ノート:大森荘蔵『知の構築とその呪縛』

知の構築とその呪縛 (ちくま学芸文庫)

知の構築とその呪縛 (ちくま学芸文庫)

  • 作者:大森 荘蔵
  • 発売日: 1994/07/01
  • メディア: 文庫
 

(目次)

 

文庫版へのはしがき

 *常識から自然科学へ、略画から密画へ 論理的科学史 「心」の排除、価値からの自由・無縁、全世界はいわば死物(伊藤仁斎

 

1 概説的序論 *近代科学以前と以後の近代的世界観

 世界観の交替 *死物的自然観/心のありか/現代の世界観の誤り *密画化厳密化は常識を超える/活きた自然との一体性/感性の復元の可能性

 

2 略画的世界観

 細部による理解の限界 *例えば植物生長は人知を超える/不透明による理解の限界 *見えないこと/心の透明性 *私秘性、他我問題/「私に擬して」 *「自分と同様」と感じる範囲の違い/略画的世界観 *目的因果論

 

3 日本における略画世界

 古代日本の神々/日本の霊たち/朱子学/陰陽二気論/理と気が自然と人間を貫通/天地自然は活物 *王陽明荻生徂徠(聖人には至れず、丸山真男は誤解釈)/伊藤仁斎の場合 *人倫、人間中心主義

 

4 西欧古代中世における略画的世界観

 古代ギリシアの生きた自然 *アナクサゴラス/魂と物質 *エピクロスアリストテレスの霊魂/パターンの認識/錬金術/略画の細密化

 

5 略画の密画化、その始まり

 人体地図/西洋古代中世の人体地図/生命の原理/動物機械/プネウマ *気息 生命プネウマ、霊魂プネウマ/プネウマと霊魂原子/ハーベイとプネウマ説/略画から密画へ/数量化の不可欠性 *血液量の算定/死物世界観への進行

 

6 略画の密画化、不可避の過程

 少しく精しく追想する/自然で無理のないこと/略画から密画への過程/天文学における密画化/略画天文学の破綻/ガリレイの密画的観察 *ガリレイの望遠鏡と天才的洞察:月面は凸凹であり、われわれは太陽光と同一方向から見ている。月の影は地球の影、すなわちわれわれの地球も月同様に宙に浮いている天体である/太陽の黒点の発見/新星の距離決定における考察/地球の差別視の訂正/天動論者の密画的論駁/ガリレイの密画的回答

 

7 密画化と数量化

 「整合性」の必要/密画的描法による不整合の暴露/動力学における密画的思考の萌芽 *ガリレオアリストテレス主義者シンプリチオ/密画描写の本質としての数量的描写 *『新科学対話―機械学および地上運動に関する2つの新しい科学についての対話および数学的証明』/略画的世界観との対立/数量化に対する誤解 *シンプリチオ継承者としてのフッサール/数量化の意味 *数量化は現実を抽象化できない、性質を比較できるものにするだけ ※微妙

 

8 密画の陥穽―物の死物化

 細密描写の対象/根本的誤解/「死物」物質の概念/裸にされた「物」/現代科学の基本的物質観

 

9 感覚的性質のストリップ

 無人の死物世界/感覚は主観的印象/感覚的性質の所在/デカルト生理学の基本的構図/感覚産出機構の謎/自然の数学化/知的革命の革新/フッサールへの反論/道具としての数学

 

10 二元論の構造的欠陥

 *主客二元論、第一性質と第二性質との分離

 誤解の上に立つ構図/バークリーの批判/デカルトの反論/感覚的な形状と幾何学的な形状/デカルトの誤り/デカルトの方法的懐疑 *本当・真があるとの前提/だが懐疑は致命的、バークリーの指摘 *写真に写る街は実在するか不可知

 

11 二元論批判

 現代科学は誤りか/ヒュームの批判 *知り得るのは知覚だけ/可感的な性質なき物体/二元論は不可知論を内蔵/カントの同様の批判/現代のわれわれは?/「重ね描き」 *多重の答え、いくつもの「正解」/現代科学と重ね描き

 

12 原子論による密画描写

 時間的空間的描写の終点/点描法/「場点描」と「原子論描写」/「変化の描写」/「不安」と「同一」 *エレア学派のパラドックス/「同一」の意味 *論理階型・クラスの違い/「同一性」の指標 *煙の同一性/原子論描写/古代原子論/エピクロスの原子/知覚因果説 *見える・見えないで区別、原子=不変=真を求める性癖

 

13 人体の密画描写と知覚因果説

 人体描写の密画化 *望遠鏡と顕微鏡/デカルトの人体描写/人体機械/人体の機械化・死物化 *オートマトン(自動機械)/知覚因果説 *「機械の中の幽霊」ではなく松果腺連結?/投影の困難/知覚因果の難点/方法的懐疑 *知覚は説明不可能なトートロジー

 

14 物と感覚の一心同体性

 科学は感覚を説明できない *物理化学過程は精神心理現象ではない/科学者の実際/錯覚論法/幻滅論法の知覚因果説への影響 *知覚因果説は定義、単なる「同定」化/「物」と「知覚像」の一心同体性 *否、むしろ同体。主観=客観/感覚の十人十色性 *知覚=モノはらっきょ/感覚もまた客観的

 

15 自然の再活性化

 *知覚とモノが別物なら知覚因果説は不成立(越境だから)。だが、知覚因果説は科学的常識として横行

 視覚風景は透視風景/透視風景の遠近順/透視構造の有界性 *われわれの視線カメラはどこにあるのか/知覚因果説解明の謎 *覗くのではなく、すでに見えていることが肝心/知覚は脳産でない *知覚「像」ではなく実物視/前景因による論理的変化/日常描写と科学描写との重ね描き/迷路の呪縛/近代科学と活自然との共生/活きている物と自然感/感性を取り戻すということ

 

文庫版解説 「物活論」の復権 野家啓一

1自分の褌 2「論理的科学史」の構想 3「重ね描き」から「物活論」へ

 

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 世界観転換への誘いであるが、近代科学的世界像は微動だにしていない。人間たちは変わらない。また、残念ながら「以前=中世の前の古代」が理想郷(真なる世界観)だったとも思われない。

 

 多重的、多層的、論理階型の認識モデル

 

 モノと心はメビウスの輪、同じでないが一体 物理知覚が精神知覚へ、知覚はいつの間にか認知・認識へ

 

大森荘蔵セレクション (平凡社ライブラリー)

大森荘蔵セレクション (平凡社ライブラリー)

  • 作者:大森荘蔵
  • 発売日: 2011/11/10
  • メディア: ハードカバー
 

 

 

物と心 (ちくま学芸文庫)

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