ノート:スタロバンスキー『ルソー 透明と障害』
(目次)
序文
1
『学問芸術論』 *分裂、分断の言説 外見や言葉と内面との齟齬、虚偽・偽善、不正、悪
・「外観がわたしを罰したのだ」 *失われた幸福な幼年時代 ボセーでの櫛の歯事件 被告の立場 真実、無実は伝わらない、人間関係のディスコミュニケーション性 悪意なき誤解でも中傷、有罪 罰、傷跡 ヴェール 透明から障害へ
・分割された時間と透明の神話 *喪失した無垢で透明な始原・真実(幼年時代、子ども時代、自然状態、一般意思)への遡行、アンヴェール 理想論と現実論の相違認識
・歴史的知識と詩的幻想 *似て非なるものの混合
・グラウコス神 *変化、堕落 表面変化のみ(本質保持)か変質か 自分の魂に変化なく外部が変質 失われた自然と隠された自然 「自然人」概念の自分自身への適用 「自然」は夢想により内在的に見出される(モンテーニュ:人は自分の中に普遍人を見出す) 「人間は善」と「人間による堕落」との相克
・人間と神を弁明する弁神論 *悪は神でなく人間が生む(カント=カッシーラー) 人間の本質と、関係(歴史や社会)における罪 個人として善、集団として悪 反進歩、原初価値の復興
2
社会批判 *自然に反する社会への批判 個人と社会、事物・分業・疎外〜カント・ヘーゲル・マルクスの先駆 人類史への道徳批判(歴史学でも人類学でもなく) グロチウス自然法への反対
・本源的な純潔 *労働や省察以前 道徳以前、真偽の区別以前 個人では幼年期の状態 楽園
・労働、省察、自尊心 *楽園の喪失 労働と道具の使用 自然に対する闘争 心理的な変化、自尊心 社会人へ 自我と他者 自己愛から利己心へ 存在と外見、虚偽、疎外 専制的社会での奴隷的平等
・革命による止揚 *エンゲルスの解釈、不平等論から契約論へのつながり 不平等論:平等から暴力の混乱へ、ホッブスの正反対 社会契約論:革命の前提なし、独立考察、ユートピア理論 現実として革命を誘発 JS註:自伝3作で政治論もすべて自身の「詩」作品
・教育による止揚 *カント・カッシーラーの解釈、自然と文化の相克と和解 教育論の介在 教育、法律
3
孤独 *何のため、誰のための歴史・社会批判か? 自分のため(マスターベーション)? 歴史か実存か、ヘーゲルかつキルケゴール 孤独なルソーと「敵」の大連合 異邦人 『学問芸術論』の成功が文学者か批判者かと自己に迫る(ヴォルテールの態度) 作品と生活 奇矯な言行一致 自己顕示欲と自己批判(演技、メタ演技、メタメタ演技、錯綜?) 晦冥とリピドー(サドマゾ)満足 パトスとロゴスの混乱 自己革命の傲慢とイロニー 推理する理性(悟性)ではなく直観的な理性 孤独=透明・自然への回帰 社会関係への攻撃は執着 透明になりたい 殉教者の栄光 死にいく者の最後の言葉(語る権利、真実の言葉) 『社会契約論』での透明な一般意思
・「いまや自己の意見を定めよう」 *「迫害される正義の人」の役割
・しかし統一は自然のものであろうか *ストア派賢者の演技(自己革命での服装) 論文応募へ啓示も教唆も自己不実、自己疎外 気まぐれ、分裂した性格・行動(「皮肉屋」「嘲笑家」?)
・内面の矛盾 *自己革命による本性の封印、無休 自縄自縛
・魔術 *仮面と役割 魔術的自己同一化 本性に反した高徳者という役柄への魔術的変身 外見と中身が違う(『学問芸術論』批判の自己内在化) 誠実という問題
4
ヴェールに被われた像 *『寓意断章』 「百科全書」の哲学者、ソクラテス
・キリスト *孤高で孤独な死 良心
・ガラテアの像 *『ピグマリオン』 自己と作品
・真実暴露の理論 *偶像破壊 外面と内面 ガラテアの自我と人の子の真理 透明な自我?
5
ラ・ヌーヴェル・エロイーズ *外界自然への自己の拡大同一化 障害の消滅、空気の透明化 『新エロイーズ』は明澄性に陶酔の中に見る目覚めた夢
・音楽と透明 *メロディー
・哀切の感情 *回想 失われた時代
・祭り *儀式でない即興の祭り 『ダランベールへの手紙』 劇場と野外 神殿・神像
祭りのような、同時に演者・観客の演劇 同時に主権者・国民と同構造
・平等 *クララン共同体(エリゼ)での平等感 祭りの中の、感情的な平等 『社会契約論』は理念 立法者・ヴォルマール・人々の幸福の演出神としての幸福と歓喜
・経済 *自給自足の独立経済 金銭、中間的な交換はさけ、自ら直接的に生産・消費する 物々交換 楽譜写し 自然、ただし人為により完成された自然
・神格化 *世界を主宰し自己充足する者が神なら、ヴォルマール(啓蒙主義者ルソー)は神
・ジュリーの死 *自然と文化の綜合(カント)か フロイト解釈要? 幸福の成功か失敗か、挫折への誘惑と幸福の渇望との拮抗、罰の欲求と弁明の意志との共存 ジュリーの悲しみのヴェール、夫の不信心と偽善 結合と離別、意識の統一と離別、神との統一と離別 内面の直接的な神と隠れた神 自然、感覚的な被造物は神との障害・ヴェール(キリスト・福音書は不要) 死に旅立ったジュリー(神との直接交流)を覆うヴェール
6
誤解 *不在の真実でありたい 書くことと身を隠すこと 作品は思想ではなく人間を語るもの
・回帰 *誤解・決裂・離別と回帰(和解・帰還)、悲劇と感動 自己の非を弁明し、赦しを嘆願し、罰と愛撫を求めるサディズム・マゾヒズム 人とのヴェールと誤解 愛されていることの確信がほしい ヒュームには不発 「敵」が友人に回帰するのを願っていた 『エミール』もルソーの弁証法(誤解・離別・償いの抱擁 )世界を描く
・「ただ一言もいうことができずに」 *ノンバーバル
・徴候(シーニュ)の力 *ジュリーの願い:肉体・感覚を通さない直接的な交流(神と同じ。天使。魂と魂) 人間の限界、言語の必要 二重の表象・記号 『夢想』は読者が自分だから幸福 作品であれ手紙であれ読者は絶えず自分を誤解する、だから真実の弁明の必要あり、これの繰り返し、永久運動、ウロボロス 記号のない直接的な交流への志向(記譜法、エミールへの経験教育) 『不平等論』言語なき世界への回帰が動機(歴史論ではない。個人的動機) ※そのルソーから私たちはどれだけ近代を引き出しているか? 言語の端緒は感情、文章表現に長けたルソーは迫害者たちに無防備 矛盾的両価的表現・内容こそルソー 口語ではなく文語で、かつ言語以前へ 言葉ではなく徴候 葡萄の収穫祭、イギリス風の午前 秘奥のコミュニケーション(徴候と沈黙) バジール夫人との無言の恋 徴候の解釈は仲介であり間接的 ルソーは事物の意味は自分にはなく事物に属すると考える 否定的、悪意・敵意の徴候 透明か不透明か ジュネーブ城門吊橋、ズリエッタの片輪乳首、敵の手先ヒューム 自分は正気だという自己分析は他は真実との証明か 陰謀の徴候は確実、ただし原因は永久に不明 善意も悪意も即座に変転 植物標本の偶発的徴候による記憶の喚起 ルソーの行動の結果(例えば投石)は転回し、自身に向けた神の運命の徴候となる
・愛の交流 *性的肉感より夢想 受け入れられること(母の喪失以来拒絶されてきた生)への欲求 世界へ身を投じる情熱と、放蕩息子の過失を受け入れ、温情・罰・赦しを懇願する情熱
・エグジビシォニスム(自己顕示癖、露出症) *フロイト心理学? 『告白』での奇妙な不連続性 リボン事件、露出事件 マゾヒズム? 受け身で魔術による奇跡の出現を待つ幼児 倒錯 性の陶酔 『村の占者』『新エロイーズ』でのマゾヒズムからサディズムへ
・家庭教師 *三悪関係でのルソーの役割は教師、幸福・叡智の達人、誘惑者 省察と感覚の和解 官能的な喜びと苦痛、感動 倒錯的魔術的交換・変態、孤独な享受 ディオニソス、ソクラテスの誘惑 テレーズ:意識しない肉体、「埋め合わせ」
7
自伝の問題 *自伝の多様性 自己の明晰を他者に伝える手段、言語 錯乱状態後の弁明 真偽と善悪との意志的混同 平民の内面生活の普遍性 異邦人の身分だからこそ語れる権利
・いかにして自分を描きうるのか *肖像画と自画像 自己を語るルソーの独断的特権
・すべてを語ること *すべてを語ることで罪も矛盾もない 判断は読者に委ねる、自分は無罪、誤解は読者のもの すべての始まりや細部は語れない、無実も幸福も語れない 言語、『告白』は原初と未来の幸福の中間にある 発生論的な方法 主体・感動・言語の同一性、一体性(シュルレアリスム) 感情のつながりによる誤りのない記憶、回想 回想し追体験する自己の魂を物語る自伝、二重の自己 省察が自己を疎外する 道具ではない言語のあり方、近代文学(ロマン主義)の誕生
8
病 *パラノイア、ナルシシズム、自意識過剰 追放排除された孤独者かつ唯一の真善の所有者 迫害妄想の発展?(諸著作への用語転用、わな・陰謀・かれら・人々)
・省察の有罪性 *『不平等論』で道具を生む省察は自然からの離別で堕落 『エミール』で受け入れ、理性、道徳の基礎 『新エロイーズ』で省察は世界をヴェールに包むが透明性は確保 『対話』で省察は決定的に悪に、比較する利己心の根源 省察を批判する省察、自己撞着をさらす 沈黙するJJ、批判するルソー 省察対感覚・感情、欺瞞、自己欺瞞、受動者と能動者との無限循環 デウス・エクス・マキナ 省察と感覚とは別、『エミール』の教師と弟子、神?と自由を奪われた者、『対話』の迫害者とJJの構図そのまま 自意識と意識、対自と即自?
・障害 *『不平等論』等で、自然の障害との対決で道具と省察が生まれた 『対話』で弾道学的精神力学、障害を突破するか停止するか 神のごとく魔術的に浸透するか排除され零の存在となるか 想像の世界への飛躍、自我空間 境界も障害もない恍惚の世界 陰謀・迫害による障害 自己解釈の可能性の排除 わな、謎、迷路
・沈黙 *真実を直接暴露した『告白』朗読会後の沈黙 沈黙は障害そのもの 敵の完全包囲網 後世での復権に託しそれまで原稿を保管、沈黙 神、国王、審判者への希望も水泡に帰す、沈黙
・無為 *行動は無益 独立、自給自足、ロビンソン・クルーソーの生活 行動の思わぬ結果への懸念 子どもの出生 拘束されない衝動に任せた大胆で勇気ある行動力 結果として栄光と迫害 散歩は逃避行、自然回帰、瞑想 歩行オートマティズム(自動作用、無意識動作)と夢想
・植物的友情 *自己救済としての植物採集 強迫観念への気晴らし治療、暇つぶし 採集と写譜、忘我、精神を透明にするもの、空白を埋めるもの 植物は幸福の記憶の徴候
9
終身の禁錮 *迫害は欲求どおり? 禁錮は幸福? 両価的 迫害と禁錮
・実現された志向 *パラノイア 動機の多元性 偏狭と放棄の志向 捨てることで全能へ逆転 自由への意志 迫害が内面の幸福を高める 迫害の激しさがルソーの無実を証明する 自己の責任を黙視 ルソーの行動はすべて外部による強制、正確は常に善・無罪 自縄自縛、自己の二重性 自身の誕生による母の死、あるいは捨て子が罪か、不明 外部と自由の危険 ルソーが恐れるもの、意図を裏切る帰結、誤解
・二つの法廷 *ディドロ書簡、証人の必要 神への控訴 世間とは錯覚と誤解の危険 世間と神の法廷、有罪と無罪の評決
10
水晶の透明 *死んだジュリーと同じ透明さ 透明人間の夢想 水晶、水、自然 忘我と充溢、一体化 内奥の、あるいは表面にたゆたう内部感覚
・審判 *ヘーゲルの「美しい魂」(ノヴァーリス、ルソー)批判(自同律の不毛) ヘルダーリンのディオニソスから樹木(自然との合一)へ 晩年テキストへの2つの評価 孤独なルソーを迫害する敵たちがいてこそもたらされる幸福 有罪の転嫁であり甘美な陶酔は友情など自己喪失の欺瞞的代償 人間の世界が忘れられない孤高の人 分割できない人格 神秘的ロマン主義者、社会的不正の告発者
・「こうしてわたしは地上でただひとりになってしまった」 *なおも語られる『夢想』の偏執的で執拗な言葉 敵の暗黒と自己の透明 錯乱の中の透明
註
あとがき
ノート:ローティ『連帯と自由の哲学―二元論の幻想を超えて』
冨田恭彦訳 岩波書店 岩波モダンクラシックス 1999/11/5
(目次)
序文
*真理の前提は自由な議論、自由な議論は合意へ収斂せず新たな語彙や議論を増殖させる デューイ:成長こそ道徳、芸術こそ最も道徳的 クーン、ロールズ、デイヴィドソン
1 連帯としての科学
*科学と人文学 2つの真理 人文学は擬似科学か価値など別基準かを選択 高級と低級、堅い事実と柔らかい価値 科学者は世俗化した聖職者か 2つの合理性、弱いと強い クーンとプラグマティズム 新ぼかし主義 間主観的合意 相対主義か 確かに自文化中心主義的見解だ ※限界をもった仮説的真理論 そもそも絶対的真理などあるかどうかもしれないしどちらでもよい ※まさにプラグ7マティズム 啓蒙思想の政治社会思想は科学同様に自然=本性に基づいた普遍的知識をめざす しかし自文化を超えられるのか ※彼岸か此岸か、革命か改善か、永遠の真理か現実の最適解か 文化の違い クワイン ※理性同様、和解できない文化があると考えるかどうか われわれは進歩、前進しているか 後付でなんとでも言える 科学は芸術運動と同様に錯綜している 固定した真理観はわれわれが真理に対して責任があることを放棄すること ※客観的真理観は何かに誰かに神に頼ること、無神論こそ責任ある世界観 ※プラグマティズムは行動するための哲学、環境の中で改善していくための哲学、観念論は動かず内省し観想する哲学、自他の区別をつけた哲学 啓蒙主義のレトリック、近代科学に伝統哲学の用語を使ったミス(古代ギリシア的本質主義) デューイ ぼかし、あいまいさに耐えること
2 テクストとかたまり
*文芸批評と哲学 精神科学と自然科学 真と実在 事実の堅さ:約束・ルール・予言・仮説 ハーシュ:テキストの意味と意義の発見の区別 全体論的戦略、デューイ・ウィトゲンシュタイン・デイヴィドソン・クーン流のプラグマティズム テキストとかたまり(物質)、人為的人工的なものと自然的なもの、創造・発明されるものと発見されるものの区別、解釈と解明 テキストとかたまりの断絶、作者の意図、人為物にはあって自然にはないもの 啓蒙主義、実在論哲学の失敗は自然に神の代理をさせようとすること 実体・自然は主体・人間の投影、物理科学は精神科学を模倣する テキストの意味と意義、解釈と批評(メタ解釈) 知識は心と対象との関係ではない、対象について語るとは別のテキストや自然との関係について語ることでありこれしかできない メタレヴェルに拘泥する意味はない、唯一の実体を追う羽目になるだけ 分析哲学と大陸哲学、反解釈学と反実証主義
※すべては仮説的、実はわれわれは一般理論ではなく、特殊理論しか持てていないのかもしれない 伝統や歴史を探究する者はそうすることで実は伝統や歴史を自ら作り出している、自分自身の影を追っているにすぎない
3 方法を持たないプラグマティズム
*プラグマティズムの2つの側面 対一般向け、科学的・脱宗教・迷信 対哲学者向け、全体論・反分析的 中庸、日和見主義の哲学 フック、科学主義と自然主義 ※言葉に呑まれないこと(その言葉遣い自体に価値が含まれている、仮説、ぼかし) 同じ神を語るデューイとティリッヒ(ハイデガーの継承者) フックとハイデガー デューイのハイデガー解釈 現象学は非実体・非本質学 ハイデガーの存在、存在的ではなく存在論的、人間と自然との結びつきの感覚 後期は沈黙へ、欠陥は非ヒューマニズム、プラトンや技術を全否定 ハイデガー・ティリッヒ・デューイの存在とは自然主義ではなく、ある芸術、ある宗教 プラグマティズムの2側面 伝統的理性哲学に対する科学主義的な暴露(フックら) 自然科学に対する全体論的な暴露(ジェイムズら) カルナップ実証主義とヘーゲル主義 真善美は別物ではない、連続的 アメリカ伝統の反イデオロギー的自由主義 ドイツ人の深さ、フランス人の繊細さ 本当の哲学という陥穽
4 哲学史の記述法―4つのジャンル
一 合理的再構成と歴史的再構成
*学説を現代において論じるか、過去において論じるか 科学史では過去の誤りを誤りとするが、哲学史では見解の相違だとし誤りとしない 一方で、同時代人として聞くことも必要(現代の知識や文脈で語れない) また、現代の再教育を経た哲学者との対話 合理的再構成に先立ち歴史的再構成が必須ではない ∵歴史は発掘ではなく再配置だから
※全体論:メタ的、自己言及的、循環論的見方 プロセス的、すでにわれわれは問題の中にある、無関係ではない
二 標準リストを形成するものとしての精神史
*歴史的再構成、合理的再構成、精神史的再解釈(哲学や哲学史についての再解釈、哲学とは何かという尊称的問い、つまりは文学) 哲学の尊称的用法、標準リスト、自己正当化 ヘーゲル、ニーチェ、ハイデガーの哲学史 精神史家が作る物語 ブルーメンベルク、ライヒェンバッハ
※科学も哲学もつまるところ、文学である
三 学説史
*4つ目の哲学史 寄せ集めの通史、最も退屈 自然史 バラバラの哲学(多様な問い、同じテーマではない、問いは変わる、基体−実体−主体等)、哲学者たち(自身で認めたわけではない、神学者等) 同じ問いに答える必要はない ※問い方こそ問題、時代の問い方 哲学史と知の歴史 共同体の前提常識としての知識、その内部での意見 学説史の無効性
四 知の歴史
*時代思想史、社会思想史 哲学ではない分野や事柄、哲学者と呼ばれない人々 哲学史も勝者の歴史 3つの歴史弁証法 ヘーゲルとフーコー フーコーの精神史の試み ※自己正当化や文脈を放棄すれば、のっぺらぼうのむじな、ラッキョのヨーロッパでは?
5 哲学に対する民主主義の優先
*ジェファーソン 政治的統合と宗教の自由(狂信的でない限り) マルクス国家は宗教放棄を要求 公民としての良心(人権・良識・理性)とその制限、宗教的自由と公民としての制限 唯一の正解、啓蒙主義の理性による自然淘汰 二極分裂:絶対主義と相対主義・プラグマティズム、ロナルド・ドゥウォーキンとデューイやロールズ 第三の立場:共同体主義、ベラー、マッキンタイヤー、サンデル、チャールズ・テイラー、自由主義・啓蒙主義の死 ∴プラグマティズムも啓蒙主義の1つ、自由主義は非道徳的、後天的歴史的な基礎づけの必要 プラグマティズムは哲学のための哲学ではなく、政治が先行しそのための哲学を作る 啓蒙主義的理念的個人主義より人間の相互依存性に依拠した歴史的共同体主義が民主主義に適しているのか、われわれの民主主義が1つの歴史的特殊であるならこれも正しい ロールズ:現在の民主主義政治は歴史的宗教的政治的経済的社会的な多様な諸条件から成り、一般的な道徳観念が正義観念の基礎とはならない、各員で相矛盾し共約不可能 かつての宗教同様、多くを寛容領域として取り扱うべき 重なり合う合意はやがて淘汰される 歴史主義的、反普遍主義的態度 民主主義に哲学(啓蒙主義、新カント派)は必要か不必要か サンデルのロールズ批判 自文化中心主義と相対主義への恐れ 好みでも理性・本性でもなく ニーチェやロヨラを狂気と見なせる教育や歴史的状況 徹底したカント的二元論の排除(ヘーゲルやデューイは克服者) 形而上学批判:デューイ、ハイデガー、デイヴィドソン、デリダ 歴史的自我 人間は歴史的な網目でできたラッキョか中心のある梅干しか ただしニーチェやロヨラの排斥はあくまで政治的なもの(公私、自他は別) 民主主義を哲学に優先させること、問いの順序、恣意性ではなく誠実さ ※すでに決められている 社会制度は実験である
一 慎みは金
*デイヴィドソンの二元論の拒絶 ジェイムズ デューイ
二 パースの不徹底な処置
*探究の終着点 観念論的真理論と物理主義的真理論
*世俗的な立脚点 非還元的自然主義 真理論はいらない 解釈学的循環、翻訳の基盤ではなく結果 第三の見方、主客統合の神の視点を捨てること
四 非還元的物理主義者としてのデイヴィドソン
*パトナム ※二極を揺れ動く思考、中間・中庸・第三項を容れない、中間物はみそくそにして両極へ散らす 自然主義的道具主義
五 デイヴィドソンとダメット
*デカルト的な心 形而上学的思考の遺物 図式・内容の二元論 ※内面も外部もない、連続的な状況があるのみ ウィトゲンシュタイン、意味と呼ばれる存在者に用心せよ(古い形而上学的衝動を克服せよ) これまでの観念論vs物理主義の不毛の形而上学的な争い(実在論vs反実在論)→20世紀初にプラグマティスト(脱形而上学志向)vs反プラグマティストのメタ哲学的な争い デューイの重要性はヘーゲルとダーウィンを1つにしたこと ハイデガーvsデリダ
-------------------------------------------------
デューイから。
事実とは何か
関東大震災の朝鮮人が井戸に毒を入れたとのうわさ その仮説を正しいと見なすかどうか 科学もニュースも同じ、真理・事実は1つで発見されるべきものとしてあるという信念が誤謬 単純多数決ではないが客観的多数がより正しいと認める間主観的最適仮説が現状での「事実」 練習問題:日本海か東海か 慰安婦問題を慰安婦像に表象させるなどは感情的訴求は有力な論証テクニックの1つ
世界には問題しかない
真実も全体もない 起源も運命もなく、ただ渦中の問題しかない 真実や全体などについておしゃべりはいくらでも可能だが、たいして意味はない 現実は突然問題として現れ、これをどう解決するかがすべて
先験的ア・プリオリの論理や道徳を保障するのは神(カントを想像せよ)
後天的経験的歴史的とは神の後ろ盾をはずすこと
ヨーロッパ思想の秘密
絶対思想 絶対神 客観的時間空間 神の絶対軸を認識できる理性、神と人間をつなぐもの 先験的超越論的
ノート:プラトン『国家―正義について』藤沢令夫訳
解説 藤沢令夫
1『国家』篇とその執筆年代
*BC375年頃、プラトン50歳代、アカデメイア設立後10年
2 登場人物について
*ソクラテス ケパロス:シラクサ生まれ、ペイライエウスの富裕居留民 ポレマルコス:ケパロス長男、ペロポネソス戦後の30人政権下で死刑 トラシュマコス:カルケドン出身の弁論術家 クレイトポン:復古主義の政治家 グラウコン:プラトン兄 アデイマントス:プラトンの長兄 リュシアス:ケパロスの子、弁論術家
3 対話が設定されている年代 *BC430-421? ペロポネソス戦争前期
4 全篇のあらすじと主要区分 *正義とは何か 個人正義の拡大としての国家 統治者の教育、理想国家と哲人政治、哲学教育 不正と不完全国家、正義と幸福 詩歌・演劇
5 この対話篇の主題は何か―表題と副題について *「ポリーテイアー」ポリス国家論、ただし正義論展開の中での
6 哲学的内容―とくに国家論とイデア論・魂論について *総合知・学としての哲学 ソクラテス的問い:徳の定義・知識と善・幸福、善・幸福と魂と徳としての知(学) プラトン的問い:ソクラテスが死なない国家政治論、魂と国家の相似性 イデア論と魂不死の思想、永遠を見つめるリアリスト
7 著作としての意味と必然性ープラトンにとって『国家』篇とは何であったか *プラトンの国家政治思考とソクラテス的哲学知との結合、哲学の内実イデア論の成熟を俟って
※プラトン哲学=イデア論 ソクラテス哲学=人間的価値の探究姿勢、中身はない、あるいは探究姿勢そのものが哲学(教育) ∴プラトンのイデア論が初哲学=理屈づけ
※哲学・学・科学 宗教・神話・伝統・習慣等に基づかない新しい原理・考え方・生き方の探求 アルケー探究、自然科学的アプローチ その後、ソクラテスに始まる人間中心的アプローチ(概念探究) 後期プラトン・新プラトニズム、アリストテレスやストア派(ヘレニズム・ローマ時代)では天体的プローチに復帰、以降ルネサンスまで
※ガスリー ソフィストは哲学者ではなく、正統派の引き立て役か
-------------------------------------------------
(『国家』全篇の構成)
1「前奏曲」―〈正義〉についての幾つかの見解の検討。(第1巻)
導入部。(1章/327A-328B)
1 ケパロスとの老年についての対話。〈正義〉とは何かという問題へ。(2-5章/328B-331D)
2 ポレマルコスとの対話―〈正義〉とはそれぞれの相手に本来ふさわしいものを返し与えることであるという、詩人シモニデスの見解の検討。(6-9章/331E-336A) *正義とは誰に対しても正しいこと 徳は知識や技術とは異なる性格を持つ
3 トラシュマコスとの対話。(10-24章/336B-354C)
1〈正義〉とは強者(支配階級)の利益になることであるという、トラシュマコスの見解の検討。(12-19章/338A-348B) *不正が利益をもたらす
2〈不正〉は〈正義〉よりも有利(得になること)であるか。(20-24章/348B-354C) *正しい人は幸福であり、得である ただし、正義とは何かはわからない
※哲学・真の学問(科学)と政治・社会との乖離・対立 不正に加担する世間知、ソフィスト
2〈正義〉の定義―国家と個人における。(第2-4巻)
1 グラウコンとアデイマントスによる問題の根本的な再提起。(第2巻1-9章/357A-367E)
*人々は見せかけに正義を、内実は不正を信奉し利益を得ているのではないか
2〈国家〉に関する考察―「最も必要なものだけの国家」と「贅沢国家」。国の守護者のもつべき自然的素質。(第2巻10-16章/367E-376E) *職業、専門家
3 国の守護者の(情操)教育(パイデイアー)。(第2巻17章-第3巻18章/376E-412B)
1 音楽・文芸。(第2巻17章-第3巻12章/376E-403C)
(a)何を語るべきか―文学(詩)における話の内容についての規範。(第2巻17章-第3巻5章/376E-392C) *詩人たちが語る神々の不道徳性(伝統は非道徳的)、冒瀆 神々は善であり不変(変身しない)
(b) いかに語るべきか―単純な叙述(報告形式)と〈真似〉による叙述(劇形式)。(第3巻6-9章/392C-398B) *ミメシス(まね、演技)論 まねはしだいに性格となる、習慣は本性と化す
(c) 歌、曲調、リズム。(第3巻10-11章/398C-401A) *音楽と本性、品性や節度との関係
(d) 音楽・文芸による教育の目的。(第3巻12章/401B-403C) *教育(パイデイアー) 美少年との恋について
2 体育(および医術) のあり方。(第3巻13-18章/403C-412B) *アスクレピオスとヘロディコス(病気のお守り) 魂・品性の範型 徳と悪徳(まず善がなければならない) 心身の教育 学芸と体育のバランス
4 国の守護者についての諸条件。(第3巻19章-第4巻5章/412B-427C)
1 守護者の選抜。建国の神話。(第3巻19-21章/412B-415D) *能力と試練による選抜 大地から生まれる支配者たちの物語(市民は兄弟、平等)
2 守護者の生活条件、私有財産の禁止。(第3巻22章-第4巻1章/415D-421C)
3 守護者の任務。(第4巻2-5章/421C-427C) *最強の国、富と貧乏 国家の適切な大きさ 教育と養育、秩序と法
5 国家の〈知恵〉〈勇気〉〈節制〉そして〈正義〉の定義。(第4巻6-10章/27D-434C) *正義とは自分の適職だけに専心すること、逸脱は不正 職人・商人(生産者)、戦士(補助者)、守護者の3種族
6 魂の機能の三区分。(第4巻11-15章/434C-441C) *矛盾律、運動と静止 ※欲望論がわかりにくい 理知・欲望・気概の各部分
7 個人の〈知恵〉〈勇気〉〈節制〉そして〈正義〉の定義。国家と個人の悪徳の問題へ。
(第4巻16-19章/441C-445E) *国家と相似形の個人 正義とは分を守ること
3理想国家のあり方と条件、とくに哲学の役割について。(第5-7巻)
A 三つのパラドクス(「大浪」)。
導入部。(第5巻1-2章/449A-451C) *議論の前進へのためらい
1 第一の「大浪」―男女両性における同一の職務と同一の教育。(第5巻3-6章/451C-457B)
2 第二の「大浪」―妻女と子供の共有。戦争に関すること。(第5巻7-16章/457B-471C) *善悪と苦楽の共有
3 第三の「大浪」―哲学者が国家を統治すべきこと。(第5巻17-18章/471C-474C) *理想はまだ実現できていない、これを追求すること 嘲笑と軽蔑の大浪「哲人統治」
B〈哲学者〉の定義と〈哲学〉のための弁明。
1〈哲学者〉とは?―イデア論にもとづくその規定。(第5巻19-22章/474C-480A) *ではその「哲学」とは何か 真実の知識と思惑・ドクサ
2 哲学者は国家の統治に適した自然的素質を有すること。(第6巻1-2章/484A-487A)
3 哲学無用論の由来と、現社会における哲学的資質の堕落の必然性、にせ哲学者のこと。(第6巻3-10章/487B-497A) *「星を見つめる男」=浮世離れ 大衆自身がソフィスト、またソフィストはエセ知者
4 しかし哲人統治者の実現は不可能ではないこと。(第6巻11-14章/497A-502C)
C 哲人統治者のための知的教育。
1「学ぶべき最大のもの」(認識の最高目標)―〈善〉。(第6巻15-17章/502C-506B)
2〈善〉のイデア=太陽の比喩。(第6巻18-19章/506B-509B) *善とは何か 視力にとっての光、知力にとっての必須媒介・導き
3 線分の比喩。(第6巻20-21章/509C-511E) *像・イメージ、物体、概念・定義、実体・イデア
4 洞窟の比喩。(第7巻1-5章/514A-521B) *上へ登っていった男の運命 生得観念、内在説 政治家教育
5「魂の向け変え」と「真実在への上昇」のための教育のプログラム。(第7巻6-18章/521C-541B)
1「前奏曲」(補助的準備的学科目)としての数学的諸学科。(第7巻6-12章/521C-531C)
(a) 数と計算。学ばれるべき学科目は知性の活動を呼び起す性格のものでなければならぬことの確認。(第7巻6-8章/521C-526C)
(b) 幾何学。(第7巻9章/526C-527C)
(c) 立体幾何学。(第7巻10章/528A-D)
(d) 天文学。(第7巻10-11章/527D-528A, 528E-530C)
(e) 音楽理論(音階論)。(第7巻12章/530C-531C)
2「本曲」としての哲学的問答法(ディアレクティケー)。(第7巻13-14章/531C-535A)
3 以上の諸学科をどのような人間に、それぞれいつ、いかにして課するか―学習・研究の年齢と具体的プログラム。(第7巻15-18章/535A-541B)
4不完全国家とそれに対応する人間の諸形態。正しい生と不正な生の比較。(第8-9巻)
導入部―当初の問題への復帰。考察の方法と手順。(第8巻1-2章/543A-545C)
1 理想国家(優秀者支配制)から名誉支配制への変動。名誉支配制国家と名誉支配制的人間。(第8巻3-5章/545C-550C) *有徳市民支配
2 寡頭制国家と寡頭制的人間。(第8巻6-9章/550C-555B) *有産市民支配
3 民主制国家と民主制的人間。(第8巻10-13章/555B-562A) *無産市民支配 自由放漫、自由平等 デマゴギー(屁理屈による自己主張・ミスリード)
4 僭主独裁制国家と僭主独裁制的人間。(第8巻14章-第9巻3章/562A-576B) *自由無差別の果て、アナーキー 目下やペットの意思に従う主人
5 幸福という観点から見た正しい生と不正な生の比較。(第9巻4-13章/576B-592B)
1 僭主(独裁者) の生は最も不幸であり、優秀者支配制的人間(または哲学者) の生は最も幸福であること。(第9巻4-11章/576B-588A)
(a) 国制のあり方と個人のあり方との対応にもとづく証明。(第9巻4-6章/576B-580C)
(b) 魂の機能の三区分にもとづく証明。(第9巻7-8章/580C-583A) *知・勝利・利得を愛する人、学ぶ・名誉・利得の快楽
(c) 真実の快楽と虚偽の快楽の別にもとづく証明。(第9巻9-11章/583B-588A) *家畜のように生きる人々
2〈不正〉が利益になる(得になる)という説は完全に誤りであり、〈正義〉こそが人間にとって真に利益となること。(第9巻12-13章/588B-592B) *3種の生物からできた人間
5詩(創作) への告発。〈正義〉の報酬。(第10巻)
A 詩歌・演劇の本質に関する考察。(1-8章/595A-608B) *哲学の確立のために、詩(=伝統・慣習、「旧」知・非理)との対決
1〈真似〉(描写)(ミーメーシス)としての詩作について―それが作り出すものは真実(イデア)から遠ざかること第三番目の序列にあり、詩人(作家)は自分が真似て描く物事について知識をもたないこと。(1-4章/595A-602B) *詩は具体的個別的で、普遍イデアに対して限定的表現(※モノでの思考。概念・観念では?)
2 詩(創作) の感情的効果について―〈真似〉(描写)としての詩(創作)は魂の劣った部分に働きかけるものであり、人間の性格に有害な影響を与えるものであること。(5-8章/602C-608B) *悪い感情を育んではならない 詩の誘惑
B〈正義〉の報酬。(9-16章/608C-621D)
1 魂の不死と、魂の本来の姿。(9-11章/608C-612A) *死に至る病
2 現世における〈正義〉の報酬。(12章/612A-613E)
3 死後における〈正義〉の報酬、エルの物語―大団円。(13-16章/614A-621D)
訳者注
補注
解説 藤沢令夫
-------------------------------------------------
ソクラテス的問答
定義のあいまいさ ふだん使っていることばのゆるさ、矛盾の分割性、部分否定
全称と部分の入れ替えによる自己矛盾 不完全性、蓋然性
徳は知識や技術とは異なる性質を持つ 目的と手段?
人間的立派さとは?
ソクラテスの徳 概念 ∵人間は人間的社会に生きるのだから。悪法も法
姿勢と知恵
ソクラテスとプラトン 生き方そのものと哲学 動く姿と立ち止まる姿 著作を残さない者と残す者・ミネルヴァの梟 イエス、禅者
人材作り 無用の用、有用の用 絶対主義、相対主義
政治家教育の書
古代ギリシア民主制の、現代的リアルさ
ノート:藤沢令夫『プラトンの哲学』 (岩波新書 赤537)
(目次)
1序章「海神グラウンスのように」―本来の姿の再生を!
プラトンの思想的闘い(ソクラテス、対伝統、哲学) さまざまな解釈と評価 科学主義の支配(自然=物質原理主義) ラッセルの攻撃 ハイデガーとその流派のプラトン論(ローティ、デリダ) 根本的誤解①「物質的自然観」(ヒューレー=マテリアル、プシューケー) 根本的誤解②「形相」と「質料」(アリストテレスの造語) 通俗プラトニズムの淵源(アリストテレス) 本来の姿の再生を
2「眩暈」―生の選び
1ソクラテスの刑死まで
若きプラトン ソクラテスとの出会い 三十人政権への「嫌気」 ソクラテス刑死の衝撃
2 二つの方向を「一本の大道」に!
政治と哲学のはざまで 正しく政治する者の政治 遍歴の終わり
3「魂をもつ生きた言葉」―プラトン哲学の基層としてのソクラテス
1ソクラテスから受けとめたもの
ソクラテス的基層 毒蛇の一咬み ソクラテスの吟味(人間なみ以上の知と人間なみの知) 「知」への構え(求知への姿勢=哲学、知行一致) 使い分けしない「知」(アリストテレスとの違い、トータルな知・本来知・実践知・ソクラテスの知) ほんとうの知者 「徳」概念の根本的転換(伝統的価値観の否定、金銭や名誉が徳ではない、魂の幸福) よく生きること(ただ生きるのではなく「よく」生きること、死を恐れ生き延びるのではなく ※ソクラテスの本気、恐ろしさ。「弁明」を読め!)
2 なぜ「対話篇」なのか
プラトンの不在 中・後期対話篇の特徴(プラトン思想:イデア論、魂論(不死、三分説)、哲人統治論) 対話篇形式への固執 基層としてのソクラテス(ソクラテスとともに考える) 「無知の知」の堅持(問答法) ロゴスのディアロゴス性(対話性) 創作伝統の中の対話篇(叙事詩→抒情詩→悲劇→対話篇、ロゴスの自覚化、ソクラテス対ニーチェ)
4「美しき邁進」―イデア論とプシューケー論
1 「プラトン哲学」への助走
(a) 対決宣言
「哲学」の新たな内実に向けて 「自然の正義」(『ゴルギアス』のカリクレス=ニーチェの自然、反世俗反道徳的、弱肉強食・優勝劣敗) 新たな気構え
(b) イデア論への助走
世俗の道徳への批判(ノモス対ピュシスの図式を超えて) 「何であるか」という問い 答えが却下されることの意味(アリストテレス的定義ではない、何でないかが追求されている ※価値の反相対的発生構造) 四つの含意事項 『メノン』の位置(想起説、知識と思わく)
2 陣形の確立
(a) イデア論の初表明ー「まさに〈美〉であるところのもの」(『饗宴』)
〈美〉のイデア(イデア論は奥義、絶対の美) 〈美〉の知が目ざすべきもの 『饗宴』から『パイドン』へ
イデア論の導入のされ方(既定) イデアの一般化(徳や価値から、数、幾何学、人工物、自然物) 感覚では捉えられない(例:正方形) イデアを想起する 感覚的判別が成立する根拠(知覚判別の規範、普遍と個、類似・相似かつ不同一) 認識を導く規範(なぜ「より美しい」と認識できるのか、帰納ではなく先験的原理 ※パラドキシカル、自己言及的)
(c) 魂と身体、二つの生き方(『パイドン』(2))
魂の清浄化(魂対身体、プシューケー対ソーマ[物] ※身体不浄説、霊肉二元論へ。認識は感覚を排除し魂から、デカルトへ) 魂不死の論証(プラトンの強い思い、ソクラテスの魂への) 魂の二つのあり方(霊肉二元論ではない! 感覚や情念も魂の一部、身体そのものは物質、身体を通じての諸感覚 ※身体は精神に、神経パルスが心に変異するのか。因果があっても別物。二重性、並行性 だからこそ死後も魂は存続する 欲望や快楽は優れて両義的で知もその対象) 知の愛求者と身体の愛求者
(d) 〈物・ソーマ〉的自然観との闘いへ向けてー〈善〉原因とイデア原因(『パイドン』(3))
身体の愛求者の世界観(自然=物質原理主義哲学との決別、第二の航法・航海) アナクサゴラスへの失望(モノ・身体と心は違う) 原因としての〈善〉(物質原理主義=科学主義はトートロジー、実は何も語っていない説明になっていない ※例:DNAと生命) イデア原因論の提示(なぜ美しいのか、美の分有) イデア原因論はトートロジーか(※なぜ犬を犬と分かるのか。イデア、自己言及?) 〈物〉的原因論の排斥(空気等アルケー原理、カテゴリー・属性原理) 残された課題(善とイデア、生成消滅の起動因)
3 《善》とディアレクティケー
(a)「哲人王」宣言から「太陽」の比喩へ。そのメッセージと謎
「国家」の哲人統治論 残された課題との取り組み 「太陽」の比喩 あらゆる判別は価値判断を含む(善イデア・価値は太陽の如くすべてを照らす ※人間の目の二重性、呪われている、バタイユ) 窮極の根源価値《善》(善悪の相対善と絶対善)
(b)「線分」「洞窟」の比喩。教育理念と国家統治の基本原則
「線分」の比喩 二つの探求のあり方(「仮設」は数学の言葉) 問答することの力(「万有の始原」は絶対善、弁証法ではなく問答法) 「洞窟」の比喩 比喩が意味するもの 教育理念と学科目(魂の目の向け変え、見られる世界から思惟される世界へ 数学等の5科→哲学的問答法) 強制されて統治する
4 イリソス川のほとりにて―魂の遍歴とエロース(『パイドロス』)
『パイドロス』の状況設定 二つの企図(弁論術批判と知への真の恋、問答法:総合と分割) 〈動〉の始原としての魂(自己運動、動の始原としてのプシューケー) 御者・善い馬・悪い馬 恋い焦がれる魂 プラトニック・ラブと天上への帰還 遍歴する魂のミュートス
5「汝自身を引き戻せ」―反省と基礎固め
「もっと訓練を積みなさい」(二十歳のソクラテス) イデアの分有をめぐって(『パイドン』での古いイデア定義) 「第三の人間」のアポリアー(アリストテレス命名、定義の無限進行) 常識的思考に絡め取られる(アリストテレス的主語述語命題) 「分有」用語の記述方式の難点 「原範型−似像」の記述方式 パルメニデスの反論の不当性 老パルメニデスの言葉 自分自身を引き戻す(常識のものの見方のしたたかさ、論理のすり替え・詐術)
2 再出発―知覚の徹底分析と〈知識〉(『テアイテトス』)
新たな第一歩(イデア論以前の場に戻して) 「知覚すなわち知識」説(テアイテトス−プロタゴラス相対説、万物の変動流転説) プラトンの戦略(イデア論への反対命題を通しての知覚知識論の再検討再構築) 知覚の基本的事態(知覚・感覚器官と対象、相関相補) 〈物〉的実体の抹消(知覚−対象の独立・因果否定、主述関係の否定、物・個物の否定) 相対性のテシス[命題]に対する批判(各自の相対的真の中で優劣あり、すべての知覚は価値的) 流転性のテシスに対する批判(ヘラクレイトス〜ホメロス、同定不可能な変転) 知覚という認識の範囲(知覚と知識は別物)
6「美しく善き宇宙」ーコスモロジーに成果の集成を見る
宇宙論と自然哲学 コスモロジーの根本原理(生成しない世界と生成する世界、宇宙は後者、イデアの似像) 真実らしい言説・物語(∴自然学は近似的蓋然的確率的、アリストテレスと対蹠的 神話的物語の効用、ヌース:宇宙の造物主) 宇宙の創造(無秩序からできるだけ美しく善きものへ:善イデアの普及) 〈場・コーラ〉の概念の導入(変転する現象界、次々と知覚の場に現れ消えるイデアの似像) 「場の描写」の記述方式(主述命題の基底陳述命題、イデアの似像−場−知覚、アリストテレスはここも誤解=自己の構図内で解釈) 「原因」と「補助原因」の区別(幾何学的原子論、火・空気・水・土の立方体微粒子、補助原因) 万有の起動因プシューケー
2 「ソクラテス以前の哲学」との関係
プシューケーによる統括(始原は生きている物) 原子論の登場(プシューケーを持たない物への還元) プラトンの宇宙論のもつ意味(偏向化した原子論の克服、プシューケー[生命・魂]とソーマ[物質・物]のギリシア哲学の再建) 〈知〉の本来の意義と全一性の回復(ソクラテスのトータルな知) 美しく善き宇宙
7「果てしなき闘い」―現代の状況の中で
プラトン以降の状況 〈物〉主義的世界像の支配 「科学技術」の成立(原子論の系譜、物一元論が科学技術を生んだ) 科学技術の負の波及効果 ”高度”医療技術と倫理 自然環境破壊
あとがき
プラトン著作集の伝承 *ローマのトラシュロス、9×4部=36篇 ステファヌス版(1578年)
プラトンの生涯と家系
ソクラテスの生涯
プラトンの著作の時期区分(主要なもののみ) *文体・内容による プラトン(前427-347年)
・前期 30-40歳 第一回シケリア行(388-7年)前
『ソクラテスの弁明』『クリトン』『エウテュデモス』『プロタゴラス』『カルミデス』『リュシス』『ゴルギアス』『ヒッピアス(大)』『ラケス』『エウテュプロン』『メノン』(以上順不同)
・中期 40-60歳 帰国、アカデメイア開設(387年)後 イデア論
『饗宴』『パイドン』『国家』(厳密には第二巻以降)『パイドロス』(『クラテュロス』もか?)
・後期 60-80歳 第二回シケリア行(367-6年)後 イデア論批判あり
『パルメニデス』『テアイテトス』『ソピステス』『ポリティコス(政治家)』『ピレボス』『ティマイオス』『法律』
「イデア」「イデア論」という言い方について *アリストテレスによる「イデア」論 プラトン自身は固定化を嫌い、多様な言葉遣い(イデア、エイドス、実在、実有、本性、あるもの、真実、真実在等)
-------------------------------------------------
モノと心 異次元
魂、生命 価値、意味
人間・動物・機械 知性(情報処理) 環境適応力
人間にとって無記はない
ノート:ベルクソン『道徳と宗教の二源泉』(1932)
*※本能と知性 自然的なものと人間的なもの 種・社会と個 ダイナミズム、跳躍・飛躍
(目次)
第一章 道徳的責務
・社会的秩序と自然的秩序 *禁止、服従 社会 有機体の細胞と社会 習慣、社会的責務 人間社会は自由な存在の総体 宗教
・社会における個人 *社会的自我 ロビンソンやキプリングの孤独人
・個人における社会 *良心 社会的自我と個人的自我の葛藤 罪人の心理 社会的責務 習慣的、多くの責務は自動的に果たされる
・抵抗への抵抗 *カントらの道徳説 リウマチの比喩 無意識的な習慣か思案すべき義務か 責務の全体 せねばならないから、せねばならない 責務と理性は別物
・断言命法について *蟻たち 本能的な形式
・責務と生命 *知性と本能、原初は相互浸透、発展して分離 道具、社会 蜜蜂や蟻の巣、人間社会
・閉じた社会 *閉じた社会と開いた社会 戦時の道徳 社会的本能は閉じた社会をめざす 国家と人類 家庭/公民社会・国家/人類一般、祖国愛と人類愛との断絶 宗教は神を、哲学は理性を介してのみ一挙に人類普遍を説く
・英雄の呼び声 *完全な道徳とは 極小と極大、質的差異、非個人的還元と特異な人格に体現、法則とモデル(呼び声) 真似たいという願望 社会道徳と人類道徳との質的な差異 ※自然的な世間と人為的な社会、ヨーロッパ的発想 人が集まれば人類になるわけではない
・開いた魂と閉じた魂 *個と全体が一致した閉じた魂 開いた魂、全人類、自然全体
・情緒と推進 *音楽は万人を理屈なくその感情に引き入れる 同様に道徳先達者も
・情緒と創造 *創造された芸術 創造された感情 ルソーによる自然 日本の音 中世の恋愛、神秘学 情緒、感情、感性 知性以上の情緒 創造する情緒、文学・芸術、科学的発見、天才 ※インスピレーション
・情緒と表象 *道徳と情緒 例えば、キリスト教と愛 道徳の英雄たち 圧迫と抱負、習慣・本能と人物・人格的
・解放 *快や富からの解放、無関心 知性では隣人愛は得られない 英雄的行為 魂から神、神から人類への流れ
・前進 *魂の障害 ゼノンのパラドックスが如き 生命の真実と分析知性 抱負、飛躍の力 閉じた社会のための人間の道徳的本性 自然のプランを超えるもの 非生殖的な性行為 自然を裏切る 戦争 生の飛躍 所産的自然から能産的自然へ
・閉じた道徳と開いた道徳 *静止と運動 快楽と歓喜 福音書は開いた道徳 ソクラテス
・閉じたものと開いたものとの間にあるもの *開く魂 静止と運動の間、知性以下と以上の間、知性そのもの、観想 圧力と豊富
・自己尊敬 *ローマ市民の自尊心
・正義 *平等、釣り合い、償い 喧嘩、仇討ち、反座の刑の法則 階級社会 絶対的正義への跳躍 人間的平等の思想、キリスト教 正義、平等、自由 閉じた正義と開いた正義との質的な差
・威圧力と抱負 *理性 人間の社会責務は蟻や細胞の紐帯のようなものだった
・主知主義 *神秘的な魂と純粋な抱負 2つの道徳、命令の体系と呼びかけの全体、中間に知性 蟻の巣の哲学者
・生命の飛躍 *道徳の二源泉 社会的圧力と愛の飛躍
・躾けと悟り *道徳教育の2つの方途 宗教的、神秘的 個と全体、個人と社会
第二章 静的宗教
・理性的存在における背理 *理性があるから迷妄もある、動物に理性も宗教もなし 知性は進化したか
・想話機能 *人は生きねばならない 宗教 想話・仮構作用による経験・事実が迷信を生む ※人は見たいものを見る、見れるものしか見れない
・想話作用と生命 *宗教は必要の故に存続してきた
・『生命の飛躍』の意義 *生命や進化は単に物理化学的なものか 内的推進力 「生命の飛躍」(エラン・ヴィタル)の諸観念 知性と社会性
・想話作用の社会的役割 *人間社会、社会と個人 秩序と進歩、相互相補的 本能と知性は生命が生きる2つの道具・手段、しだいに分離した 純粋本能の支配する昆虫社会 想話作用は本能の残滓か 宗教は知性の社会解体力に対する自然の防御反作用 古代の慣習、法律、道徳、宗教 道徳的病気、正義の女神
・断片的人格 *※逆順序に再構成することが哲学
・秩序破壊に備えた保障 *原始社会や原始人におけるタブー
・解体に備えた保障 *知性による死の認識 宗教はこれへの自然の防御的対応
・有益な仮構作用の一般的テーマ *死者の永続 魂 死後の生存
・非条理なものの異常発達 *魂の、精霊の観念との結合
・予知可能でないことに備えた保障
・成功の意志 *願い 運を味方に
・偶然 *人の死や病気 なぜ? 人間的意味が問われる 偶然的なものは認めない 小銃で狙われて死ぬか砲弾で誰彼なく死ぬか 悪魔、呪い 意図、意向(動機) ※偶然論にも必然論と同じく時間遡行がある、たどれば必然だが人間には自由(系の乗り換え可能性)がある
・文明人における原始的心性 *信仰の起源は知性の、自然の防御的反作用 W.ジェイムズの地震記 (意図などない自然現象か、意図ある警告あるいは制裁か) 無人称の恐怖ではなく人格的な親しみ 突発的な大事件への冷静で客観的とさえ言える対応 自然の、本能の知性への防御的反作用
・魔術 *未開人の研究の意義 本能・原初的信仰を蔽う知性・科学 魔術・宗教/科学 神々・精霊、現世利益(マナ・霊力)
・魔術の心理学的起源 *まず魔術(願望達成の祈祷行為)ありき、この力を一般化概念化したものがマナ
・魔術と科学 *ともに自然の操作や征服をめざす 実効性の有無の違い 進歩と障害
・魔術と宗教 *「宗教」をどう解するか次第
・精霊信仰 *アニミズムの前に自然全体か やがて精霊と神々、マナ・霊力に二分 静的宗教から動的宗教へ ギリシア・ローマ神話
・類として取扱われた動物 *動物崇拝 古代エジプト 原始的宗教からの脱出
・トーテミスム *類と種 血統の二元化
・神々の信仰 *静的宗教は過剰な知性の防止弁、知性以下、自然的な宗教 人間進化の一時停止:知性、危険防止の想話機能、魔術、原初的アニミズム 進化の再開、動的宗教(知性以上)へ 中間形態、原初的アニミズムと魔術による変奏曲、精霊信仰、神話と古代文明(エジプトからローマまで)
・神話的幻想 *世界の神々と神話 ※日本のイザナミら神々も
・想話機能と文学 *ギリシア神話とローマ神話 分析と直観、跳躍・飛躍
・神々はどんな意味で存在していたか *神話の多神教は潜在的一神教
・静的宗教の一般的機能 *祭祀や儀式 祈祷 供犠、動植物、特に動物の血、共食 自然の意図、自然が知性をもった人間に与えたものが宗教 静的宗教は個人を社会を愚かな知性の暴走から守る機制 道徳と宗教は同一ではない、一般道徳と国家道徳宗教は違う
第三章 動的宗教
・宗教という言葉の二つの意味 *進化の一時停止、静的宗教 再飛躍、動的宗教へ
・なぜ同一語を使用するか *神秘主義
・ギリシャ神秘主義 *密儀、エレシウス、ディオニソス(酒の神)、オルフェウス W.ジェイムズの亜酸化窒素 オルフェウス、プラトン、プロティノス
・東洋神秘主義 *神秘学と弁証法はギリシアでは別物、他所では混合 インド、特に仏教 輪廻、神々も救いを求める ソーマ(酒)、ヨガ、神秘主義 観想、解脱、涅槃、行動しない、厭世主義
・キリスト教神秘主義 *愛の行動、完全な神秘主義 神秘体験の記述
・神秘主義と革新 *人間知性は自分の食物を自然や他者と争奪するための武器と道具を得るためにある 待つこと、修道院・修道会 神秘主義は書かれない 神秘主義の燃焼、巧妙な冷却化した結晶が宗教 宗教ではなく信仰の復興・リヴァイバル 福音書におけるイエスの役割(ユダヤ教のリヴァイバル)の反復、模倣者・継承者
・神の存在 *アリストテレスの神?、哲学者の神 プラトンのイデア、アリストテレスの思惟の思惟 運動や時間に対して不動で永遠
・神秘主義の哲学的価値 *神秘的体験は病気、狂気や詐術ではない 同一体験 本能と知性、直観と分析 神秘的体験の直観性
・神の本性 *哲学的な擬似問題は知性の構造に基づく錯覚 神秘家の見神、神は愛、愛の対象
・創造と愛 *2つの著作法 人類が神を必要とするように神も人類を必要とする 地球における生命の存在理由は人類 『創造的進化』の結論を超える 生命と物質は創造の二側面 愛し愛されるべき運命 創造的エネルギーそのものである神 進化のこぼれ屑である多数の種 道具性や物質性を克服すること、つまり再び神を見出すこと
・悪の問題 *人間は卑小か 広大無辺の肉体 デカルトの人間機械論 ライプニッツの弁神論 部分の除去は全体の排除 全体、全能は偽概念 ※全体を全体と評価できるメタ視点が必要 哲学であるなら経験から立論すべき
・永生 *彼岸、魂の永生も経験から思考すべき
第四章 結び ―機械学と神秘学
・閉じた社会と開いた社会 *閉じた社会は相互敵対する社会 開いた社会は全人類を包容するもの 道徳的革新 天才による飛躍、動的宗教 純粋な主知主義が還元する「進歩的」道徳主義 ※相対主義? ※社会文化水準、教育、社会教育は重要
・自然的なものの永続 *閉じた社会は変わらない スペンサーの社会進化論への誤解
・自然社会の性格 *人間は小社会のために作られている 大国家の中で国民はどんな政治を良い政治だと言えるか 大科学者等に比べて大政治家は稀有 小社会の拡大、戦争と征服 ポリスと国家の愛国心 首長=寡頭政 人間の残虐さ
・自然社会とデモクラシー *自然社会は階級社会、王政、貴族政 デモクラシー、ルソーとカントによる宗教的基礎 デモクラシーは自然とは逆ベクトルの営為
・自然社会と戦争 *自然社会の特徴:自己抑制、団結、階層制、首長の絶対的権威→規律、戦争精神 所有権争い 偶然的な喧嘩と決定的な戦争 欧州大戦 人は神か、狼か 総力戦と最新兵器・武器 国際連盟 閉じた社会と開いた社会
・戦争と産業時代 *戦争の原因、人口増加、販路喪失、燃料と原料の欠乏 産業文明や機械は人類に幸福をもたらしたか
・傾向の進化 *親世代と子世代のギャップ 利便と不愉快さ デモクラシー 善政と過誤 不満足の強調
・両分と二重狂奔 *生物は分散的に発達する 両分・二分法 人間においては振り子運動のように両極に行ったり来たり 両分の法則、二重狂奔の法則、二者・二国が対立抗争するドラマ 中世の禁欲的生活から近代の慰安と贅沢を求める生活へ 哲学の快楽主義と禁欲主義 生活の単純化と複雑化 ここにも周期的両分があるか
・単純生活への可能な復帰 *物理学と化学、生理学と医学 食欲、性欲 今日の文明全般が扇情的 かつては香料を求めて大航海、今では食品店で入手可能 自動車
・機械学と神秘学 *機械技術(テクノロジー)と科学は違う テクノロジーは産業革命で人間自身が生み出したもの 重農主義が望ましい 産業主義はただ販売利益のために発明し製造する 18世紀の百科全書派、発明精神(テクノロジー)とデモクラシー、背景に宗教改革とルネサンス 道具から機械へ 精神生活を求める神秘学は機械学を招き、機械学は神秘学を要求する 帝国主義は「神秘主義」(静的宗教)になる(セイエール) 神秘的天才を待ちながら 物理科学と精神、精神の学 脳髄 心霊学 快楽と歓喜 人間はただ生存するために生きるのか、それとも
-------------------------------------------------
ヒューマニズム、ヨーロッパ人間中心主義の匂い
整合性、調和、美、屁理屈、常套句、真理 公式的図式的
テイヤール・ド・シャルダン 創造的進化 目的論、形相因、可能態
『物質と記憶』で実体主義へ転落 物質と精神
禅的、不ニの弁証法
「本能」という言葉
「自然が為した」は理神論? 「責任は人間にあるとともに自然にもある」P.353
シャルダンの宇宙進化論
存在の大いなる連鎖GCB
宮崎隆 ベルクソン『道徳と宗教の二源泉』の理論構成.pdf(横浜国立大学教育人間科学部紀要2016)
引用ページ:A-266/B-345/C-67/D-268/E-324/F-372/G-66/H-18/I-225/J-141/K-315
*『二源泉』は神秘説の哲学 ソクラテスの立場 ソクラテスはプロティノスではない
愛の躍動 開かれている絆関係と自我との間の高次の均衡 呼びかけ
ソクラテスとは今ここに踏み留まりつつ未来へ向かう、 対象なき永遠の運動のこと
ノート:クロスビー『史上最悪のインフルエンザ―忘れられたパンデミック』
史上最悪のインフルエンザ-忘れられたパンデミック 新装版 付「パンデミック・インフルエンザ研究の進歩と新たな憂い」
- 作者:アルフレッド・W・クロスビー
- 発売日: 2009/01/08
- メディア: 単行本
1976原著 2004西村秀一訳みすず書房刊
少なく見積もっても2500万人以上の死者を出したといわれる、1918-1919年のインフルエンザ(通称「スペインかぜ」)。本書は社会・政治・医学史にまたがる史上最大規模の疫禍の全貌を明らかにした、感染症学・疫病史研究の必読書。
(目次)
日本語版への序文
新版(1989年刊)への序文 *比喩の力:ペスト・癌エイズ・かぜ、感染力と致死率
第一部 スパニッシュ・インフルエンザ序論
第一章 大いなる影
キャンプ・デーヴンス/医療部隊の大敗北
第二部 スパニッシュ・インフルエンザ第一波―1918年春・夏
第二章 インフルエンザウイルスの進撃
戦時下、ひそかに迫る危機/ヨーロッパでの流行―軍隊、そして一般市民へ/流行第二波への助走
第三章 3か所 時感染爆発―アフリカ、ヨーロッパ、そしてアメリカ
第三部 第二波および第三波
第四章 注目しはじめたアメリカ
騒然とした世相の中、看過された流行/脅威の顕在化/組織的対策の始まり
第五章 スパニッシュ・インフルエンザ、合衆国全土を席巻
運び屋となった兵士たち /流行、国土全域へ8/都市問題と流行の絡み合いぬ
第六章 フィラデルフィア
嵐の前の静けさ/戦争と流行が織りなす狂気模様/公共サービスの混乱/市民 の積極的協力と組織化/追いつかない埋葬/流行の収束と閉鎖命令の解除/統計
第七章 サンフランシスコ
パンデミック、戦争に沸くシスコへ/ハスラーと市保険委員会/サンフランシスコ の闘い/ワクチンとマスク/マスク着用条令/マスク着用解除と再流行/反マスク同盟/「死の臭いのする喜劇」の幕引き/アメリカの都市社会とパンデミックについての一考察
第八章 洋上のインフルエンザ―フランス航路
船員とインフルエンザ/兵員輸送船/リヴァイアサン号/ウォーレス二等兵の場合/ふたたびリヴァイアサン号の地獄/上陸後も続く試練/海葬/工夫と改善/統計
第九章 ヨーロッパ遠征軍とインフルエンザ
ロシア進駐陸軍第三三九歩兵部隊/スパニッシュ・インフルエンザ、北ロシアへ/西部戦線とフランス駐留部隊/第八八師団での流行り/前線を挟んで/戦場のパンデミック/ホールデン少尉の場合
第十章 パリ講和会議とインフルエンザ
ウッドロウ・ウィルソン/民主党の敗北/アメリカ和平交渉使節団と大統領補佐官ハウス/ハウスの病/冬のパリ、流行第三波/会議の行く手に広がる影/四巨頭会談/対立の激化とウィルソンの発病/ウィルソンの敗北/ウィルソンの異変について
第四部 測定、研究、結論、そして混乱
第十一章 統計、定義、憶測
パンデミックを測る/悪性化の謎/ショープの説とグッドパスチャーらの所見/免疫学者バーネットの考察/いまだに謎は残るぬ/付録(死亡統計)
第十二章 サモアとアラスカ
環境、それとも遺伝? *イタリア移民の集合習慣、アメリカ先住民の脆弱さ、黒人の強さ/太平洋の島々とスパニッシュ・インフルエンザ/サモア/西サモアとアメリカン・サモア/アラスカ/勝敗の分かれ目/リーダーシップについて/州知事リッグスの奮闘/第三波終息―忘れられたアラスカ
第十三章 研究、フラストレーション、ウイルスの分離
原因究明の試み/病原体の第一候補、ファイファー桿菌/ファイファー桿菌説の限界/第二、第三の候補/ろ過性微生物説の登場/イヌ・ジステンパー研究/WS株の分離、そしてウイルス説の確立へ
第十四章 1918年のインフルエンザのゆくえ
動物のインフルエンザ/コーエン、ショープのブタ・インフルエンザ研究/ショー プの仮説とその今日的意義/血中抗体の意味するもの/1951年アラスカ、テラ ー・ミッション
第五部 結び
第十五章 人の記憶というもの―その奇妙さについて
忘れられたパンデミック/文献の中のスパニッシュ・インフルエンザ/トマス・ウ ルフとキャサリン・アン・ポーター/忘却の理由 *コレラのような高い致死率ではない/忘れられないパンデミック *個人の思い出に残っても社会集団には無影響
訳注
訳者あとがき
参考文献
索引
-------------------------------------------------
4月10日(金)午後9:05放送「100年前の感染症から学ぶこと」から
著名な死者:
マックス・ヴェーバー(1864-1920)56歳 社会学者、「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」他
ギヨーム・アポリネール(1880-1918)38歳 フランスの詩人、小説家
エドモン・ロスタン(1868-1918)50歳 劇作家、『シラノ・ド・ベルジュラック』他
グスタフ・クリムト(1862-1918)55歳 画家
エゴン・シーレ(1890-1918)28歳 画家
辰野金吾(1854-1919)64歳 建築家、「日本銀行本店」他
ノート:『パース/ジェイムズ/デューイ』プラグマティズム・中公世界の名著
世界の名著 59 パース・ジェイムズ・デューイ (中公バックス)
- 作者: パース,ジェイムズ,デューイ,上山春平
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 1980/10
- メディア: 単行本
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
解説 上山春平「プラグマティズムの哲学」
本書編集の視点
・現代哲学とは何か *ヘーゲル哲学の解体 19世紀産業革命による社会変化への対応(※大衆化) 西欧:マルクス主義、実存主義、分析哲学 米:プラグマティズム
・プラグマティズムの3つの顔 *マルクス主義・社会性/政治性・デューイ、実存主義・主体性/宗教性・ジェイムズ、分析哲学・論理性/科学性・パース 実存主義・キリスト教/伝統的価値観の崩壊・過去、分析哲学・伝統社会を破壊する科学構造の解明・未来、マルクス主義・社会と思想の転換変革過程・現在 実存主義:パトス、分析哲学:ロゴス、個人・精神 マルクス主義:社会・物質(経済) 本能を核とする主体的要求、環境の客観的認識、主体に対する社会的制約 不可欠相補的な3契機
・3人の思想家に対する関心のあり方 *デューイ>ジェイムズ>パース
・本書の構成 *パース中心に
プラグマティズムの成立と展開
*商工業の中心地ニューイングランド
・プラグマティズムの前史 *土着性 ピューリタニズムの世俗化、ヤンキーズムとの闘争 18C初アルミニウス神学とJ.エドワーズ 19Cユニテリアン神学とエマソンのロマン主義 宗教的な生活信条と技術的思考様式の相克調整運動 宗教と科学の相補的把握 マルクス主義は宗教否定、実存主義は科学否定 ベルクソンら仏新唯心論の物質的かつ精神的な概念「習慣」の採用
・プラグマティズム運動の発足 *1898年カリフォルニア大講演でジェイムズがパースの「プラグマティズム」提唱
・運動の母体 *パースのプラグマティズム論文発表(1878年) ハーバード大OBたちの「形而上学クラブ」
・ジェイムズからデューイへ *ジェイムズ:98年「プラグマティズム」講演〜1907年『プラグマティズム』〜1910年死去 デューイ:20歳若年、ヴァーモント州立大学、バーリントン食料品店家庭 最高のインテリから辺境的庶民的環境へ、普遍化
・道具主義の成立 *1890年のジェイムズ『心理学原理』にデューイは最大唯一の影響を受く ヘーゲル主義的立場から道具主義的立場へ
・デューイとジェイムズの対面 アディロンダック山系ハリケーン山麓避暑地で1900年頃
・運動の盛衰 *1930年代、大恐慌とナチズム抬頭 マルクス主義助長、亡命ユダヤ人の論理実証主義隆盛 微温的なプラグマティズム消沈
三人の思想家の関係
・1903年の講演 *ハーバード大連続講演、韜晦 3連続論文
・パースとジェイムズの葛藤 *パースのジェイムズへの対抗心 ハーバード大哲学科主任教授と測量技師・田舎の不遇老著述家
・両者の微妙な関係 *1902年回覧草稿でジェイムズを侮蔑
・運動へのパースの訣別 *1905年論文で、現プラグマティズムと一線を画し「プラグマティシズム」を宣言
・パースとデューイの関係 *1930年代、パースルネサンス 38年『論理学―探究の理論』 J.ホプキンス大学院時代、デューイはヘーゲル主義者J.S.モリスの強い影響下 パースは論理学を規範科学(カント)とし、デューイは記述科学(ヘーゲル)とする
プラグマティズムの哲学
*プラクティカルとプラグマティック
・プラグマティズムとカント哲学 *プラクティッシュ:実践的/ プラグマティッシュ:実用的・経験的 ⇄ モラリッシュ:道徳的・先験的 プラクティッシュ〜モラリッシュ
・「プラグマティズムの格率」の理論的前提 *1878年論文 デカルト以来の先天的方法から科学の方法へ 推論の論理学、精神の習慣、指導原理、疑念から信念の確立 固執の方法(個人主観)・権威の方法(社会集団)・先天的方法(思弁的普遍性)・科学の方法(経験的客観性)
・実在論的立場と唯名論的立場の対立 *普遍的な習慣と個別的な知覚 実在論と唯名論 思考・概念→行動 わたしたちの経験、社会性・コミュニティ主義、アガペ主義 19世紀的個人主義、J.S.ミルの唯名論と功利主義を批判 ジェイムズは『プラグマティズム』をミルに捧げ、プラグマティズムを唯名論や功利主義に一致するものとする
三人の思想家との出会い
*プラグマティズムは哲学の衰退か勃興か論争(1905年)
・ジェイムズと西田幾多郎 *1906年西田幾多郎が関心、08年『善の研究』第一篇発表 ジェイムズの多即一、知覚の流れ、徹底的経験論 ベルクソンの純粋持続 西田の純粋経験
・ジェイムズ哲学の宗教性 *西田幾多郎、ベルクソン、ジェイムズ 経験の宗教性
・ジェイムズとの出会い *西田幾多郎『善の研究』 ドストエフスキーとカント ジェイムズにおける宗教と科学の両立
・パースとの出会い *鶴見俊輔『アメリカ哲学』を通じてパース論文集に カテゴリー論への関心 カント『純粋理性批判』、パースに仰天
・パースとカント *20歳頃のパースの、カントのカテゴリー論研究 前提としての形式論理学研究
・パースのカテゴリー論 *カントのカテゴリー論の狭さ 前提の形式論理学の狭さを克服 古代中世論理学史の再検討、ブールら数学的論理学の研究 1867年、5論文化
・歴史の波動モデル *自分のカテゴリー体系構築 大学は西田学派の歴史哲学の時代 海軍での人間魚雷の回転電磁石体験 カテゴリー体系と時代精神 神・永遠と歴史の波動 1000年周期説
・パースの500年周期説 *パースに再び仰天 歴史の500年周期説 内的な必然的進化の場合
・波動モデルの位置づけ *偶然的進化(ダーウィン)、必然的進化(内的・ヘーゲル/外的)、創造愛的進化(習慣、ラマルク)
・デューイとの出会い *パースの科学的探求の論理(仮設・演繹・帰納)をデューイが継承 弁証法的論理学
・デューイとパース *ジョンズ・ホプキンス大での接近と隔絶 1890年ごろ、パースはヘーゲル再評価、デューイはヘーゲル主義脱却 探求プロセスの論理学的研究での近接
プラグマティズムの評価
*プラグマティズムの3つの顔を明示する デューイの論理学 ジェイムズの「実存主義」、フロイトの無意識 パースとデューイの論理学の弁証法的性格(システム論)
本書の読み方
-------------------------------------------------
不可欠相補的な3契機
※それぞれ研究するに値する、唯一絶対の真理と考えないこと
実存主義・主体性/宗教性・ジェイムズ 分析哲学・論理性/科学性・パース マルクス主義・社会性/政治性・デューイ
実存主義・キリスト教/伝統的価値観の崩壊・過去 分析哲学・伝統社会を破壊する科学構造の解明・未来 マルクス主義・社会と思想の転換変革過程・現在
実存主義:パトス、分析哲学:ロゴス、個人・精神/マルクス主義:社会・物質(経済)
本能を核とする主体的要求、環境の客観的認識、主体に対する社会的制約
近代日本の倫理性 「実存主義」契機の強さ
宗教性、合一を求める 西田哲学
マルクス主義というより社会救済、慈善
-------------------------------------------------
パース「論文集」
I 現代論理学の課題 1877
第一章 探究の方法
一 科学史の素描
*論理学の研究、推論技術の発達の歴史 スコラ哲学者 ロジャー・ベーコン *経験 フランシス・ベーコン *不十分 ケプラー *仮説 ラヴォアジエ *実験 ダーウィン *統計的方法
二 論理学の研究対象
推論 *価値ではなく事実が問題 人類は論理的だが楽天的 自然淘汰は実際的問題には論理的有効だが、そうでないものには誤っているかもしれない(※好悪、快) 推論の指導原理 *推論を行う精神の習慣 真偽判定の指導原理 精神状態の推移 自明な概念に潜む形而上学(例:色) 疑念と信念 *両者の区別 習慣、行動 探究 *疑念から 絶対ではなく現実から始めればよい(プロセス)
三 探究の方法
固執の方法(個人主観)*不決断な精神状態を本能的に嫌い、疑念を抱くことへの漠然たる恐怖、旧式の見方にしがみつく 権威の方法(社会集団)*教会、ギルド、国家 先天的方法(思弁的普遍性)*芸術的?(好み次第) 形而上学の歴史(プラトン、デカルト、カント、ヘーゲル) 理性に適うかどうか、経験や事実ではなく 普遍的な性質をもった好み 科学の方法(経験的客観性)*霊感のような内的な経験ではなく外的なもの、誰がしても同じ結論 実在という概念 4つの方法の比較 *3つの方法の存在理由 外部排除、異端弾圧、自由思考(形而上学者は真理に到達する) 長所 先天的方法:気持ちがよい結論 権威の方法:道徳的なテロリズムによる思想統一、平和の道、すべては語れない 固執の方法:決断力に秀でる いずれも思想を事実にしようとしている 思想と事実の一致は科学の方法だけ 論理的良心、何かを失うことでもあるが どの花嫁を選ぶか
※※「科学の方法」さえ絶対視しない、決めつけない。他の長所を取り上げ、目的に応じた使い道を提示。公平さ? 道具的観点。
第二章 概念を明晰にする方法
一 「明晰」と「判明」
一般論理学書の説 *「明晰」(明白さ、なじみ)も「判明」(正確な定義)も言語明瞭意味不明 デカルトの説 *権威から先天的方法へ 自己意識、理性、概念の明晰さ 思考と事実の違いを認識せず、内観を信用 対立意見から明晰な概念も判明である必要、推論による検討テスト、討論の必要 ライプニッツの説 *非生産的な知識論、※ライプニッツは世界を変革するのではなく説明しようとする デカルトの事実からの出発を取りそこねる 矛盾律と充足理由律の論理学 「明晰」と「判明」の区別 明晰な理解=判明さ
二 プラグマティズムの方法
概念を明晰にすることは論理学の第一歩である *少なくも明晰な概念か、多くの不明な概念か 思考の唯一の機能は信念の形成にある *疑念から信念へ、問いから解決へ 音とメロディ 感覚と思考 思考は継起、メロディと同じモティーフやテーマ 信念の形成とは習慣の確立にほかならない *信念:暗黙知、疑念の終点(ただし同時に次への出発点、一時休止)、習慣の確立 同じこと(行動や事実)を違うもの(概念、思考)だということはおかしい 主観的な錯誤 聖餐式の2つの意味、ぶどう酒は血か プラグマティズムの格率 三 プラグマティズムの方法の適用例
「硬い」という概念 *相対的な問題 事実の配列の仕方 自由意志と宿命論 仮定、条件文の問題 「重さ」という概念 *重力の言い換え 「力」という概念 *力の効果は運動の変化 始点終点が同一の2つの道、力の平行四辺形、加速度の和 同じことを別のことだと言う、あるいは別のことを意味するかもしれないと考える、積極的概念と消極的概念という空虚な区別 「実在」という概念 *実在と虚構(想像) 実在性(夢を見たこと)と(夢の)内容の真偽は別のこと 固執、権威、先天的方法とも議論は闘争(自分がどう考えるか、納得できるか) 科学の方法で初めて協働作業に(自分がどう考えるか、納得できるかとは無関係) 人類の未知や不在での存在の実在性、科学はいつか到達する、ことばの配列(仮定、条件文の問題)
II 記号論の哲学的基礎 1868
第三章 直観主義の批判
一 推理による方法
第一の問い:対象を認識する場合、その認識は以前の認識の限定を受けるのか、それとも対象と直接関わるのか、を正しく判定する能力、それも、何の予備知識も持たず、記号を使って推理することもなく、漫然と思いを巡らすだけで、判定できる能力は、私たちは備えているだろうか? *直観・知覚と想像・思考の区別の至難さ(人は見たままを語れるか) 言語能力の習得、空間認識(盲点の自覚のなさ)はすでに「推論」している 音の高低や平面も単独の直観では認識できない 人物認識の推論・判断の理由を説明できないが、できている・用は足せているプラグマティズム 持続を瞬間の中に感じ取れない、時間の概念
二 自己認識の正体
第二の問い:私たちは直観的な(直接的に、メタ意識・認識を介さずに)自己意識を持つことができるか? 自意識はどう認識されるか 幼児に自己意識はない 自分の無知や誤りが自己の存在を推論させる デカルトの直観的説明は不可能 第三の問い:私たちは異種の認識の主観的要素間の相違を直観的に区別する能力を持っているか? 認識客観ノエマと認識主観ノエシス 見ると想像、思考、信念を区別できるか 無限背進 感覚と想像は区別できるが、それは直観的なものではない 信念と確信の区別も別意識、メタ意識による
三 行動主義と記号主義
第四の問い:私たちは内観の能力を持っているか、それとも私たちの内部世界に関する知識はすべて精神外の事実の観察から導き出されるのだろうか? *色、情動、美、善悪 外的刺激 意志は抽象能力 第五の問い:私たちは記号を使わずに考えることができるか? *記号と思考、アキレスと亀、アキレスは追いつく(時間) 直観には思考が忍び込んでいる 記号は思考を限定する 瞬間的な思考はない 第六の問い:ある記号が「絶対に認識不可能なもの」の記号であるとすれば、そういった記号は意味を持つと言えるか? 認識不可能のものは言語矛盾で存在しない 人間に認識されうるものは原理的にいつかは認識される
四 直観能力の否認
第七の問い:以前の認識によって限定されない認識が存在するか? *以前の認識を無限遡及すれば無限小に至る、アキレスと亀と同じ(究極はない) 認識もまた他の変化と同様に瞬間的にではなく過程的に生じる 遡行し最初の認識を探せるか 無限小となる、アキレスと亀と同じ 認識もまた他の変化と同様に瞬間的にではなく、過程的に生じる
第四章 人間記号論の試み
一 デカルト主義の批判
*完全な懐疑は自己欺瞞(※本物の哲学者の証明!)、偏見から出発せざるを得ない 形而上学者の確実性は一致しない、科学のように哲学者集団での一致をめざせ 明確な前提と議論の多様性に信頼を 非観念論(=唯物論?)は説明不可能なものを想定 ※観念論は人間(意識)の側から世界を、唯物論はそうではない(人間が属さない、不可知的)側から世界を捉えようとすること?、カントの物自体とも違う
二 すべての精神作用は推論である
*私たちが内観の能力を持たないのなら、デカルト的出発点は捨てて、新たな出発点を立てなければならない 単独、瞬間的、最初の認識(直観)はなく、連続的な過程、推論の過程と考える 三段論法、完全な推論(単純なもの/複雑なもの)/不完全な推論、必然的・演繹的な三段論法/確からしい・蓋然的な三段論法 演繹 *実例 必然的・演繹的な推論、演算 蓋然的な推論、療法、知識欠如、帰納/推定 帰納 推定 *推論は演繹的・機能的・推定的のいずれか 帰納は小集合の性質が大集合でも真であるとの想定の推論、統計的推論、大前提を導き出す推論(逆算)、多様を統一へともたらす操作 推定は小前提(前件←後件)を導き出す推論(逆算)、類似性?、多様を統一へともたらす操作 主語(ソクラテス)・述語(死ぬ)・媒概念(人間) 精神作用を正しい推論形式に、単一の型に還元可能 虚偽論 *推論法と結論の正誤は別、誤った前提でも正しい推論はある 心理的な判定基準(印象)では誤りでも推論手続きは正しい
三 すべての思考は記号と見なされる
*意識の表象が外部の表象なら、人間は記号である 記号のもつ3つの関係 *思考、対象、材質 思考は連続的過程にあり、先行する思考は後続する思考に語りかける 記号となった思考はその中で解釈される 思考の指示対象は何か、先行の思考 思考記号の材質も先行思考 記号のもつ3つの特性 *1記号は事物とは違う素材的な性質・材質がある 2実在的物理的な結合性、純粋の指示作用 3表示作用 瞬間的で説明不可能な直接経験、単独では意味を持たず人生の連続的な意識の流れの中で意味を持つ 感覚は推定的推論である *感覚は単純な述語で、推定的推論の役割 表示作用の素材 情動も単純な述語で、推定的推論 形而上学的概念 注意は帰納的推論である *強調する働き、前後の思考を結びつける力、純粋の指示作用 帰納、枚挙による推論 唯名論者たちの誤り *バークリー、ヒューム 心像は個体的か 観念の連合も推論である *概念は判断での中にあり、単独では存在できない 観念の連合(3つの法則:類似、接近、因果)は判断の連合
四 人間を記号と見なすことが可能である
*反デカルト主義、観念論(事物の認識は不可能) 実在論の正当さ *実在とは認識できること スコラ哲学、オッカムとスコトゥス 精神と事物 集団性と未来性 *人間が使うことば・記号は人間そのもの ※人間とはことば(記号)であり社会(他者、現在・過去・未来) 人間は言語であり、思考にほかならない ※ラカン 意味は社会の中にあり、実在性は社会集団の決定に依存する いかなる思考も後続の思考、未来の思考に依存している 孤立した人間(それでも社会の中でしか生きられない個人) ※パース、ロビンソン・クルーソー
III 歴史哲学の構想 1893
第五章 精神の法則
一 精神の法則の定式
精神の法則とは何か *連続的で他の観念に影響を及ぼす 観念の個性 *過去の観念は過ぎ去る? 接近と類似 観念の連続 *過去の観念は代理ではなく直接的 積分的過去、無限小の間隔(時間) 時間の分析 *精神の時間は一方向 過去は現在に、現在は未来に影響を及ぼす 感覚の内包的連続性 *時間には連続性があり、変化の普遍的な形式 感覚は精神の発展に反比例して衰退、かつては感覚の次元は無限 発展とは可能性の限定を意味する あらゆる感覚の無限小の連続体の現存 感覚の空間的な拡がり *アメーバと神経細胞の感覚 主観的実在的な空間的拡がり 観念の影響 *観念の3要素:感覚、エネルギー、他の観念の随伴 最後の要素が増大し、普遍的な観念が生まれる それは生きている感覚であり、実在論の証明であり、未来が過去の暗示によって影響されることを示す 観念の結合 *観念の連続的拡大の法則 普遍的な観念になる傾向 精神の法則は論理形式 *演繹、刺激を受けての反応 帰納、習慣に 仮説、熟練の過程 精神活動の不確定性 *不確定性は精神の本質 疲労の法則? 法則の再定式 *観念の実在論 感覚の連続体、普遍的観念 生き生きとした観念 観念が相互に影響
二 定式の適用
パーソナリティ *二重人格 パーソナリティは観念の結合、目的論的調和、発展的な目的論、将来の行動の決定因 宗教哲学、進化主義的哲学は人格神の観念と不可分 コミュニケーション *物質にも生命は潜んでいる 精神の法則は物理化学法則とは異なる 自然との第1次感覚がどのように刺激されるかは不明 他者パーソナリティの認識 連続主義の哲学では人格神を疑うことはできない 私たちの面前にあり明々白々の事実も決して容易く認識される事実ではない(※ウィトゲンシュタイン)
三 結論
*連続主義の哲学 論理的実在主義、客観的観念論、進化主義的偶然主義
第六章 進化の三様式
一 福音と反福音
愛による進化 *古代ギリシアのエロス 福音書のヨハネ「神は愛である」 憎しみや悪は愛や善の欠如 被造物の愛(自己愛)と創造的愛 黄金率、(最大多数ではなく)隣人の完成(我欲の満足ではない)を優先させよ(※菩薩心) 成長は愛からのみ生じる 宇宙は精神であり生命を持ち進化する 貪欲による進化 *19世紀は経済の世紀 貪欲の知性は価格・契約・交渉を通じて最高善である食物(グルメ)と娯楽に導く ※現在も同じ 貪欲(我欲、利己心)の有効性と優しさ(センティメンタリズム)の否定(冷酷さ、フランス革命の影響) マンデヴィル『蜜蜂の寓話』自由主義経済による最大多数の最大幸福 ダーウィン進化論の個人主義、生存競争 著者の立場 *イエス・キリストの隣人愛 貪欲の福音への反対、アガペ主義の告白
二 進化の三様式の相互関係
偶然的進化 *進化理論の論理的な親近性 ダーウィンの自然淘汰 偶然が秩序を生ぜしめる ケトレの統計学、バックルの文明史、マクスウェルやヘルムホルツの力学 ミルらの偽科学、功利主義、個人主義、唯名論 必然的進化 *事実は機械的必然性を示さない 習慣による進化 *ラマルク的進化、習慣の力による進化 精神のラマルク的進化、練習による成長、分子的現象の過程と似る 進化の三様式 *偶然的進化、必然的進化、創造愛的進化 前二者は退化した、欠落のある進化 創造愛的進化は感応的 ヘーゲル哲学は必然的進化にとどまる
三 進化の三様式の区別
思想発展の三様式 *人類の思想の歴史的発展との関係 偶然的発展、環境や論理からの離脱 必然的発展、環境や論理 創造愛的発展、感応 預言者的、使徒・聖人的、天才的 思想の偶然的進化 *実例:中世暗黒時代のキリスト教、黙示録の復讐のことば、普遍愛から党派根性へ、フランス革命 思想の必然的進化 *外的と内的 外的の実例 スコラ哲学と十字軍・アリストテレス著作の発見 内的の実例 ヘーゲルの論理学 個人の時間周期は33年、世代 西欧史では500年 思想の創造愛的進化 *精神の法則、思想の連続性 時代精神、民族精神 観念の崇高さ ゴシック建築 19世紀の偉大な発見が独立かつ同時並行でなされた 金儲けと博愛主義
IV プラグマティズムの諸問題 1905-6
第七章 プラグマティズムとは何か *入門的
一 実験家たちは確言をどのように扱うか
二 哲学用語について
三 プラグマティシズム
四 プラグマティシズムとヘーゲルの絶対的観念論
第八章 プラグマティシズムの問題点
一 若干の確実と思われる常識が存在する
*批判的常識主義 ※ウィトゲンシュタイン 第一の特性 *疑い得ない常識的命題および疑い得ない常識的推論が存在する(反デカルト的な主張) 第二の特性 *疑い得ない常識的命題は大昔から現在に至るまでほとんど変化していない 第三の特性 *原始的な信念とは結局本能のことに他ならない
二 確実と思われる常識も批判の必要がある
第四の特性 *批判や疑いの余地のないと考えられている常識も、実は曖昧なものだ 第五の特性 *本当の懐疑なら十分高く評価すべきである 第六の特性 *自己自身に対して批判的でなければならない
------------------------------------------
(パース)
第3世界
知識 人間社会のもの、つまりこれが社会か デマやうわさも含めて
パースとポパー
プロセス主義、現在の問題から始める
百科全書的学者 トータルな世界像、宇宙像を構想 新しい形而上学
時代はすでに専門化していた そういう意味でもユニーク
先天的説明
私たちは合理主義者 納得できる説明を絶えず求める
私たちは賢い
断片的な直観・知覚・認識を収集、比較、合成し、ほとんど瞬間的に推理、判断している
精神世界(内観・個人主観を含めて)
社会、世界3だと考えれば、物質的基礎(身体含む)の上に行動のための精神が成り立つ 幽霊的、霊魂でなくてよい 実在(概念)と存在(感覚的現実)は違う
未知の世界
人間に認識される限りいつかは理解される
連続の哲学
積分の哲学 境界の曖昧さ、連続性 プロセス ソシュール等の2(分断)に対して3(非分断・連続性、ヘーゲル等)
□パースとは誰か
多面体
連続主義・偶然主義・アガペ主義 プロセス主義、積分の哲学
環境
19世紀北米 東部海岸地帯 プロテスタンティズム ホーソーン『緋文字』 冷遇
淵源、近似
論理学・プラグマティズム 科学主義 発見の論理 科学哲学 論理実証主義
ポパー 客観的知識論・世界3 反証主義 可謬主義 新たなカント哲学
日常言語学派 ウィトゲンシュタイン 存在、日常の神秘 ハイデガー
テイヤール・ド・シャルダン オメガ点 創造愛的進化
-------------------------------------------------
ジェイムズ「哲学の根本問題」(諸問題) 1911
I 序論
第1章 哲学とは何か
哲学の役割 *全体知/哲学否定論への反論 *批判1:科学と違い、進捗しない 否、科学は哲学の枝(全体知の一部) デカルトも百科全書哲学者(※ルネサンスまで万能学の時代)what ロックとカントが認識問題(how)を哲学とし専門学化 人間の思考法、その発展、コント ガリレオ、デカルト、万能哲学者、数学的方法の生産性、法則、実証的哲学の科学としての分離 未解決、意見不一致の問題群の集合名称 数理哲学だけでは解決できない問題がある アリストテレスやデカルトが現代に復活すれば、科学ではなく技術進歩に驚き、認識論哲学にはとまどうだろう ※ジェイムズの学識の広さと深さ 批判2:哲学はドグマ的 諾、学説の完全性、無謬性を主張 対する科学は実験と観察による検証、無限の自己修正 批判3:哲学は非実際的観念論的、机上の空論 一般の嘲笑、毒舌家の皮肉 諾/結論 *哲学は古くは全体知(※ベーコンの知識の木)、現在は形而上学 科学・形而上学・宗教
第2章 形而上学の諸問題
形而上学的問題 *たとえ間違っているとしても形而上学的問題はある/形而上学の2つのタイプ *唯理論(観念論)と経験論
II 哲学の根本問題
第3章 存在
存在論的問題 *この世界はなぜあるのか ショーペンハウアー、存在への驚異は存在の不幸、宿命に変貌する ※是にも非にも受け取り可能 存在と無の間は始原も終点も見つからない無限背進/解決の試み *パルメニデス、存在は変化しない 唯理論者と経験論者 合理的にか経験的にか 神の存在証明 存在保存の法則(現象の消長とは別) 存在の出現プロセス(一挙に、少しずつ)、論理的な謎 どこから、なぜ? まず「何であるか」
第4章 知覚と概念(1)
知覚と概念の相違と関係 *感覚と思考 生物的には環境適応のために身につけたもの 知覚は連続的、概念は不連続的 知覚の流れは無意味(多即一、視界のように境界不明、百花繚乱の混乱だが無矛盾)、概念の中で分節化され意味(全社会文化、人間的世界)を持つ 両方が必要 ※内容と形式/唯理論者の見解 *古代ギリシア哲学 概念は不変、高尚、重視 知覚は変化、卑小、軽視 イデア的概念の非経験性(経験論者は経験の複合化) 先験的科学、ただし自己充足的、非実際的/プラグマティズムの規則 *概念を環境適用に活用する 概念の実体的内容(イメージを含む)と指示的機能 プラグマティズムの規則、経験・行為の結果から概念をテストする 哲学がことばの使い方の問題か/概念の機能 *概念は知覚・感覚の活用のため、受動と能動 アリストテレスの目的因と科学の動力因/概念の体系 *概念世界の広がり、静的秩序、観念的構成物/結論 *概念は地図、価値、客観的知識世界(※世界3) 知覚は現在、概念は未来や過去に関わる ※ミクロとマクロ、微分と積分
第5章 知覚と概念(2)
主知主義者の信条 *プラトン主義者、認識での知覚より概念の重視、デカルト プルタークによるプラトン/主知主義批判 *概念はあくまで翻訳、役立つ地図だが表面的で虚偽 現在の事実を知るのは知覚の流れでのみ、置換不可能 1概念は二次構成物、2知覚の流れを歪曲 動的関係を静的関係へ置換、連続的な流れを非連続的な要素へ変換 変化という概念の自己矛盾、定義という硬直化 主知主義、運動は静止の無限の寄せ集めか 主知主義者カント、概念化できない実在を物自体と逃避 バラバラの概念による哲学的難問紹介 1静止・非連続の関係だから因果が説明不可能、カントやヒュームは因果を並列化 2認識の不可能性、対象と主観は互いに超越的 3人格の不可能性、自我 4運動や変化 5類似の定義 6方向感覚 7一実在に対する二つの関係 8関係 9主語と述語の関係/ブラッドリーとベルクソン *矛盾統合の試み、ピュロン懐疑派(判断中止)、ヘーゲル、ブラッドリー、ベルクソン ブラッドリーは概念が知覚劣ることを認めつつ、概念的遠近法の消滅点の彼方に絶対実在を想定 ベルクソンは実在を知覚的なまま哲学に取り入れた/結論 *実在とシンボル
第6章 知覚と概念(3)
知覚と新しさ *経験論 部分から全体へ、部分が基本、部分は知覚 知覚は個別的、変化、新しさ 唯理論に新しさはない 実在は絶えず変化し新しい 経験論は瞬間から瞬間へ実在の特異性を追跡、部分知に留まる 知覚の流れの内に留まり、法則を定式化せず、事実を記録する 日常世界とつながる哲学 哲学が科学と同一である証明へ/概念の実在性 *実在はプラグマティズム規則で判断すべき、知覚も概念も実在的 数理科学と歴史文化学、概念と知覚 概念は自己同一性、トートロジー 唯名論者ジェイムズ・ミルによる批判、同じ白色はない、この主張に有用な意味はあるか、無限背進 唯名論は知覚の流れでは正しくとも概念活用では誤り 実念論、論理的実在論/知覚と概念の相補性 *経験・行為の普遍と特殊は交互浸透、理解の前景と後景 知性と感性、概念と知覚、因果作用も両者の合成 ※インプットとアウトプットの相補性、交互性 唯理論者の反論、知覚も概念に基づく自己矛盾
第7章 一と多(1)
多元論と一元論 *全体は要素、部分から成ると考える経験論は多元論(反一元論という消極的なものも含む) まず全体があると考える唯理論は一元論/一元論と神秘主義 *一元論は神秘的 プロティノス、バラモン教 説明不可能、苦業、哲学的ではない/実体の概念 *単一性、本質 神と被造物 宇宙は多元論 スピノザの単一説=汎神論 ロックの人格的実体概念の批判 バークリーの物質的実体概念の批判 ヒュームの実体概念の批判(ことばにすぎない) カントのカテゴリとしての実体?/単一性のプラグマティックな分析 *単一性は実体同様にことばにすぎないのでは プラグマティックに考えれば原因と結果の取り違え、論点先取 不変の原子や単子(ライプニッツ)、オリジナリティの問題/結論 *世界はある観点で一、別の観点では多
第8章 一と多(2)
一元論の立場 *世界を合理的に説明、だが非合理的=神秘的、宗教との親和性 絶対実在観念論、多即一、知的一元論 難問:1絶対精神ではないわれわれの有限な精神を説明しない 2不完全や悪の存在(多元論なら問題なし) 3変化の世界と矛盾(絶対者の世界は不変、永遠) 4宿命論、可能性や自由はない必然の世界/多元論の立場 *自由意志 一元論は世界は善であるという楽天的信仰 多元論は改善論的、成否は努力次第 多元論は道徳的、一元論は信仰的な見解/一元論と多元論の評価 *多元論の長所:科学的、道徳的 一元論の長所:宗教と親和性、情緒的安定感/一元論と多元論のプラグマティックな差異 *一元論に欠如なし 多元論は不完全、未知、新しさ 真の新しさ、オリジナルはあるのか
第9章 新しさ
知覚と新しさ *知覚的経験に従えば常に新しく同一はあり得ない/合理的知性と新しさ *知性は新しさを認めない、現象的な錯覚 知性の論理は同一律 アトムの再配列 物理的自然は不変と認めやすいが、人間生活では同一還元は難しい 学者も新事実発見やオリジナルな仕事を誇る 概念・主知主義の破綻/新しさと無限 *新しさは無限を破る 無限数は存在しない 事実は非連続的に発生する
III 副次的問題
第10章 連続と無限(1)
非連続性と連続性 *数量は連続か非連続か 知覚では有限、非連続 概念世界では連続的、無限の分割可能性、無限の延長可能性/ゼノンのパラドックス *ピュタゴラスは有限数、多元論 一元論ゼノンの運動否定論 矢の運動は静止の総和 アキレスと亀 真の存在は完全、連続的 有限の多は偽りのもの/カントの二律背反 *実在は数えられる(有限)、無限は数え切れないもの 時空間は無限後退 すべてとそれぞれ・いくらか、無限と有限 両方を満たそうとする矛盾/ルヌヴィエの見解 *実在の有限性、多元論 一部無限も認めるが、事実は重なり合い概念的には説明できず自己矛盾を引き起こす 永遠的な仕方で演繹すべきではない
第11章 連続と無限(2)
静止的無限と発展的無限 *静止的:時空間、存在物 現実にすべては無用、少しずつ(いくらか、それぞれの)有限的にアプローチ 論理的な越境が論理的な難問を生む、論点先取、ヘーゲルの悪無限 発展的:運動、変化、活動 連続は概念的に無限分割が可能 非現実的、概念的順序に問題 ※時間の問題 ある終点から出発する論点先取、現実の未来ではない、現実に無限はない 有意味なのは小さな有限量、非連続的過程として扱うこと/新無限 *無限の集合論 部分集合と全体集合が同一というパラドックス、無限は発展する、無限分割 超限数オメガ(アキレスが亀に追いつく点の数、星の数、平行線の交点までの距離数…)/ラッセル批判 *アキレスと亀のパラドックス、ごまかした解決/結論 *常識的な経験論 実在は有限で非連続な歩みで変化する 知覚経験を概念的に翻訳すると、かえって理解しにくくなる ※存在とは何かの記述あり、だが内容理解できない
第12章 原因と結果(1)
考察の視点 *新しさの問題 結果は原因に基づくのなら、新しさはあり得ない/アリストテレスとスコラ哲学 *スコラ哲学は理路整然とした常識、世の常識を常に尊重 結果には原因あり(充足理由律) 結果はある仕方で原因のうちに存在していた、真に新たなものはない/機会因論とライプニッツ *デカルトの心身二元論、ライプニッツの予定調和、神が万物の唯一の原因/ヒュームとカント *ヒュームは経験に因果を見出せず、新たなものは生じないと結論(ヒュームも主知主義・概念主義で思考) 知覚では出来事はバラバラの混乱した姿、これを概念が整理抽象したものが因果(知覚のただ中に因果はない) カントもヒューム同様、常識を否定、因果を単なる時間継起に変形 画一性、斉一性/最近の理論 *演繹的説明、一元論的 実在は永遠の同一性の行列、発展も新しさもない 函数的世界
第13章 原因と結果(2)
因果性の知覚的経験 *知覚は因果について錯覚しやすい/因果性と活動状態 *精神活動の中での意識の流れ、因果、存在 個人活動では目的因と動力因が一体/因果の作因と大脳 *人間の欲望が世界の事物を作り出した 創造 大脳皮質 精神と脳髄、精神と身体/結論 *概念主義と知覚の流れ
補遺 信仰と信ずる権利 ※宗教論ではない
主知主義も要請とその批判 *主知・概念主義の2派、唯理論者と経験論者 世界は完成している(改善・改良の余地はない) 「信仰」(希望等)の禁止 証拠のないものは信じない規則 多元論的宇宙、協同的改善論的/蓋然性に基づく行為/多元論的宇宙 *定言的ではなく仮言的命題
------------------------------------------
(ジェイムズ)
19世紀産業革命、科学技術革命
新しい社会、常識と科学の分裂、哲学と科学の分裂、科学と歴史文化の分裂
知覚と概念、感覚と知性の分裂
新カント学派、ウェーバー、現象学(生活世界) ニーチェ、ブルクハルト
不変・存在 実念論 合理論 一元論
変化・生成 唯名論 経験論 多元論
存在 知覚・感覚の世界(概念以前) 純粋経験
不変か変化か、保存か増減か アキレスと亀、パルメニデスの呪縛
神秘主義、禅
新しさは任意に無限分割できるから可能だ、が私の考え
時間の問題 方向性
知覚→概念 概念→知覚(現実)の逆走
原因→結果 結果→原因
自由・偶然→結果 結果→必然
ことば・言語の問題
知覚と概念 自然と文化 裸の存在 人間、存在者の問題
※名付け、名付ける前のもの 受け身・与えられ・与件、社会・他者の先行性
内容と形式、質量と形相
中庸、中道 常識主義 楽観的改善主義
-------------------------------------------------
デューイ「論理学—探求の理論」1938
I 探究の基盤
第一章 論理学のテーマの問題
手近なテーマと究極のテーマ *論理とはなにか/私の立場 *探究の探究 ※ポパー、探究の中にこそ論理が探求できる 論理学と方法論は違う/探究と論理形式/探究と知識 *疑念→探究→信念・知識・保証つきの言明可能性(※仮説)/合理性 *理性や公理の自明性の崩壊/論理学の原理 *形式論理学と動的論理学 習慣、行為と結びつく/本章のまとめ/論理学は前進的な学問である *時代とともに、科学の進歩によって変化する/論理学のテーマは操作的に決められる *操作=働きかけ、手続き的、媒介的?/論理形式は前提である *条件の明示 探究の進展とともに前提も変化する/論理学は自然主義的な理論である *直観などはなし/論理学は社会的な学問である *言語、文化の社会性/論理学は自律的である *ア・プリオリの排除
第二章 探究の現実的な基盤―生物学的な側面
連続性 *発達や生長の連続性、断絶も同一の繰り返しもない/有機体と環境 *相互作用の分化とバランス、フィードバックシステム/相互作用の諸様式 *有機体により、状況により複雑化する/習慣 *刺激=反応関係は関数 単なる反応ではない ※思考も回路の一部/生命活動と探究 *常識からの出発、問題の渦中からのスタート ※伝統哲学はアキレスと亀のように動かない/探究の一般的性格 *生命活動が連続的な探究 心理学と論理学 デカルト的科学革命が物心分離し二元論(古代の曖昧な物心観崩壊)/「経験」の意味 *経験は客観的か主観的か 経験的と合理的 ロックの感覚還元論 私の論理学は自然科学のように経験的で実験的/誤謬性 *発展するがゆえに誤謬を認めるべき 本書は試論 特に生物学的観点(環境システム)
第三章 探究の現実的な基盤―文化的な側面
有機体の行動から知的な行動へ *意味、文化、言語の世界 ※世界3 観念・信念の個人性と社会性、個別と普遍、主観性と客観性/言語の役割 *概念 シンボルと意味、気まぐれな約束ごと/言語と意味 *特殊のことば、操作的な力、普遍・概念 言語と活動 単語と規則 体系の部分としての言語 ※ソシュール的でもあり、そうでもなかったり/記号とシンボル―意義と意味 *自然記号は「記号」、人工記号は「シンボル」と呼ぶ 意義と意味/3つの「関係」 *意味シンボル相互の関係、意味シンボルが存在に対して持つ指示の関係、推理可能となる事物相互の結合・包含の関係/論理学の誕生 *自然言語は文化言語となる 本能的な動物行動は人間的な文化行為となる 意味シンボルが過去を記録し期待を可能にする 伝統的論理学の欠点:テストなしで理性の実体化、非実践的観照的(形而上学)
第四章 常識と科学
常識的探究 *科学的探究との区別/常識とは *タブーを含めて/利用と享受 *常識は時代や社会によって変化する/常識と科学 *前者は質的、後者は量的に追求 認識論や形而上学での論点は常識と科学との領域間違いの問題か/全体としての状況 *つながりのある全体が状況 個々の対象と状況は違う 過程と結果 状況の中の感情や感覚 経験領域は議論領域の前提条件 ※メタ認識の問題、微積分認識、多層の系が重複・結合・分離する世界/性質 *このことばの使い方 第三性質、心情語/常識から科学へ *実際的な必要から/二元論の源泉 *職人や商人の技術と支配者層の高級技術/よみがえった科学 *熱・光・電気、レンズや羅針盤など新たな経験素材と技術 新しい常識と科学 対自然、社会へも/科学と常識のギャップ *混乱あるいは違いは社会的で論理的なものではない、質と量、目的因と動力因 言語の違い※ウィトゲンシュタイン 理性と経験、理論と実践を峻別する伝統的哲学(ハイデガー) 科学は目的を解放、ただし道徳分野は別物/統一の問題 *現代における常識と科学の分裂 進歩か回帰か 対象の違いであり論理の相違ではない 論理学も分裂、伝統的論理学と数学的記号論理学
#
第五章 論理学に必要な改革
*アリストテレスの古代と現代の距離、背景常識や科学の違いが矛盾を生んでいる
アリストテレス論理学の検討 *紀元前5世紀ギリシアに適合/ギリシアの自然観 ※難解 *ピュシス、統合的な宇宙論・世界観 主観・客観の不分明(近代に逆転) 学問分野の連続性 ピュシス・自然・本性、永遠(不変)と変化(成長) 無から完全へと至る存在の序列・階級/変化 *変化しない存在と変化する非存在、完全と非完全 美学的/包摂と排除 *感覚と合理 特殊と普遍・種 定義は本質の形式/「種」の序列 *感覚的なものから星まで 素材と目的 生物の自立運動、生物の序列、不死の神/アリストテレス論理学の主要点 *知識の論理形式は定義と分類 未知の発見・発明の論理がない、既知の学習 ※変化を知ることは学問ではない、変化しないことを知ることが学問 包摂と排除の論理学/ギリシアの自然概念と近代の自然概念 *1本質と偶有性 本質・質と計量・量の追求 2異質性の併存と同質性の追求、2つの元素論 運動概念の違い 古代は運動の質的、目的の違いに着目 古代と近代は学問上の関心の違いあり 3関係の取り扱い 古代は主題・実体・主語が中心、近代は関係、変化を捉える 4古代は目的論的な論理学 5『種の起源』は変化の宣言 古代の数学は現実的幾何学、自然数のみ デカルト的代数幾何学が超えた 6ギリシアの自然は質的な有限で閉じられた全体 近代の自然は無限、相互変化/アリストテレス論理学とギリシア文化 *古代の論理学を現代に生かそうとする努力は矛盾/現代論理学の混乱の一例 *三段論法/常識と科学の交流 *アリストテレス論理学は当時の常識と科学を包含、定式化された常識文化 実体や種、対比や序列など現代も生き続ける概念もある 現代は常識と科学の分裂の時代 ※19世紀革命、科学の非日常化=非常識化=不可視化、現象学の生活世界と理念の衣やハイデガーなどの形而上学的韜晦
II 探究の構造と判断の構成
第六章 探究のパターン
これまでの要約/探究と論理形式の発生 *論理学以外では自動フィードバックが働く/探究を探究することの利点/思考の規範の問題 *心理か論理かという問題ではない/探究の定義 *問題解決、開いた状況を閉じて完成させること
/探究の先行条件―不確定な状況 *状況は心理的主観的ではない、現実的実際的客観的/問題の設定/問題解決の決定 *観察と予想・予測 暗示、アイディア カントの認識定式の洞察(内容と形式の統一)は歪んでいる/推論 *意味の意味を検討/事実と意味の操作的性格 *観察、その場の事実、観念・仮説、テスト・実験、検証、証明 事実を命題の形で、シンボルで定式化 ※その場を分節固定化し、全体的な純粋経験としない/常識と科学的探究 *テーマ、目的の違い 常識はある個人や集団の利害と関心 科学は利害抜きの知的関心 新しい言語、シンボルが生まれる/要約 *仮説と実験 現実は時間の中にある/用語について
第七章 判断の構成
判断と命題 *裁判での判決文/最終判断は個別判断である *状況の中の一事案、theではなくa/判断の主語 *旧来の主述には探究の契機がない/主語と実体 *古代との実体概念の違い 不変の対象から変化の相互関係へ/判断の述語 *述語は仮説、理論 経験論は便宜主義に陥った/コプラ */命題 /述語形式の理論
第八章 直接的な知識―理解と推理
直接的な知識に関する理論 *合理論と経験論の直接知批判(現実・媒介なしの内観、感覚[無時間・瞬間]から観念[時間・連続性]への飛躍)/その批判的検討 *探究の連続性、仮説性/仮説の真偽 *無前提の出発点=直接知/知識と理解と了解 *ことばのあいまいさ 常識的な了解をそのまま根拠づけた知識とはできない/ミルの経験主義的理論 *感覚などの常識的な物言いをそのまま厳密な議論に持ち込めない/ロックの場合 *人間には物的対象の認識は不可能、との自覚/原子的実在論 *原子命題と原子事実/知覚について *心理学的な知覚説は特殊事例を一般化して論理学に移入し、原子命題の基礎とした/直接的な知識の諸例とその検討 *面接による知識と記述による知識/理解または会得/論理形式についての命題 *自明はすでに社会的意味である 仮説/補足 *知識は媒介的性格を持つ 推理と論証
------------------------------------------
(デューイ)
科学的発見の論理
パースそのもの 私はポパー哲学での既視感
パースの連続主義とは私の過程主義、ポパーの問題主義
ことばの使い方についてはウィトゲンシュタイン
健全な常識哲学、現実的で有用な哲学を求めて
- 作者: チャールズ・サンダース・パース,ウィリアム・ジェイムズ,ジョン・デューイ,植木豊
- 出版社/メーカー: 作品社
- 発売日: 2014/09/30
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (4件) を見る