ノート:『アリストテレス』中公世界の名著
(目次)
アリストテレスの思想と生涯 田中美知太郎
・われわれにとってのアリストテレス
発展途上にあるアリストテレス研究 アリストテレスに負うもの *さまざまな
概念 存在階層秩序論(ヘーゲル、ダーウィン、マルクス、コント) 歴史的理解 *形相(エイドス、ロゴス)と質料(ヒュレー) 新しい歩み 形相と素材 形相の論理性
・生涯
生い立ち アリストテレスの家系 アカデメイアの20年 プラトン不和説 人よりも真理が大切 遍歴時代 マケドニア時代 リュケイオン時代
・著作
失われた著作 *3世紀のディオゲネス・ラエルティオス(DL)の著作目録(アレキサンドリア図書館か) *散逸あり 著作の特殊性 *キケロ、『形而上学』の欠落 形而上学とは何か *DLにも欠落 中世写本 *5-6世紀のヘシュキオスの目録 *『形而上学』あり、3-5世紀の謎 2系統ある著作の伝承 *アリストテレス→テオプラストス→ネレウス(小アジア)→アペリコン(アテナイ)→スラ(ローマ)→チュラニオン:ローマ時代に再発見、ただしキケロやDLにまでは伝わらず アンドロニコス(AD1c.ロドス島出身、逍遙[ペリパトス]学派11代目学頭)の仕事 *内容分類して目録作成、論理学から始める(A図書館系との差異) イェーガー革命 *著作編年で再構成 アリストテレス研究の方向 *専門家論争は大同小異 分析性や整合性を求め過ぎず多面性を持った哲学者として捉えるべきでは
・本巻の構成
※講義ノート集
同テーマで何度も講義 だから繰り返しや要約も多い
歴史的、同時代的諸説を紹介し批判し自説を説いていく
自問自答
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政治学 (ポリティカ)
解説 *あくまでポリス・市民国家のあり方の考察、近代政治・国家学ではない また実践学であり倫理学 奴隷制の土台 市民と国家の一体性 ※ルソー
第一巻(1,2)
1国家は他の共同体と同一視されうるか
*国家・ポリスは善をめざす共同体 為政者は家長の延長ではない 国家や家族のでき方から考察しよう
2国家社会を作るのは人間の自然の本性に基づく
*男女で一対、同様に治者被治者(適性)で一対と自然が定めた 女性と従者(奴隷)は別の役割存在だが、ギリシア外では同一視、夷狄は被治者である証明 共同体は家族、村落、王制国家と発展、長老が家長や王 共同体は生存の必要によって生まれ、生活向上と善をめざす 人間は自然本性で国家的動物 群棲動物中、言語で善悪正邪等を唯一論じうる 全体は部分に先行する、国家も個人に先行する ここから外れる者は野獣か神 国家は法律等で秩序を保つ
第三巻(全)
1市民国家における市民の意味
*ポリスとは何か ポリスを構成する市民 裁判と統治(役職)への参加資格 ポリス体制による参加資格の違い
2市民の実用的な定義とその疑点
*市民の条件、生まれや居住 改革での編入者(奴隷身分等から) 市民条件以上に公職での仕事内容が問題
3国家の同一性とは
*国家と政権 政変後も同一国家か
4立派な市民はまた良き人でもあるか
*共同体は船、市民は船員 ポリスにより市民の徳は変わる まず各人が自分の任を果たす 様々な役割 人の徳は治者、市民の徳は治者被治者の徳か 治める・使う・管理するは作る・するとは違う ポリスの良き市民は治者被治者ともにできること 知恵・叡智の徳は治者だけのもの(※哲人とのつながり) 笛を作ることと吹くことは別のこと
5市民の徳と人間の徳との一致は市民資格の制限と治者と被治者の区別において考えられる
*役職につく人=市民か 手工者や奴隷 政治制度と市民条件による 名誉ある役職につく人
6 市民国家の目的と統治の諸形態
*国制とは政府のあり方 国家の存在目的と統治の種類 生活の維持と向上 政治や一家宰領(家政)は共同体や家族のためだが自分自身も享受する、正義の国制 支配者利益のみ重視の国制は邪道
7正しい国政と邪道にそれた国政
*国制=政府 最高権限は一人・少数者・多数者(大衆)に委託 公共の福祉のための統治なら正しい国制、私利私欲のための支配なら邪道の国制 市民の名は前者のときのみ 正しい統治、一人なら王制、少数なら貴族(有徳者)制、多数なら国制(共和制)で国防責任者 邪道の支配、僭主独裁制、寡頭制(有産者)、民主制(無産者)、いずれも共同体市民全体ではなく私利私欲をめざす ※衆愚民主政とは「無産者」のわがまま支配、住民・市民エゴ
8寡頭制と民主制
*権力者の人数ではなく貧富の違い 根拠が富か自由か
9徳―市民国家が目標とすべきもの *9-13:配分的正義 分配的?
*寡頭制と民主制の正義 公職の配分の平等 何を、誰に? ポリスの目的は単に共闘や交易ではなく、よく生きること これに貢献できる徳がどれほどあるか応じて
10国家最高の権限は誰がまたは何が持つべきか
*大衆か富裕者か 一人か複数か 法律か
11国家最高の権限は大衆が持つべきであるとする主張の検討
*大衆は多数なら批評に優れる 審議審査の役目 同業者の目も大事だが、享受者も良き判定者 要職者を選定や判定する陪審員や議員に向く やはり法にこそ最高権限を委ねるべきか
12国家における正義とは何か、平等とは何か
*配分的正義、比例的平等 役に応じた長所、長所に応じた役職(上手い笛吹きに良い笛) 富、自由市民、生まれの良さ、徳
13最善の国制における治者たる者の条件の検討
*治者条件の検討 全体としての大衆は優れている 優れた少数者、陶片追放 ゼウスのような人、王制
14王制の諸形態
*英雄時代の王制(軍事総帥・裁判官・司祭)、バルバロイ型(世襲・立法)、選挙・独裁僭主制(レスボスのピッタコス等)、スパルタ型(終身将軍職)、絶対王制
15王制においての難問の検討
*独力統治か法律支配か 法律逸脱問題に王制か貴族制(徳ある複数の人)か
16法の支配こそ最上とする人たちの議論
*絶対王制と法律 理性と欲念 法は中庸 例外には複数の知者
17絶対至上の王制はいかなる場合に可能か
*王制、貴族制、民主制に適合した国々
18まとめ
第四巻(全)
1政治学の扱うべき諸問題
*理想の国家体制だけでなく、現実に可能な国制の検討も 学び直すのは新たに学ぶに劣らず難しい 民主制や寡頭制にもいくつかある 国家体制と法律は違う
2諸国家体制の間の優劣の差、及びそのうちこれから取り扱うものとその問題点
*優劣:貴族制、王制、共和制、民主制、寡頭制、独裁制 どの国にはどれがふさわしいか
3 国家体制に多くの種類があることの原因、及び国家体制の分類法
*国家には多くの家族、人々 貧富、職業、所有の状況の違い 2分類法 民主制と寡頭制、北風と南風、2音階
4民主制と寡頭制の規定。国家を構成する初階層。民主制の種類
*数の多寡でなく、民主制は自由市民が、寡頭制は富裕者が主権を握ること 国家の構成部分の多様性 農民、手工職人、商人、日雇労務者、戦士 プラトン『国家』批判 金持ち、公僕、国会議員、裁判官 役目は兼務できても貧富はできないので、民主制と寡頭制がある 多くの職業、多様な地域、生まれや境遇 民主制の種類 1平等 2少額の資産資格 3生まれ 4市民 5法律のない大衆票決、デマゴーグ、一般意志 独裁制と同じ
5寡頭制の種類
*1一定の資産額 2寡頭的財産制 3世襲制 4門閥制 ただし、民主制や寡頭制と言いながら、法律運用、習慣や教育でその性格は逆になったりもする
6民主制と寡頭制の種類と、その社会的・経済的状況
*民主制には余暇と法律が必要、裕者は退場し法律も無視される 寡頭制にも法律が必要、最後には門閥化し法律は無視される
7貴族制の種類
*貴族制、徳の最優秀者支配制 カルタゴ型:富・徳・一般民衆
スパルタ型:徳・一般民衆 寡頭制的共和制
8共和制の規定。貴族制との関係
*共和制・独裁制は理想国制の失敗 共和制は寡頭制と民主制の混合、民主制寄りは共和制、寡頭制寄りは貴族制と呼ばれる 共和制は富と多数、貴族制は自由(多数)と富と徳
9共和制を作る混合の仕方、適正な混合の仕方とスパルタの例
*民主制と寡頭制に共通の法律制定、中間をとる、選択採用する 役職を民主制はくじ引きで、寡頭制は選挙で決める スパルタの例 ※役職者をくじ引きで決めるのは古代ギリシアの民主主義=配分的平等の典型
10独裁制の種類
*バルバロイ型、英雄時代の王制、以上は選挙制 絶対王制
11最善の国家体制、すなわち中間的な国家体制
*最大多数の人間と国家が共有できる国制 幸福な生、中庸の徳、国家の生き方 富める人々、貧しい人々、中間の人々 両極端の人々は偏り道理に従いにくい 極端な寡頭制や民主制にもなりやすい 中間者が多数が良い 国家体制も中間的なものが良い ある程度の大きさ 小国家は党派争いが起きやすい 中間的が少数のとき、中庸から外れた勢力が自分の側に引っ張り、民主制や寡頭制が強まる
12国家を構成する階層の質と量の均衡関係と国家体制との対応。国家体制存続の条件
*どんな国制がどんな人々にふさわしいか その体制を望むものが多数であることが原則 人々の質:自由、富、教育、生まれなど 量:人数の多さ 量が優勢→民主制(優勢な職業に応じた型) 質が優勢→寡頭制
13寡頭制及び民主制における国政保持のための工夫。重装歩兵階層の重要性
*国政参与の工夫:議会出席、役職就任、裁判参加、重装武具所有、体育訓練義務 罰金や手当 ギリシア:王制→騎兵市民→重装歩兵
14国家体制を組織・構成する三つの機関のうち、1審議する部分について
*戦争と平和、軍事同盟、重要刑罰、選挙、執務審査 民主制の基本は市民全員で審議決定 順番で交替、重要度に応じて全員で審議、別件は選挙やくじ引きで選んだ役職者に委任、何でもすべて全員で 寡頭制の基本は特定の人々がすべてを審議 資格を緩やかにすれば共和制に、きつくすれば門閥制に近い 別途審議を委託すれば貴族制に近いことも 真の民主制のためには議会審議でも手当支給が良い 寡頭制でも審議決定プロセスに一般大衆の参与を組み込む、可決権など
15-2国家体制の役職について
*種類、期間、資格条件 神官、演劇後援者、海外使節、穀物測量役など多種多様 小国家にとってこそ問題 役目・機能また国制に応じた資格条件、役職 国家統治の役職任命、誰が誰をどう選ぶか、任命者(市民全員/一部)・被任命者(全員/一定資格)・任命法(選挙/くじ引き) 民主制、共和制、寡頭制で広→狭、貴族制は選挙重視
16-3裁判する部分について
*資格条件、裁判の種類、任命法 法廷の種類:執務審査、国事、罰金、殺人、外国人問題等 任命:全員/一部、くじ引き/選挙 国制にふさわしく
第五巻(全)
1問題―内乱と体制変革の原因は何か。それに対処する有効策は何か
*体制転換と権力奪取や一部変革 数的あるいは比例的平等をめざす 寡頭制より民主制が安定
2内乱と変革の原因―一般的考察
*どんなとき起きるのか(動機)、目的、端初は何か(誘引) 不平等や不当に不平を感じて、利益回復や名誉挽回のため、度を越した感情など
3つづき―詳論
*暴慢と利益、名誉、力の優越、恐怖、軽蔑、市民構成バランスの崩れ 選挙運動、軽視、些事の看過、種族の合一不調和
4つづき
*具体事例 国家興隆の立役者はきっかけは自他どうであれ内乱を引き起こしがち 暴力と謀略、当初からか後段になってからか
5民主制の変革の原因
*デマゴーグの無軌道の扇動(民衆への不当な利益誘導) かつては軍人出身のデマゴーグが僭主独裁者にも(民衆の庇護者として振る舞う) また法律無視の民主制になる傾向も
6寡頭制の変革と内乱の原因
*支配層の民衆への不正 政権奪取(親族間でも) 政権内部からもデマゴーグ的に振る舞い反乱 様々な内部対立
7貴族制の変革と内乱の原因
*同等の徳を持つと自負する人々 体制に不正があれば内乱の素地 共和制なら民主制と寡頭制の適正混合、貴族制ならそれと徳 貴族制は不正な利益獲得も起こりがち
8諸々の国家体制の維持保全策について
*階層勢力が伯仲のとき、些細な違法行為に警戒 1つ1つは小さくとも合わされば大きい 他階層との良好な関係、有力者の国政参与、取り扱いの不正排除 内部での民主制、短期的交替制 内外の共通敵の定立 法律による対立抑制 経済査定による財産資格の見直し 公私とも勢力の突出する、また反発・逆上する人物を作らない、過大化させない、規制できる法律(※与え過ぎない、一度に取り上げない) 中間層の拡大 汚職、公金私消の排除 社会バランス、民主制では富裕者を寡頭制では貧者を優遇しいたわる(周辺職につけ、中枢要職は自ら固める)
9つづき
*職務条件:忠誠心、職務能力、体制適合の徳 バランスの悪さ、役職の特性に応じて優先順位 現体制を良しとする人々を増やす 「ほどほど」の大事さ、例えば民主制の特徴の重視がかえって民主制を解体する ※完全さや純粋さ志向は現実的には危険、現実はあいまいの中にちらと特徴が見えるもの、完全は完全ではない(概念は概念の中にしかない) ※このあたりアメリカ政治学 反体制派を刺激することは過ち 体制に適合した教育の重要さ、実践されていること 実情はただの享受、寡頭制の子弟は自堕落な生活、民主制では各人の勝手気ままの自由 ※ここは天国か煉獄か、「自由と平等」問題がすでに登場
10単独者支配制について
*王制は貴族制と同列、僭主独裁制は寡頭制と民主制両方の極端な結合体、僭主独裁制は最悪の体制 王制と僭主独裁制は正反対 王は徳の卓越性から選ばれ、僭主はデマゴーグ出身の簒奪者 王は公利を僭主は私利を求める 謀反の始まりは侮辱、肉体的凌辱、恐怖、軽蔑 相反する体制、僭主独裁制には民主制、王制には貴族制 僭主独裁制の内部崩壊は近親や近臣の憎悪や怒り、軽侮が原因 王制は外部崩壊は少ない 内部崩壊は内紛、また王制が実質的に僭主独裁制の場合
11つづき
*維持の理由は崩壊と逆の要因 王制は非専制的な方が永続する 僭主独裁制の保全、謀反のあらゆる芽を摘む 民主制でのデマゴーグ、僭主独裁制での追従者、通報者 自国の同胞より他国人を好む 卑小な人間を作る、相互不信、能力を育てない 保全策2、王制的に振る舞う 公共財産への保管者としての態度、人物像、名君的態度や振る舞い 対抗できる敵を作らない、怨みを買わない、援助者庇護者の振る舞い
12むすび
*僭主独裁制は短命 シキオンのオルタゴラス一族が100年、コリントのキュプセロス一族が73年、アテナイのクレイステネス一族が35年 周期、教育不可能な者が出現 『国家』でのソクラテス(プラトン)の諸説批判
第七巻(1-12)
1最善の(最も幸福な)生活の規定
*国家、個人にとっての幸福な生活とは 外部的な善(富や名声)、身体の善(健康、体力、美貌)、精神の善(徳) 外部や身体の善が先行するのではなく、まず徳がなければならない、徳が欠けた幸福はない 国家も同様 外部や身体の善も備えた徳のある生活
2個人と国家の善(幸福)に関する諸説
*国事奉仕か個人生活優先か、最善の国制とは 観照生活、愛知者 政治家と愛知者 為政者の専制思考、戦争と征服、隣国との平和
3私人の生活と為政者の生活の優劣
*政治家か自由人か 徳と実践能力 幸福は行動的生活 観照も行動的 隣国からの孤立も1つの行動 内部行動する神や宇宙
4国家の大きさと人口の限度
*最善ポリスの条件 ただし実現可能な ポリス人口や国土 ポリスの大小は単純人口や広さではなく市民の人数とその能力の大きさ 多すぎる、少なすぎる人口 相互に知り合える、自給自足できる大きさ
5国土の質、広さと形状、都市の位置
*自給自足できる大きさ 国土防衛、戦略的に
6海に開けていることの利害得失、海軍力
*港湾 海軍力
7市民の性質、特に気概について
*ヨーロッパ民族は気概に富むが知能に欠け単に独立、アジア民族は反対で隷属 ギリシア民族は気概も知能にも富み、独立しポリス形成 気概は激情で正負に働く
8国家に必要な階層と国家の部分となる階層
*必要条件と十分条件 共通目的と様々な手段 自足する共同体 市民の幸福、徳の実現 国制の違い 必要な仕事:食糧、技術、武器、金銭、祭祀、政治や裁判 従事する人々:農耕者、職人、兵士、富者、神官、政治家や裁判官
9おのおのの仕事に対応した階層の構成と分離
*誰がどう従事するか、国制による違い 最善の国制、幸福・徳 職人や商人、農耕者は徳の生活ではない 兵士と政治家などが徳ある生活、政治家や神官は高齢者
10階層分離と共同食事の起源、土地の分配、農耕者の身分
*戦士・農耕者の階層、エジプトやクレタ起源 共同食事、イタリア起源 国土は共有と私有に、さらに前者は祭祀用と共同食事用に、後者は国境付近と都市付近に分ける 農耕者は奴隷か夷狄の農奴に
11都市の立地と設計、城壁の利益
*健康面、気候的自然条件 行政・軍事面 水利面、水と空気 城塞、都市区画
12共同食事の制度と施設、各種施設の配置
*神事とアルコンの共同食事は同一の広場で、体操場 商業用広場、法務や警察の役所 山林・農地管理人のための建物
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(政治学)
講義的 むしろ後世がこれを模範として講義をしたということだろう
分類的分析的 事細かな場合分け
具体的現実的事例に基づく
総合的人間的実践的 情理を尽くす
実際的真理、マキシム金言が盛りだくさん 現実には最善を求めない
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詩学 (ポエティカ)―創作論 *ホメロス論、悲劇論 散逸の後半は喜劇論か
解説 *文芸創作の技術 原作者(✕吟唱者・演技者)・韻文(✕散文)・物語(✕歴史) 詩の範囲:叙事詩・抒情詩・悲劇・喜劇等 日本での詩や詩人は劇や劇作家ではない ミメシス(模倣・描写)とは可能態の出来事を創作ではなく描写すること(現実態は歴史) プラトンの文芸批判は哲学とは別で知識論としては及ばないということ アリストテレスは文芸の独立性の上に文芸論を論じた ギリシア悲喜劇全盛期を過ぎた時期 講義草案的なもの、不整備、矛盾や不統一 古代中世は不評、ルネサンス以降多種多様な解釈
1論題の設定、創作(詩作)と描写(模倣)、描写行為における手段・媒体の差異
*叙事詩、悲劇、喜劇、ディテュランボス(ディオニソス頌歌劇)、音楽(笛や竪琴) 同じミメシスだが各々の違い
-1手段・媒体の差異
*リズム・言葉・音曲 音曲とリズム:音楽 リズム:舞踏 言葉:散文と韻文 叙事詩・抒情詩等 エンペドクレスは叙事詩形式だが、詩人ではなく自然哲学者 リズム・言葉・音曲:ディテュランボス・ノモス(アポロン頌歌)、悲劇・喜劇等
2-2描写する対象の差異
*行為する人間、卓越・劣悪・人並か 画家の描写同様 悲劇は卓越者、喜劇は劣悪者を描く
3-3描写の様式の差異。付、 「ドラーマ」という名称の由来と悲劇・喜劇の発生地に関するドリス人の主張
*作者や時々の仮託人物が描く(ホメロス)、同一の仮託人物が描く、劇形式で描く(すなわちドラマ) 悲劇・喜劇の起源についてのドーリア人の主張
4創作(詩作)の起源とその発展の二方向
*自然本性に基づく2原因 模倣・描写する(まねぶ=学ぶ)、その結果を喜ぶ(例えば絵画) 似像・似顔絵 即興から創作(詩作)へ 2方向、頌歌や讃歌、諷刺毒舌 ホメロスの諷刺『マルギテス』 諷刺詩作家が喜劇作者へ、叙事詩作家が悲劇作家へ推移 悲劇の発展
5喜劇とその発展についての略述。悲劇と叙事詩との若干の異同点
*おかしさはみにくさの1つ 喜劇の発展は詳細不明、公的援助も遅れる 叙事詩と悲劇の差異
6悲劇の定義。喜劇を形づくる六つの要素
*浄めの劇 6要素 描写方法:措辞・語法、音曲 方式:視覚的効果 対象:物語(ミュートス)、性格、知性 最重要は物語、出来事の組立て、悲劇は人間の行為と生の描写だから 2位、登場人物の性格 3位、知性 4位、措辞・語法 5位、音曲 6位、視覚的効果
7物語(ミュートス)の構成―その秩序と長さ
*ひとつの全体、一定の大きさ 美しい秩序 適切な長さ
8物語の統一性の意味
*何でもかでも取り上げることではない 主題とのつながり
9創作と歴史、創作の普遍的性格、挿話的性格の物語、驚きの要素
*フィクションと事実 一般性と個別性 話がばらばらではいけない
10「単純」な物語と「複合的」な物語
*逆転や認知が伴うか否か
11「逆転」(ペリペテイア)と「認知」(アナグノーリシス)、「苦難」(パトス)
*逆転、どんでんがえし、必然性が必要、『オイディプス王』 認知、無知から知へ、心情の転換、いたましさや恐れ、『タウリケのイビゲネイア』 苦難
12悲劇作品の部分(プロロゴスその他)
*構成部分 序説・前説(プロロゴス)、合唱隊(コロス)入場、幕劇―幕間歌(繰り返し)、終幕劇
13物語における人物設定と運命の転換に関する諸原則
*徳においては平凡だが名声や幸運にある人物の転落の運命 大きな過ちによる オイディプス、テュエステス(ミケーネ、ペロブス家)、アルクメオン(黄金の首飾り)、メレアグロス 悲劇の第一人者はエウリピデス、2番目がホメロス
14恐れといたましさの効果は出来事そのものからもたらされなければならぬ―そのための状況設定に関する諸原則
*恐れといたましさは構成そのものから 近親関係での悲劇 直前、承知、事後の認知
15「性格」の描き方
*人物造形、優れた性格 ふさわしさ 原型忠実 首尾一貫性
16「認知」(アナグノーリシス)の諸形態
*しるしによる認知 作家の作った認知 記憶、推論、観客の誤謬推論による認知 物語そのものからの認知
17劇作上の実際的な心得若干
*想像力、リアリティー 物語の骨格に挿話を加える
18続 劇作上の心得若干 ―「紛糾」と「決着」その他
*物語の前半が紛糾(展開、上り)、後半が決着(収束、下り) 複合劇(逆転と認知)、苦難劇、性格劇、視覚効果の劇 叙事詩的複合構造は悲劇には向かない 合唱隊も俳優
19「知性」、「措辞・語法」
*知性は『弁論術』(レトリカ)に論じた 言葉による表現 話し方は俳優の話術の問題
20「措辞・語法」―全般的考察
※文法学 *字母・音節、接続語・連結語・名指し言葉(名詞・形容詞・代名詞等)・述べ言葉(動詞)、文(句)
21詩的語法―転用(比喩)語その他について
*通常語、稀語、転用語(比喩)、修飾語、新造語、延長語、短縮語、変形語
22優れた措辞・語法のための注意
*適度に耳慣れぬ語を使うべし、平板も謎も避ける
23叙事詩について
*歴史叙述とは異なる 叙事詩は物語 主題の絞り込みを要する
24叙事詩について―承前
*悲劇と同様の観点 物語の長さと使用韻律が異なる 並行的で複雑な構成も可 ホメロスは作品に顔を出さない 現実にはあり得ない仮構をどう描くか
25詩作品への非難点とそれに対する反駁の仕方
*詩はフィクション、比喩その他を許した文学、政治や学問での正しさなどとは違う
26叙事詩と悲劇との優劣
*通俗性の多少 身ぶり動作 悲劇には音楽があり、凝集度も高い 主題に基づく統一性
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第五巻―哲学用語辞典
1元(はじめ)アルケー
2因(もと)アイティオン
*四原因説:素材因(材料)、形相因(本質・定義)、始動因(原因)、目的因(手段や道具も) 因は複数可、相互に因も可、反対の因も可 個別的な因と包括的・類的な因、偶然付帯的な因と包括的・類的な因、組み合わせた因と単独因 現実に作用の因と可能性・能力の因
3要素 ストイケイオン
*元素、構成要素 別の種に分割できないもの 幾何学の命題要素、論証の要素、一次的な三段論法 最高の類、範疇
4生まれ(生まれつき、自然) ピュシス
*生育、生成、内在するもの、運動の始まり 生育プロセス:接合・融合・付着 生まれつき、本性、素材と形相
5なくてはならぬもの アナンカイオン
*必要不可欠と必然性 必要条件、不可欠、強制強要 善や論証も必然 必然的なものは単純 永遠不動のもの
6一(1つ) ヘン
*偶然付帯的意味と本来的意味 前者は実体と属性 後者は連続体、基体・素材・類として同一、数の始め・単位・点
7ある オン がある・である 羅:ens
*偶然付帯的意味と本来的意味 である:同一、述語、属性 範疇 真偽 可能態・現実態
※範疇:実体・量・質・関係・場所・時間・位置・状態・能動・受動、10項目
※カントの悟性形式:量(単一性・数多性・全体性)、質(実在性・否定性・制限性)、関係(実体・原因性・相互性)、様相(可能性・現存性・必然性)、4項12目
8実体 ウーシア 羅:substantia、essentia
*主語的存在、存在主体(subject) 主語・基体 独立存在(形態、形相)
9同じ、異なる、差異(違う)、似 タウタ ヘテラ ホモイア
*同じ:偶然付帯的意味と本来的意味
10対立するもの、反対のもの、種的に異なるもの、種的に同じもの アンティケイメナ、エナンティア
*類と種と種差
11より先のもの、より後のもの プロテラ、ヒュステラ
12能力、能力がある、無能力、不能 デュナミス
*運動変化の始め、力
13量 ポソン
*分割可能
14質 ポイオン
*実体がもつ種差 運動変化の様態・種差、善悪
15相関的(相対的)なもの プロス・ティ
*数的な相関関係 能動受動関係
16完・全なもの テレイオン
17限(き)り ペラス
*限界、端
18よりどころ カト・ホ
*形相、素材・基体、因、位置 自体的
19配置の様態(模様・様子) ディアテンス
20持つこと(所持・状態) ヘクシス
*現実態 様態より安定持続
21受容性質 パトス
*状態変化、受動、受苦、受難
22欠如 ステレーシス
*完全に有無だけでなく中間値もある
23もつ・たもつ エッケイン
24何々から…ある(に由来する)
*素材・質料 運動の元(原因) 形相の要素
25部分 メロス
26全体 ホロン
27不具の コロボン
*ハゲは不具ではない
28類・種族 ゲノス
*ゲネシス・生成と同系語 同じ形相の連続的生成 血統、父は始動因・形相因、母は素材因 基体としての類
29いつわり プセウドス
*事柄(プラグマ実践。対ロゴス理論)としての偽り 言論としての偽り うそつき
30偶然付帯的なもの シュンベベーコス
*必然的にはそうでない
第十一巻
1哲学難問集
*知恵、始原・原理についての学的認識(※科学・哲学 宗教や慣習ではなく) 難問1知恵は単一の学か多くの学か、いかに可能か(※哲学は独立の学か否か) 2論理学の位置づけは? 3学はすべての実体が対象か 5学の対象は実体・属性の両者か 4対象実体は感覚か、エイドス(イデア)や数か 感覚的事物とエイドス、その中間領域に数(独立存在ではない) 6個物の内在要素・原理か普遍者(類や種)か 7最高の類・原理・始原は存在と一か否か、原理・始原は種か類か
2哲学難問集(続)
*8学の対象は感覚的個物か否か 独立存在・非感覚的実体 10実体・原理は永遠か消滅的か 11実体は不変不動の原理・存在と一か否か 数は実体か(ピュタゴラス・プラトン批判) 14点・線・面は実体か 12普遍の学が探求する実体は個物か独立存在か 8’質料と結合しない形相があるか 9要素・原理は種か数か
3「存在するもの」についての学
*哲学は、存在するものを存在するという限りにおいて、部分的にではなく普遍的に考察するもの 存在の第一の差異性、多と一、類似・不類似 存在と一は同じか 反対関係、欠如態、中間的な欠如態 数学者、感覚的なものをすべて量化(※科学的方法) 第一哲学・観照者のみが存在を存在として取り扱う(難問1への解答)
4「存在するもの」についての学(続)
*数学も自然学も全体は取り扱わない、哲学のみが行う
5「矛盾律」について
*ヘラクレイトスの「ありかつあらぬ」は偽
6プロタゴラス説批判
*主観的相対主義 錯覚 不動の天体 変化する量と変化しない質 われわれの同一性 対話や議論、言論 アナクサゴラスのパラドックス
7学の分類・及び「第一の学」について(難問3への解答)
*諸学では実体はさて置き、定義し属性を探求する 制作の学や実践の学(制作者や行為者が動)ではなく、観照の学としての自然学(自然の内に動の原理) 自然学では質料を離れての定義(形相)はない 観照の学は自然学(自然的実体)、数学(不変不動・非独立存在)、神学(独立存在・不動の実体)
8付帯的(偶有的)なものについて
*付帯的なものを考察する学はない たまたま、偶運 ひとりでに、自己偶発 知性や自然本性が原因
9動(転化)について
*存在:現実態・可能態、実体・量などの範疇 2通りの存在、変化【例】実体:形相と欠如態 性質:白と黒 量:完成と未完成 可能態の現実態への現実活動 矛盾律と基体の可能態としての両義性 ピュタゴラス・プラトンは変化を語れず 動かすものと動かされるもの
10無限について
*音が見えないようなもの 数、空間、時間 実体ではない(実体は定義どおりにある、無限としてなければならない) 無限は部分を持たず分割できず、現実態は分割可でなければならない(全体と部分、無限と有限) 四元素(火、気、水、土) アナクシメネス、アナクシマンドロス、ヘラクレイトス
11「変化」と「動」 について
*変化:付帯的、部分的、それ自体 第一動者、被動者、時間、始まりと終わり 変化の場合分け 実体変化:生成と消滅 動(転化):性質変化、量の増減、場所変化・運動
12「変化」と「動」 について(続)
*性質・量・場所の転化 不動、静止 接触、接続、連続 点と一
第十二巻 ※アリストテレスの初期の思想・立場 イェーガー
1探求されるべきもの・「実体」について
*プラトンは普遍者・類・イデアを実体とする 古人は四元素などを実体とした 感覚的自然的実体:永遠的(天体)、消滅的(人間など個物) 不動の実体:非質料的(プラトンはイデアと数)
2「反対のものの一対」と質料
*変化は反対性への転化 生成と消滅、増大と減少、質的変化、運動 可能態から現実態へ アナクシマンドロスのいっしょくた 質料 非存在:反対性、偽、現実態 ヌース・知性 三原理:定義・ロゴス・形相、欠如態、質料
3質料と形相、その他
*動者によって質料が形相へ変化する 生成:技術、自然本性(生殖など)、偶運、自己偶発 実体:質料・基体、形相(自然本性)、質料と形相(人間などの個物) 人間の形相・魂(ヌース知性)は質料を離れて存在しうるか プラトンのイデア
4すべての原因はいかなる仕方で同一であるのか
*構成要素:形相・欠如態・質料、熱・冷・第一質料→四元素→肉や骨 原因・原理:形相(形相因)、動者(起動因)、欠如態、基体としての質料 ※四原因説以前 動者:同じ形相(人間など)、太陽と黄道、第一動者
5すべての原因はいかなる仕方で同一であるのか(続)
*実体がなければ様態も動もない 実体は魂と身体、知性と欲求と身体 現実態と可能態
6動の永遠性
*永遠的な不動の実体の存在必然性 動、時、円環運動 現実態が可能態より先にある(アナクサゴラス、エンペドクレス、レウキッポス) 恒星天→太陽
7「第一の不動の動者」について
*円環運動、論理、事実、恒星天の運動は永遠 第一の不動の動者 知性的欲求(美)と思惟(最も善美) 現実態の実体 目的因、手段としての善、目的としての善 場所的運動、円環運動、必然、善美、始原・原理 始原・原理に天空と自然全体は依存、最上の生を生きる、純粋な快・完全現実態・観照 思惟=知性、直知、神的、知的観照・最高快・最高善 神 永遠、不動、非感覚の実体 不可分割、無限の大きさ(完全現実態、純粋形相)
8諸天体を動かすものども ※一部、後期思想?
*第一動者は一か多か 1つの動は1つの動者、遊星の運行の複雑さをどう解くか エウドクソスの恒星天以下26の天球の複合運動、カリッポスは33、アリストテレスは55天球説 恒星天・土星〜水星・太陽・月が永遠的な天空、月下の世界が生滅世界 天空は唯一、完全現実態、純粋形相 神話伝承、星々は神々
9「知性そのもの」 について
*思惟の思惟 人間の知性は質料との結合体にある知性
10総体における「善」・及び結論的考察
*善の持ち方 ポリス自由人のような天体と一定秩序のもと生滅を繰り返す月下の世界 補足的批判(主にプラトンのイデア批判) 反対物による生成論、善や悪 生成の原因と原理
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(形而上学)
アリストテレスの「第一哲学」:
「諸存在(万物)の根本的な原因・原理」をめぐる、感覚・非感覚・論理・数学・神学などを横断する幅広い包括的な考察
※アルケー(生成変化/存在)、パルメニデスの存在、運動のパラドックス
第1巻(Α) - 序論(四原因について) (全10章) ※哲学史
第2巻(α) - 心得(全3章) ※後で追加・挿入か
第3巻(Β) - 哲学的問題集(全6章)
第4巻(Γ)ガンマ- 第一義的存在(全8章)
第5巻(Δ)デルタ - 哲学用語辞典(全30章) ※後で追加・挿入か
第6巻(Ε)イプシロン - 存在(全4章)
第7巻(Ζ) ゼータ- 実体(全17章)
第8巻(Η) イータ- 質料(全6章)
第9巻(Θ)シータ - 可能態・現実態(全10章)
第10巻(Ι)イオタ - 「一」について(全10章)
第11巻(Κ) カッパ- 諸論要約(全12章) ※後で追加・挿入か 第3巻の第2-6章、第4巻全、第6巻全の概要。『自然学』第2巻の第5-6章、第3巻の第1-5・7章、第5巻の第1-3章の抄録
第12巻(Λ)ラムダ - 不動の動者(全10章) ※後で追加・挿入か
第13巻(Μ)ミュー - 非感覚的実体(全10章)
第14巻(Ν)ニュー - 数(全6章)
※アリストテレスの神学
動機・モチーフ 原理・論理探求、システム思考の帰結 存在者の位階
神話の神々でもなく人格神でもなく 自然哲学者たち、プラトンを超えて
イデアとエイドス
※「坂下浩司 アリストテレスの形而上学における存在論と神学の関係について.pdf」
*イデアは存在や運動・変化を説明しない イデアは個物に「自体・そのもの」と言い加え、二重化したもの アリストテレスは質料(基体)・可能態が形相・現実態に成っていくと考えた 質料の質料・第一質料・純粋質料〜形相の形相・第一形相・完全現実態=神、位階的秩序・ヒエラルキー、最期にプラトンのイデアが乗っかっている
*ピュタゴラスは数で世界は成り立っていると考えた→プラトンのイデアの原型 イデアは実在の二重化、多重化 イデア実体説の諸矛盾を突く
*古代ギリシア哲学者のアルケー論の総決算 知恵・哲学は最高の知識 自然哲学者たちの質料因の探求、四元素 運動因の追求、パルメニデスの愛とドクサ、アナクサゴラスのヌース、エンペドクレスの愛と憎 レウキッポスとデモクリトスの原子と空虚 ピュタゴラス、数による世界形成 プラトンが初めて形相因と目的因を取り上げる
*質料と形相、可能態と現実態の関係 相対的な位階的・目的論的秩序関係 質料は材料ではなく、欠如態・未完成態・低次の存在形態、形相は形態ではなく、充足態・完成態・高次の存在形態 すべての事物は最低次の存在形態(第一質料)から最高次の存在形態(第一形相)にいたる目的論的位階秩序を形成、頂点に神 秩序を固定する故の諸矛盾 肉体―霊魂―理性、質料―形相―形相の形相 外在的超越か内在的超越か アリストテレスはプラトンの超越的イデアを内在化したが、その存在連鎖の最後に超越者・神を置いた 見えないものから見えるものへ、再び見えないものへの逆転
*肉体―霊魂―理性は内在への方向 神は内在的超越者 絶対無 ※西田幾多郎
※第一質料→第一形相、生→死 ※圧倒、脱力感、酩酊、眩暈・吐き気
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エウデモス倫理学
解説 *エウデモス倫理学はアッソス滞在時代の、エウデモス倫理学はリュケイオン学頭時代の講義ノート 原-倫理学
第一巻
1 幸福は美善快 実践学 良き生=幸福は何に基づき、どう獲得されるのか 生まれつきか思考知識学習か習慣訓練か、霊感や運・偶然か 知恵(観照知)、徳、快楽に基づくか、考えは人それぞれ
2 幸福そのものと、それに不可欠の手段条件とは違う
3 運・偶然や生まれつきでないならば、一般化できる
4 幸福に重要なのは魂・精神か行為・実践か 評判目当ての技術や金儲け目的の生活ではない 徳・知恵・快楽、政治的・哲学的・享楽的生活 アナクサゴラスの考え
5 生きる価値とは 病苦や困苦だけの生、子ども時代の生活、無機質的、動物的快楽、植物的生存 アナクサゴラスの観照生活 アッシリア王の享楽生活 徳ある政治家の生活 老ソクラテスの徳=知、正義の知識習得=正しい人 理論学と技術学(医学や政治学) 徳の知ではなく身に備わること、正義の知ではなく正しい人になること、健康知識ではなく健康であることが大切
6 具体的な事実や証拠をもとに 議論の進め方 本質ととともに理由や原因も明らかに 原因と結論は別々に考える
7 人間にとって幸福が最高善 善には人間の行為の対象になるものとならないもの
8 最高善とは何か 善そのもの善イデア、共通善普遍善、行為の終局目標としての善 イデア批判、空疎で無益 共通善はすべてに内在、行為の対象ではない 行為の終局目標としての善、実践的な知識善(政治、家政、思慮) 例えば健康を目標に役立つ行為、能動因 ただし健康が善だとの証明者はいない
第二巻
1 内在善と外在善 内在善、知恵・徳・快楽、状態・可能性と現実化活動・動き 徳は最高の様態、状態・可能性(過程)→これに応じた働き、活動・現実化(成果) 同じ働きでも徳の優劣の違い 魂の働きも徳の働きと同じ 魂が優れた状態(徳)の時の働きが良き生=終局目標としての善=幸福 幸福は完全な徳に即しての完全な生の活動 幸福は活動、現実態 睡眠中は魂活動の一部(感覚・欲求部分など)休止、栄養・成長の植物的部分は活動 魂の理・ロゴス(命令と随順) 理性は欲求や情念を統御 2つの徳、性格と知性、理の随順と命令 性格の徳 善かれ悪しかれ手段が応じた状態・結果を生む
2 性格(エートス)は習慣(エトス)から 情念、能力(自制)、情念による状態
3 行為は一種の運動、超過・不足・中 中が最善、知識や理に適う 性格の徳は中庸 情念表(※ヨーロッパ情念論の水源) ※中庸は中間か、むしろ止揚
4 知性の徳、物事がどうあるかの真理、その生成の真理 性格の徳は快楽と苦痛に関わり、徳は魂の平静をいう
5 超過や不足の悪徳は安易に流れる方向の情念状態、徳はその反対方向
6 実体は始原・アルケー、運動変化の始原 必然的な始原、神 自然的実体の生成 変化しない始原、数学 人間は行為の始原、徳・悪徳に決定権・責任をもつ
7 自発的・故意か不本意か 欲求(願望、憤激、欲望)、選択、思考 欲求に対しての自発・不本意ではない
8 選択に対しても同様 自発的・不本意再論 自制ある人、ない人双方に自発性あり、外からの強制ではない 内部の理性と欲求同士では、不本意・強制とも言える 現実的には人間本性を超える多大な強制力が働くことがある
9 思考による自発性 承知か無知か
10 選択 判断か欲求か 判断と欲求の両方からなされる 目的に対する手段についての思量的欲求 選択は自発的行為だが、自発的行為すべてが選択ではない 不正行為には不本意も故意・自発もある 選択の目的、手段選択の前に 善ではなく善に見えるものを選択 快楽追求(超過)や苦痛忌避(不足)が善に見える、中庸ではなく
11 目的、何のためにかは徳が決める そのための手段、何をどう行うかは理性が判断する 徳も悪徳も自発的、故に称賛・非難される
第三巻
1 中庸の徳 勇気、無謀・平気と恐怖・臆病 勇気とは理に従うこと、理は美(立派)を選ぶ 擬似的勇気(市民兵の廉恥、傭兵の知識と経験など)
2 節制、放埒と鈍感・無感覚 味覚と触覚(美食や好色)に対しての節制、視覚・聴覚・嗅覚は除く
3 穏和、腹立ちやすさと意気地なし・奴隷根性
4 鷹揚、放漫とけち 財貨、金銭
5 高邁、高慢と卑屈 魂の大きさ 物事を重く見ないで軽く見る
6 豪勢、贅沢・見栄っぱりとみみっちさ
7 徳ではなく中の情念? 義憤、嫉妬と悪意 慎み、恥知らずと内気 親愛 威厳 正直・率直 機知 中と両極端の差異大(両極同士の方が大?)
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年譜
索引