読まれたプラトン
年譜
訳者あとがき
重要人物および事項一覧
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大衆批判 社会批判
真実を探求する哲学者としての生か死か 哲学者の原点
多量の毒を含んだ恐ろしい書 全社会を敵に回す書
ソクラテスにも原理主義があるが、何より社会の原理主義・本質主義
(二分思考、責任者・専門家・敵・犯罪者等々)
人の生涯の衝撃、重さ ソクラテス文学 イエス、新約聖書 聖人たち 菩薩たち
徳 身についた習慣
ノート:『アリストテレス』中公世界の名著
(目次)
アリストテレスの思想と生涯 田中美知太郎
・われわれにとってのアリストテレス
発展途上にあるアリストテレス研究 アリストテレスに負うもの *さまざまな
概念 存在階層秩序論(ヘーゲル、ダーウィン、マルクス、コント) 歴史的理解 *形相(エイドス、ロゴス)と質料(ヒュレー) 新しい歩み 形相と素材 形相の論理性
・生涯
生い立ち アリストテレスの家系 アカデメイアの20年 プラトン不和説 人よりも真理が大切 遍歴時代 マケドニア時代 リュケイオン時代
・著作
失われた著作 *3世紀のディオゲネス・ラエルティオス(DL)の著作目録(アレキサンドリア図書館か) *散逸あり 著作の特殊性 *キケロ、『形而上学』の欠落 形而上学とは何か *DLにも欠落 中世写本 *5-6世紀のヘシュキオスの目録 *『形而上学』あり、3-5世紀の謎 2系統ある著作の伝承 *アリストテレス→テオプラストス→ネレウス(小アジア)→アペリコン(アテナイ)→スラ(ローマ)→チュラニオン:ローマ時代に再発見、ただしキケロやDLにまでは伝わらず アンドロニコス(AD1c.ロドス島出身、逍遙[ペリパトス]学派11代目学頭)の仕事 *内容分類して目録作成、論理学から始める(A図書館系との差異) イェーガー革命 *著作編年で再構成 アリストテレス研究の方向 *専門家論争は大同小異 分析性や整合性を求め過ぎず多面性を持った哲学者として捉えるべきでは
・本巻の構成
※講義ノート集
同テーマで何度も講義 だから繰り返しや要約も多い
歴史的、同時代的諸説を紹介し批判し自説を説いていく
自問自答
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政治学 (ポリティカ)
解説 *あくまでポリス・市民国家のあり方の考察、近代政治・国家学ではない また実践学であり倫理学 奴隷制の土台 市民と国家の一体性 ※ルソー
第一巻(1,2)
1国家は他の共同体と同一視されうるか
*国家・ポリスは善をめざす共同体 為政者は家長の延長ではない 国家や家族のでき方から考察しよう
2国家社会を作るのは人間の自然の本性に基づく
*男女で一対、同様に治者被治者(適性)で一対と自然が定めた 女性と従者(奴隷)は別の役割存在だが、ギリシア外では同一視、夷狄は被治者である証明 共同体は家族、村落、王制国家と発展、長老が家長や王 共同体は生存の必要によって生まれ、生活向上と善をめざす 人間は自然本性で国家的動物 群棲動物中、言語で善悪正邪等を唯一論じうる 全体は部分に先行する、国家も個人に先行する ここから外れる者は野獣か神 国家は法律等で秩序を保つ
第三巻(全)
1市民国家における市民の意味
*ポリスとは何か ポリスを構成する市民 裁判と統治(役職)への参加資格 ポリス体制による参加資格の違い
2市民の実用的な定義とその疑点
*市民の条件、生まれや居住 改革での編入者(奴隷身分等から) 市民条件以上に公職での仕事内容が問題
3国家の同一性とは
*国家と政権 政変後も同一国家か
4立派な市民はまた良き人でもあるか
*共同体は船、市民は船員 ポリスにより市民の徳は変わる まず各人が自分の任を果たす 様々な役割 人の徳は治者、市民の徳は治者被治者の徳か 治める・使う・管理するは作る・するとは違う ポリスの良き市民は治者被治者ともにできること 知恵・叡智の徳は治者だけのもの(※哲人とのつながり) 笛を作ることと吹くことは別のこと
5市民の徳と人間の徳との一致は市民資格の制限と治者と被治者の区別において考えられる
*役職につく人=市民か 手工者や奴隷 政治制度と市民条件による 名誉ある役職につく人
6 市民国家の目的と統治の諸形態
*国制とは政府のあり方 国家の存在目的と統治の種類 生活の維持と向上 政治や一家宰領(家政)は共同体や家族のためだが自分自身も享受する、正義の国制 支配者利益のみ重視の国制は邪道
7正しい国政と邪道にそれた国政
*国制=政府 最高権限は一人・少数者・多数者(大衆)に委託 公共の福祉のための統治なら正しい国制、私利私欲のための支配なら邪道の国制 市民の名は前者のときのみ 正しい統治、一人なら王制、少数なら貴族(有徳者)制、多数なら国制(共和制)で国防責任者 邪道の支配、僭主独裁制、寡頭制(有産者)、民主制(無産者)、いずれも共同体市民全体ではなく私利私欲をめざす ※衆愚民主政とは「無産者」のわがまま支配、住民・市民エゴ
8寡頭制と民主制
*権力者の人数ではなく貧富の違い 根拠が富か自由か
9徳―市民国家が目標とすべきもの *9-13:配分的正義 分配的?
*寡頭制と民主制の正義 公職の配分の平等 何を、誰に? ポリスの目的は単に共闘や交易ではなく、よく生きること これに貢献できる徳がどれほどあるか応じて
10国家最高の権限は誰がまたは何が持つべきか
*大衆か富裕者か 一人か複数か 法律か
11国家最高の権限は大衆が持つべきであるとする主張の検討
*大衆は多数なら批評に優れる 審議審査の役目 同業者の目も大事だが、享受者も良き判定者 要職者を選定や判定する陪審員や議員に向く やはり法にこそ最高権限を委ねるべきか
12国家における正義とは何か、平等とは何か
*配分的正義、比例的平等 役に応じた長所、長所に応じた役職(上手い笛吹きに良い笛) 富、自由市民、生まれの良さ、徳
13最善の国制における治者たる者の条件の検討
*治者条件の検討 全体としての大衆は優れている 優れた少数者、陶片追放 ゼウスのような人、王制
14王制の諸形態
*英雄時代の王制(軍事総帥・裁判官・司祭)、バルバロイ型(世襲・立法)、選挙・独裁僭主制(レスボスのピッタコス等)、スパルタ型(終身将軍職)、絶対王制
15王制においての難問の検討
*独力統治か法律支配か 法律逸脱問題に王制か貴族制(徳ある複数の人)か
16法の支配こそ最上とする人たちの議論
*絶対王制と法律 理性と欲念 法は中庸 例外には複数の知者
17絶対至上の王制はいかなる場合に可能か
*王制、貴族制、民主制に適合した国々
18まとめ
第四巻(全)
1政治学の扱うべき諸問題
*理想の国家体制だけでなく、現実に可能な国制の検討も 学び直すのは新たに学ぶに劣らず難しい 民主制や寡頭制にもいくつかある 国家体制と法律は違う
2諸国家体制の間の優劣の差、及びそのうちこれから取り扱うものとその問題点
*優劣:貴族制、王制、共和制、民主制、寡頭制、独裁制 どの国にはどれがふさわしいか
3 国家体制に多くの種類があることの原因、及び国家体制の分類法
*国家には多くの家族、人々 貧富、職業、所有の状況の違い 2分類法 民主制と寡頭制、北風と南風、2音階
4民主制と寡頭制の規定。国家を構成する初階層。民主制の種類
*数の多寡でなく、民主制は自由市民が、寡頭制は富裕者が主権を握ること 国家の構成部分の多様性 農民、手工職人、商人、日雇労務者、戦士 プラトン『国家』批判 金持ち、公僕、国会議員、裁判官 役目は兼務できても貧富はできないので、民主制と寡頭制がある 多くの職業、多様な地域、生まれや境遇 民主制の種類 1平等 2少額の資産資格 3生まれ 4市民 5法律のない大衆票決、デマゴーグ、一般意志 独裁制と同じ
5寡頭制の種類
*1一定の資産額 2寡頭的財産制 3世襲制 4門閥制 ただし、民主制や寡頭制と言いながら、法律運用、習慣や教育でその性格は逆になったりもする
6民主制と寡頭制の種類と、その社会的・経済的状況
*民主制には余暇と法律が必要、裕者は退場し法律も無視される 寡頭制にも法律が必要、最後には門閥化し法律は無視される
7貴族制の種類
*貴族制、徳の最優秀者支配制 カルタゴ型:富・徳・一般民衆
スパルタ型:徳・一般民衆 寡頭制的共和制
8共和制の規定。貴族制との関係
*共和制・独裁制は理想国制の失敗 共和制は寡頭制と民主制の混合、民主制寄りは共和制、寡頭制寄りは貴族制と呼ばれる 共和制は富と多数、貴族制は自由(多数)と富と徳
9共和制を作る混合の仕方、適正な混合の仕方とスパルタの例
*民主制と寡頭制に共通の法律制定、中間をとる、選択採用する 役職を民主制はくじ引きで、寡頭制は選挙で決める スパルタの例 ※役職者をくじ引きで決めるのは古代ギリシアの民主主義=配分的平等の典型
10独裁制の種類
*バルバロイ型、英雄時代の王制、以上は選挙制 絶対王制
11最善の国家体制、すなわち中間的な国家体制
*最大多数の人間と国家が共有できる国制 幸福な生、中庸の徳、国家の生き方 富める人々、貧しい人々、中間の人々 両極端の人々は偏り道理に従いにくい 極端な寡頭制や民主制にもなりやすい 中間者が多数が良い 国家体制も中間的なものが良い ある程度の大きさ 小国家は党派争いが起きやすい 中間的が少数のとき、中庸から外れた勢力が自分の側に引っ張り、民主制や寡頭制が強まる
12国家を構成する階層の質と量の均衡関係と国家体制との対応。国家体制存続の条件
*どんな国制がどんな人々にふさわしいか その体制を望むものが多数であることが原則 人々の質:自由、富、教育、生まれなど 量:人数の多さ 量が優勢→民主制(優勢な職業に応じた型) 質が優勢→寡頭制
13寡頭制及び民主制における国政保持のための工夫。重装歩兵階層の重要性
*国政参与の工夫:議会出席、役職就任、裁判参加、重装武具所有、体育訓練義務 罰金や手当 ギリシア:王制→騎兵市民→重装歩兵
14国家体制を組織・構成する三つの機関のうち、1審議する部分について
*戦争と平和、軍事同盟、重要刑罰、選挙、執務審査 民主制の基本は市民全員で審議決定 順番で交替、重要度に応じて全員で審議、別件は選挙やくじ引きで選んだ役職者に委任、何でもすべて全員で 寡頭制の基本は特定の人々がすべてを審議 資格を緩やかにすれば共和制に、きつくすれば門閥制に近い 別途審議を委託すれば貴族制に近いことも 真の民主制のためには議会審議でも手当支給が良い 寡頭制でも審議決定プロセスに一般大衆の参与を組み込む、可決権など
15-2国家体制の役職について
*種類、期間、資格条件 神官、演劇後援者、海外使節、穀物測量役など多種多様 小国家にとってこそ問題 役目・機能また国制に応じた資格条件、役職 国家統治の役職任命、誰が誰をどう選ぶか、任命者(市民全員/一部)・被任命者(全員/一定資格)・任命法(選挙/くじ引き) 民主制、共和制、寡頭制で広→狭、貴族制は選挙重視
16-3裁判する部分について
*資格条件、裁判の種類、任命法 法廷の種類:執務審査、国事、罰金、殺人、外国人問題等 任命:全員/一部、くじ引き/選挙 国制にふさわしく
第五巻(全)
1問題―内乱と体制変革の原因は何か。それに対処する有効策は何か
*体制転換と権力奪取や一部変革 数的あるいは比例的平等をめざす 寡頭制より民主制が安定
2内乱と変革の原因―一般的考察
*どんなとき起きるのか(動機)、目的、端初は何か(誘引) 不平等や不当に不平を感じて、利益回復や名誉挽回のため、度を越した感情など
3つづき―詳論
*暴慢と利益、名誉、力の優越、恐怖、軽蔑、市民構成バランスの崩れ 選挙運動、軽視、些事の看過、種族の合一不調和
4つづき
*具体事例 国家興隆の立役者はきっかけは自他どうであれ内乱を引き起こしがち 暴力と謀略、当初からか後段になってからか
5民主制の変革の原因
*デマゴーグの無軌道の扇動(民衆への不当な利益誘導) かつては軍人出身のデマゴーグが僭主独裁者にも(民衆の庇護者として振る舞う) また法律無視の民主制になる傾向も
6寡頭制の変革と内乱の原因
*支配層の民衆への不正 政権奪取(親族間でも) 政権内部からもデマゴーグ的に振る舞い反乱 様々な内部対立
7貴族制の変革と内乱の原因
*同等の徳を持つと自負する人々 体制に不正があれば内乱の素地 共和制なら民主制と寡頭制の適正混合、貴族制ならそれと徳 貴族制は不正な利益獲得も起こりがち
8諸々の国家体制の維持保全策について
*階層勢力が伯仲のとき、些細な違法行為に警戒 1つ1つは小さくとも合わされば大きい 他階層との良好な関係、有力者の国政参与、取り扱いの不正排除 内部での民主制、短期的交替制 内外の共通敵の定立 法律による対立抑制 経済査定による財産資格の見直し 公私とも勢力の突出する、また反発・逆上する人物を作らない、過大化させない、規制できる法律(※与え過ぎない、一度に取り上げない) 中間層の拡大 汚職、公金私消の排除 社会バランス、民主制では富裕者を寡頭制では貧者を優遇しいたわる(周辺職につけ、中枢要職は自ら固める)
9つづき
*職務条件:忠誠心、職務能力、体制適合の徳 バランスの悪さ、役職の特性に応じて優先順位 現体制を良しとする人々を増やす 「ほどほど」の大事さ、例えば民主制の特徴の重視がかえって民主制を解体する ※完全さや純粋さ志向は現実的には危険、現実はあいまいの中にちらと特徴が見えるもの、完全は完全ではない(概念は概念の中にしかない) ※このあたりアメリカ政治学 反体制派を刺激することは過ち 体制に適合した教育の重要さ、実践されていること 実情はただの享受、寡頭制の子弟は自堕落な生活、民主制では各人の勝手気ままの自由 ※ここは天国か煉獄か、「自由と平等」問題がすでに登場
10単独者支配制について
*王制は貴族制と同列、僭主独裁制は寡頭制と民主制両方の極端な結合体、僭主独裁制は最悪の体制 王制と僭主独裁制は正反対 王は徳の卓越性から選ばれ、僭主はデマゴーグ出身の簒奪者 王は公利を僭主は私利を求める 謀反の始まりは侮辱、肉体的凌辱、恐怖、軽蔑 相反する体制、僭主独裁制には民主制、王制には貴族制 僭主独裁制の内部崩壊は近親や近臣の憎悪や怒り、軽侮が原因 王制は外部崩壊は少ない 内部崩壊は内紛、また王制が実質的に僭主独裁制の場合
11つづき
*維持の理由は崩壊と逆の要因 王制は非専制的な方が永続する 僭主独裁制の保全、謀反のあらゆる芽を摘む 民主制でのデマゴーグ、僭主独裁制での追従者、通報者 自国の同胞より他国人を好む 卑小な人間を作る、相互不信、能力を育てない 保全策2、王制的に振る舞う 公共財産への保管者としての態度、人物像、名君的態度や振る舞い 対抗できる敵を作らない、怨みを買わない、援助者庇護者の振る舞い
12むすび
*僭主独裁制は短命 シキオンのオルタゴラス一族が100年、コリントのキュプセロス一族が73年、アテナイのクレイステネス一族が35年 周期、教育不可能な者が出現 『国家』でのソクラテス(プラトン)の諸説批判
第七巻(1-12)
1最善の(最も幸福な)生活の規定
*国家、個人にとっての幸福な生活とは 外部的な善(富や名声)、身体の善(健康、体力、美貌)、精神の善(徳) 外部や身体の善が先行するのではなく、まず徳がなければならない、徳が欠けた幸福はない 国家も同様 外部や身体の善も備えた徳のある生活
2個人と国家の善(幸福)に関する諸説
*国事奉仕か個人生活優先か、最善の国制とは 観照生活、愛知者 政治家と愛知者 為政者の専制思考、戦争と征服、隣国との平和
3私人の生活と為政者の生活の優劣
*政治家か自由人か 徳と実践能力 幸福は行動的生活 観照も行動的 隣国からの孤立も1つの行動 内部行動する神や宇宙
4国家の大きさと人口の限度
*最善ポリスの条件 ただし実現可能な ポリス人口や国土 ポリスの大小は単純人口や広さではなく市民の人数とその能力の大きさ 多すぎる、少なすぎる人口 相互に知り合える、自給自足できる大きさ
5国土の質、広さと形状、都市の位置
*自給自足できる大きさ 国土防衛、戦略的に
6海に開けていることの利害得失、海軍力
*港湾 海軍力
7市民の性質、特に気概について
*ヨーロッパ民族は気概に富むが知能に欠け単に独立、アジア民族は反対で隷属 ギリシア民族は気概も知能にも富み、独立しポリス形成 気概は激情で正負に働く
8国家に必要な階層と国家の部分となる階層
*必要条件と十分条件 共通目的と様々な手段 自足する共同体 市民の幸福、徳の実現 国制の違い 必要な仕事:食糧、技術、武器、金銭、祭祀、政治や裁判 従事する人々:農耕者、職人、兵士、富者、神官、政治家や裁判官
9おのおのの仕事に対応した階層の構成と分離
*誰がどう従事するか、国制による違い 最善の国制、幸福・徳 職人や商人、農耕者は徳の生活ではない 兵士と政治家などが徳ある生活、政治家や神官は高齢者
10階層分離と共同食事の起源、土地の分配、農耕者の身分
*戦士・農耕者の階層、エジプトやクレタ起源 共同食事、イタリア起源 国土は共有と私有に、さらに前者は祭祀用と共同食事用に、後者は国境付近と都市付近に分ける 農耕者は奴隷か夷狄の農奴に
11都市の立地と設計、城壁の利益
*健康面、気候的自然条件 行政・軍事面 水利面、水と空気 城塞、都市区画
12共同食事の制度と施設、各種施設の配置
*神事とアルコンの共同食事は同一の広場で、体操場 商業用広場、法務や警察の役所 山林・農地管理人のための建物
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(政治学)
講義的 むしろ後世がこれを模範として講義をしたということだろう
分類的分析的 事細かな場合分け
具体的現実的事例に基づく
総合的人間的実践的 情理を尽くす
実際的真理、マキシム金言が盛りだくさん 現実には最善を求めない
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詩学 (ポエティカ)―創作論 *ホメロス論、悲劇論 散逸の後半は喜劇論か
解説 *文芸創作の技術 原作者(✕吟唱者・演技者)・韻文(✕散文)・物語(✕歴史) 詩の範囲:叙事詩・抒情詩・悲劇・喜劇等 日本での詩や詩人は劇や劇作家ではない ミメシス(模倣・描写)とは可能態の出来事を創作ではなく描写すること(現実態は歴史) プラトンの文芸批判は哲学とは別で知識論としては及ばないということ アリストテレスは文芸の独立性の上に文芸論を論じた ギリシア悲喜劇全盛期を過ぎた時期 講義草案的なもの、不整備、矛盾や不統一 古代中世は不評、ルネサンス以降多種多様な解釈
1論題の設定、創作(詩作)と描写(模倣)、描写行為における手段・媒体の差異
*叙事詩、悲劇、喜劇、ディテュランボス(ディオニソス頌歌劇)、音楽(笛や竪琴) 同じミメシスだが各々の違い
-1手段・媒体の差異
*リズム・言葉・音曲 音曲とリズム:音楽 リズム:舞踏 言葉:散文と韻文 叙事詩・抒情詩等 エンペドクレスは叙事詩形式だが、詩人ではなく自然哲学者 リズム・言葉・音曲:ディテュランボス・ノモス(アポロン頌歌)、悲劇・喜劇等
2-2描写する対象の差異
*行為する人間、卓越・劣悪・人並か 画家の描写同様 悲劇は卓越者、喜劇は劣悪者を描く
3-3描写の様式の差異。付、 「ドラーマ」という名称の由来と悲劇・喜劇の発生地に関するドリス人の主張
*作者や時々の仮託人物が描く(ホメロス)、同一の仮託人物が描く、劇形式で描く(すなわちドラマ) 悲劇・喜劇の起源についてのドーリア人の主張
4創作(詩作)の起源とその発展の二方向
*自然本性に基づく2原因 模倣・描写する(まねぶ=学ぶ)、その結果を喜ぶ(例えば絵画) 似像・似顔絵 即興から創作(詩作)へ 2方向、頌歌や讃歌、諷刺毒舌 ホメロスの諷刺『マルギテス』 諷刺詩作家が喜劇作者へ、叙事詩作家が悲劇作家へ推移 悲劇の発展
5喜劇とその発展についての略述。悲劇と叙事詩との若干の異同点
*おかしさはみにくさの1つ 喜劇の発展は詳細不明、公的援助も遅れる 叙事詩と悲劇の差異
6悲劇の定義。喜劇を形づくる六つの要素
*浄めの劇 6要素 描写方法:措辞・語法、音曲 方式:視覚的効果 対象:物語(ミュートス)、性格、知性 最重要は物語、出来事の組立て、悲劇は人間の行為と生の描写だから 2位、登場人物の性格 3位、知性 4位、措辞・語法 5位、音曲 6位、視覚的効果
7物語(ミュートス)の構成―その秩序と長さ
*ひとつの全体、一定の大きさ 美しい秩序 適切な長さ
8物語の統一性の意味
*何でもかでも取り上げることではない 主題とのつながり
9創作と歴史、創作の普遍的性格、挿話的性格の物語、驚きの要素
*フィクションと事実 一般性と個別性 話がばらばらではいけない
10「単純」な物語と「複合的」な物語
*逆転や認知が伴うか否か
11「逆転」(ペリペテイア)と「認知」(アナグノーリシス)、「苦難」(パトス)
*逆転、どんでんがえし、必然性が必要、『オイディプス王』 認知、無知から知へ、心情の転換、いたましさや恐れ、『タウリケのイビゲネイア』 苦難
12悲劇作品の部分(プロロゴスその他)
*構成部分 序説・前説(プロロゴス)、合唱隊(コロス)入場、幕劇―幕間歌(繰り返し)、終幕劇
13物語における人物設定と運命の転換に関する諸原則
*徳においては平凡だが名声や幸運にある人物の転落の運命 大きな過ちによる オイディプス、テュエステス(ミケーネ、ペロブス家)、アルクメオン(黄金の首飾り)、メレアグロス 悲劇の第一人者はエウリピデス、2番目がホメロス
14恐れといたましさの効果は出来事そのものからもたらされなければならぬ―そのための状況設定に関する諸原則
*恐れといたましさは構成そのものから 近親関係での悲劇 直前、承知、事後の認知
15「性格」の描き方
*人物造形、優れた性格 ふさわしさ 原型忠実 首尾一貫性
16「認知」(アナグノーリシス)の諸形態
*しるしによる認知 作家の作った認知 記憶、推論、観客の誤謬推論による認知 物語そのものからの認知
17劇作上の実際的な心得若干
*想像力、リアリティー 物語の骨格に挿話を加える
18続 劇作上の心得若干 ―「紛糾」と「決着」その他
*物語の前半が紛糾(展開、上り)、後半が決着(収束、下り) 複合劇(逆転と認知)、苦難劇、性格劇、視覚効果の劇 叙事詩的複合構造は悲劇には向かない 合唱隊も俳優
19「知性」、「措辞・語法」
*知性は『弁論術』(レトリカ)に論じた 言葉による表現 話し方は俳優の話術の問題
20「措辞・語法」―全般的考察
※文法学 *字母・音節、接続語・連結語・名指し言葉(名詞・形容詞・代名詞等)・述べ言葉(動詞)、文(句)
21詩的語法―転用(比喩)語その他について
*通常語、稀語、転用語(比喩)、修飾語、新造語、延長語、短縮語、変形語
22優れた措辞・語法のための注意
*適度に耳慣れぬ語を使うべし、平板も謎も避ける
23叙事詩について
*歴史叙述とは異なる 叙事詩は物語 主題の絞り込みを要する
24叙事詩について―承前
*悲劇と同様の観点 物語の長さと使用韻律が異なる 並行的で複雑な構成も可 ホメロスは作品に顔を出さない 現実にはあり得ない仮構をどう描くか
25詩作品への非難点とそれに対する反駁の仕方
*詩はフィクション、比喩その他を許した文学、政治や学問での正しさなどとは違う
26叙事詩と悲劇との優劣
*通俗性の多少 身ぶり動作 悲劇には音楽があり、凝集度も高い 主題に基づく統一性
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第五巻―哲学用語辞典
1元(はじめ)アルケー
2因(もと)アイティオン
*四原因説:素材因(材料)、形相因(本質・定義)、始動因(原因)、目的因(手段や道具も) 因は複数可、相互に因も可、反対の因も可 個別的な因と包括的・類的な因、偶然付帯的な因と包括的・類的な因、組み合わせた因と単独因 現実に作用の因と可能性・能力の因
3要素 ストイケイオン
*元素、構成要素 別の種に分割できないもの 幾何学の命題要素、論証の要素、一次的な三段論法 最高の類、範疇
4生まれ(生まれつき、自然) ピュシス
*生育、生成、内在するもの、運動の始まり 生育プロセス:接合・融合・付着 生まれつき、本性、素材と形相
5なくてはならぬもの アナンカイオン
*必要不可欠と必然性 必要条件、不可欠、強制強要 善や論証も必然 必然的なものは単純 永遠不動のもの
6一(1つ) ヘン
*偶然付帯的意味と本来的意味 前者は実体と属性 後者は連続体、基体・素材・類として同一、数の始め・単位・点
7ある オン がある・である 羅:ens
*偶然付帯的意味と本来的意味 である:同一、述語、属性 範疇 真偽 可能態・現実態
※範疇:実体・量・質・関係・場所・時間・位置・状態・能動・受動、10項目
※カントの悟性形式:量(単一性・数多性・全体性)、質(実在性・否定性・制限性)、関係(実体・原因性・相互性)、様相(可能性・現存性・必然性)、4項12目
8実体 ウーシア 羅:substantia、essentia
*主語的存在、存在主体(subject) 主語・基体 独立存在(形態、形相)
9同じ、異なる、差異(違う)、似 タウタ ヘテラ ホモイア
*同じ:偶然付帯的意味と本来的意味
10対立するもの、反対のもの、種的に異なるもの、種的に同じもの アンティケイメナ、エナンティア
*類と種と種差
11より先のもの、より後のもの プロテラ、ヒュステラ
12能力、能力がある、無能力、不能 デュナミス
*運動変化の始め、力
13量 ポソン
*分割可能
14質 ポイオン
*実体がもつ種差 運動変化の様態・種差、善悪
15相関的(相対的)なもの プロス・ティ
*数的な相関関係 能動受動関係
16完・全なもの テレイオン
17限(き)り ペラス
*限界、端
18よりどころ カト・ホ
*形相、素材・基体、因、位置 自体的
19配置の様態(模様・様子) ディアテンス
20持つこと(所持・状態) ヘクシス
*現実態 様態より安定持続
21受容性質 パトス
*状態変化、受動、受苦、受難
22欠如 ステレーシス
*完全に有無だけでなく中間値もある
23もつ・たもつ エッケイン
24何々から…ある(に由来する)
*素材・質料 運動の元(原因) 形相の要素
25部分 メロス
26全体 ホロン
27不具の コロボン
*ハゲは不具ではない
28類・種族 ゲノス
*ゲネシス・生成と同系語 同じ形相の連続的生成 血統、父は始動因・形相因、母は素材因 基体としての類
29いつわり プセウドス
*事柄(プラグマ実践。対ロゴス理論)としての偽り 言論としての偽り うそつき
30偶然付帯的なもの シュンベベーコス
*必然的にはそうでない
第十一巻
1哲学難問集
*知恵、始原・原理についての学的認識(※科学・哲学 宗教や慣習ではなく) 難問1知恵は単一の学か多くの学か、いかに可能か(※哲学は独立の学か否か) 2論理学の位置づけは? 3学はすべての実体が対象か 5学の対象は実体・属性の両者か 4対象実体は感覚か、エイドス(イデア)や数か 感覚的事物とエイドス、その中間領域に数(独立存在ではない) 6個物の内在要素・原理か普遍者(類や種)か 7最高の類・原理・始原は存在と一か否か、原理・始原は種か類か
2哲学難問集(続)
*8学の対象は感覚的個物か否か 独立存在・非感覚的実体 10実体・原理は永遠か消滅的か 11実体は不変不動の原理・存在と一か否か 数は実体か(ピュタゴラス・プラトン批判) 14点・線・面は実体か 12普遍の学が探求する実体は個物か独立存在か 8’質料と結合しない形相があるか 9要素・原理は種か数か
3「存在するもの」についての学
*哲学は、存在するものを存在するという限りにおいて、部分的にではなく普遍的に考察するもの 存在の第一の差異性、多と一、類似・不類似 存在と一は同じか 反対関係、欠如態、中間的な欠如態 数学者、感覚的なものをすべて量化(※科学的方法) 第一哲学・観照者のみが存在を存在として取り扱う(難問1への解答)
4「存在するもの」についての学(続)
*数学も自然学も全体は取り扱わない、哲学のみが行う
5「矛盾律」について
*ヘラクレイトスの「ありかつあらぬ」は偽
6プロタゴラス説批判
*主観的相対主義 錯覚 不動の天体 変化する量と変化しない質 われわれの同一性 対話や議論、言論 アナクサゴラスのパラドックス
7学の分類・及び「第一の学」について(難問3への解答)
*諸学では実体はさて置き、定義し属性を探求する 制作の学や実践の学(制作者や行為者が動)ではなく、観照の学としての自然学(自然の内に動の原理) 自然学では質料を離れての定義(形相)はない 観照の学は自然学(自然的実体)、数学(不変不動・非独立存在)、神学(独立存在・不動の実体)
8付帯的(偶有的)なものについて
*付帯的なものを考察する学はない たまたま、偶運 ひとりでに、自己偶発 知性や自然本性が原因
9動(転化)について
*存在:現実態・可能態、実体・量などの範疇 2通りの存在、変化【例】実体:形相と欠如態 性質:白と黒 量:完成と未完成 可能態の現実態への現実活動 矛盾律と基体の可能態としての両義性 ピュタゴラス・プラトンは変化を語れず 動かすものと動かされるもの
10無限について
*音が見えないようなもの 数、空間、時間 実体ではない(実体は定義どおりにある、無限としてなければならない) 無限は部分を持たず分割できず、現実態は分割可でなければならない(全体と部分、無限と有限) 四元素(火、気、水、土) アナクシメネス、アナクシマンドロス、ヘラクレイトス
11「変化」と「動」 について
*変化:付帯的、部分的、それ自体 第一動者、被動者、時間、始まりと終わり 変化の場合分け 実体変化:生成と消滅 動(転化):性質変化、量の増減、場所変化・運動
12「変化」と「動」 について(続)
*性質・量・場所の転化 不動、静止 接触、接続、連続 点と一
第十二巻 ※アリストテレスの初期の思想・立場 イェーガー
1探求されるべきもの・「実体」について
*プラトンは普遍者・類・イデアを実体とする 古人は四元素などを実体とした 感覚的自然的実体:永遠的(天体)、消滅的(人間など個物) 不動の実体:非質料的(プラトンはイデアと数)
2「反対のものの一対」と質料
*変化は反対性への転化 生成と消滅、増大と減少、質的変化、運動 可能態から現実態へ アナクシマンドロスのいっしょくた 質料 非存在:反対性、偽、現実態 ヌース・知性 三原理:定義・ロゴス・形相、欠如態、質料
3質料と形相、その他
*動者によって質料が形相へ変化する 生成:技術、自然本性(生殖など)、偶運、自己偶発 実体:質料・基体、形相(自然本性)、質料と形相(人間などの個物) 人間の形相・魂(ヌース知性)は質料を離れて存在しうるか プラトンのイデア
4すべての原因はいかなる仕方で同一であるのか
*構成要素:形相・欠如態・質料、熱・冷・第一質料→四元素→肉や骨 原因・原理:形相(形相因)、動者(起動因)、欠如態、基体としての質料 ※四原因説以前 動者:同じ形相(人間など)、太陽と黄道、第一動者
5すべての原因はいかなる仕方で同一であるのか(続)
*実体がなければ様態も動もない 実体は魂と身体、知性と欲求と身体 現実態と可能態
6動の永遠性
*永遠的な不動の実体の存在必然性 動、時、円環運動 現実態が可能態より先にある(アナクサゴラス、エンペドクレス、レウキッポス) 恒星天→太陽
7「第一の不動の動者」について
*円環運動、論理、事実、恒星天の運動は永遠 第一の不動の動者 知性的欲求(美)と思惟(最も善美) 現実態の実体 目的因、手段としての善、目的としての善 場所的運動、円環運動、必然、善美、始原・原理 始原・原理に天空と自然全体は依存、最上の生を生きる、純粋な快・完全現実態・観照 思惟=知性、直知、神的、知的観照・最高快・最高善 神 永遠、不動、非感覚の実体 不可分割、無限の大きさ(完全現実態、純粋形相)
8諸天体を動かすものども ※一部、後期思想?
*第一動者は一か多か 1つの動は1つの動者、遊星の運行の複雑さをどう解くか エウドクソスの恒星天以下26の天球の複合運動、カリッポスは33、アリストテレスは55天球説 恒星天・土星〜水星・太陽・月が永遠的な天空、月下の世界が生滅世界 天空は唯一、完全現実態、純粋形相 神話伝承、星々は神々
9「知性そのもの」 について
*思惟の思惟 人間の知性は質料との結合体にある知性
10総体における「善」・及び結論的考察
*善の持ち方 ポリス自由人のような天体と一定秩序のもと生滅を繰り返す月下の世界 補足的批判(主にプラトンのイデア批判) 反対物による生成論、善や悪 生成の原因と原理
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(形而上学)
アリストテレスの「第一哲学」:
「諸存在(万物)の根本的な原因・原理」をめぐる、感覚・非感覚・論理・数学・神学などを横断する幅広い包括的な考察
※アルケー(生成変化/存在)、パルメニデスの存在、運動のパラドックス
第1巻(Α) - 序論(四原因について) (全10章) ※哲学史
第2巻(α) - 心得(全3章) ※後で追加・挿入か
第3巻(Β) - 哲学的問題集(全6章)
第4巻(Γ)ガンマ- 第一義的存在(全8章)
第5巻(Δ)デルタ - 哲学用語辞典(全30章) ※後で追加・挿入か
第6巻(Ε)イプシロン - 存在(全4章)
第7巻(Ζ) ゼータ- 実体(全17章)
第8巻(Η) イータ- 質料(全6章)
第9巻(Θ)シータ - 可能態・現実態(全10章)
第10巻(Ι)イオタ - 「一」について(全10章)
第11巻(Κ) カッパ- 諸論要約(全12章) ※後で追加・挿入か 第3巻の第2-6章、第4巻全、第6巻全の概要。『自然学』第2巻の第5-6章、第3巻の第1-5・7章、第5巻の第1-3章の抄録
第12巻(Λ)ラムダ - 不動の動者(全10章) ※後で追加・挿入か
第13巻(Μ)ミュー - 非感覚的実体(全10章)
第14巻(Ν)ニュー - 数(全6章)
※アリストテレスの神学
動機・モチーフ 原理・論理探求、システム思考の帰結 存在者の位階
神話の神々でもなく人格神でもなく 自然哲学者たち、プラトンを超えて
イデアとエイドス
※「坂下浩司 アリストテレスの形而上学における存在論と神学の関係について.pdf」
*イデアは存在や運動・変化を説明しない イデアは個物に「自体・そのもの」と言い加え、二重化したもの アリストテレスは質料(基体)・可能態が形相・現実態に成っていくと考えた 質料の質料・第一質料・純粋質料〜形相の形相・第一形相・完全現実態=神、位階的秩序・ヒエラルキー、最期にプラトンのイデアが乗っかっている
*ピュタゴラスは数で世界は成り立っていると考えた→プラトンのイデアの原型 イデアは実在の二重化、多重化 イデア実体説の諸矛盾を突く
*古代ギリシア哲学者のアルケー論の総決算 知恵・哲学は最高の知識 自然哲学者たちの質料因の探求、四元素 運動因の追求、パルメニデスの愛とドクサ、アナクサゴラスのヌース、エンペドクレスの愛と憎 レウキッポスとデモクリトスの原子と空虚 ピュタゴラス、数による世界形成 プラトンが初めて形相因と目的因を取り上げる
*質料と形相、可能態と現実態の関係 相対的な位階的・目的論的秩序関係 質料は材料ではなく、欠如態・未完成態・低次の存在形態、形相は形態ではなく、充足態・完成態・高次の存在形態 すべての事物は最低次の存在形態(第一質料)から最高次の存在形態(第一形相)にいたる目的論的位階秩序を形成、頂点に神 秩序を固定する故の諸矛盾 肉体―霊魂―理性、質料―形相―形相の形相 外在的超越か内在的超越か アリストテレスはプラトンの超越的イデアを内在化したが、その存在連鎖の最後に超越者・神を置いた 見えないものから見えるものへ、再び見えないものへの逆転
*肉体―霊魂―理性は内在への方向 神は内在的超越者 絶対無 ※西田幾多郎
※第一質料→第一形相、生→死 ※圧倒、脱力感、酩酊、眩暈・吐き気
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エウデモス倫理学
解説 *エウデモス倫理学はアッソス滞在時代の、エウデモス倫理学はリュケイオン学頭時代の講義ノート 原-倫理学
第一巻
1 幸福は美善快 実践学 良き生=幸福は何に基づき、どう獲得されるのか 生まれつきか思考知識学習か習慣訓練か、霊感や運・偶然か 知恵(観照知)、徳、快楽に基づくか、考えは人それぞれ
2 幸福そのものと、それに不可欠の手段条件とは違う
3 運・偶然や生まれつきでないならば、一般化できる
4 幸福に重要なのは魂・精神か行為・実践か 評判目当ての技術や金儲け目的の生活ではない 徳・知恵・快楽、政治的・哲学的・享楽的生活 アナクサゴラスの考え
5 生きる価値とは 病苦や困苦だけの生、子ども時代の生活、無機質的、動物的快楽、植物的生存 アナクサゴラスの観照生活 アッシリア王の享楽生活 徳ある政治家の生活 老ソクラテスの徳=知、正義の知識習得=正しい人 理論学と技術学(医学や政治学) 徳の知ではなく身に備わること、正義の知ではなく正しい人になること、健康知識ではなく健康であることが大切
6 具体的な事実や証拠をもとに 議論の進め方 本質ととともに理由や原因も明らかに 原因と結論は別々に考える
7 人間にとって幸福が最高善 善には人間の行為の対象になるものとならないもの
8 最高善とは何か 善そのもの善イデア、共通善普遍善、行為の終局目標としての善 イデア批判、空疎で無益 共通善はすべてに内在、行為の対象ではない 行為の終局目標としての善、実践的な知識善(政治、家政、思慮) 例えば健康を目標に役立つ行為、能動因 ただし健康が善だとの証明者はいない
第二巻
1 内在善と外在善 内在善、知恵・徳・快楽、状態・可能性と現実化活動・動き 徳は最高の様態、状態・可能性(過程)→これに応じた働き、活動・現実化(成果) 同じ働きでも徳の優劣の違い 魂の働きも徳の働きと同じ 魂が優れた状態(徳)の時の働きが良き生=終局目標としての善=幸福 幸福は完全な徳に即しての完全な生の活動 幸福は活動、現実態 睡眠中は魂活動の一部(感覚・欲求部分など)休止、栄養・成長の植物的部分は活動 魂の理・ロゴス(命令と随順) 理性は欲求や情念を統御 2つの徳、性格と知性、理の随順と命令 性格の徳 善かれ悪しかれ手段が応じた状態・結果を生む
2 性格(エートス)は習慣(エトス)から 情念、能力(自制)、情念による状態
3 行為は一種の運動、超過・不足・中 中が最善、知識や理に適う 性格の徳は中庸 情念表(※ヨーロッパ情念論の水源) ※中庸は中間か、むしろ止揚
4 知性の徳、物事がどうあるかの真理、その生成の真理 性格の徳は快楽と苦痛に関わり、徳は魂の平静をいう
5 超過や不足の悪徳は安易に流れる方向の情念状態、徳はその反対方向
6 実体は始原・アルケー、運動変化の始原 必然的な始原、神 自然的実体の生成 変化しない始原、数学 人間は行為の始原、徳・悪徳に決定権・責任をもつ
7 自発的・故意か不本意か 欲求(願望、憤激、欲望)、選択、思考 欲求に対しての自発・不本意ではない
8 選択に対しても同様 自発的・不本意再論 自制ある人、ない人双方に自発性あり、外からの強制ではない 内部の理性と欲求同士では、不本意・強制とも言える 現実的には人間本性を超える多大な強制力が働くことがある
9 思考による自発性 承知か無知か
10 選択 判断か欲求か 判断と欲求の両方からなされる 目的に対する手段についての思量的欲求 選択は自発的行為だが、自発的行為すべてが選択ではない 不正行為には不本意も故意・自発もある 選択の目的、手段選択の前に 善ではなく善に見えるものを選択 快楽追求(超過)や苦痛忌避(不足)が善に見える、中庸ではなく
11 目的、何のためにかは徳が決める そのための手段、何をどう行うかは理性が判断する 徳も悪徳も自発的、故に称賛・非難される
第三巻
1 中庸の徳 勇気、無謀・平気と恐怖・臆病 勇気とは理に従うこと、理は美(立派)を選ぶ 擬似的勇気(市民兵の廉恥、傭兵の知識と経験など)
2 節制、放埒と鈍感・無感覚 味覚と触覚(美食や好色)に対しての節制、視覚・聴覚・嗅覚は除く
3 穏和、腹立ちやすさと意気地なし・奴隷根性
4 鷹揚、放漫とけち 財貨、金銭
5 高邁、高慢と卑屈 魂の大きさ 物事を重く見ないで軽く見る
6 豪勢、贅沢・見栄っぱりとみみっちさ
7 徳ではなく中の情念? 義憤、嫉妬と悪意 慎み、恥知らずと内気 親愛 威厳 正直・率直 機知 中と両極端の差異大(両極同士の方が大?)
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年譜
索引