ノート:ローティ『連帯と自由の哲学―二元論の幻想を超えて』

 

連帯と自由の哲学   二元論の幻想を超えて (岩波オンデマンドブックス)

連帯と自由の哲学  二元論の幻想を超えて (岩波オンデマンドブックス)

  • 作者:R. ローティ
  • 発売日: 2014/05/09
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)
 

 冨田恭彦訳 岩波書店 岩波モダンクラシックス 1999/11/5

 

(目次)

序文 

 *真理の前提は自由な議論、自由な議論は合意へ収斂せず新たな語彙や議論を増殖させる デューイ:成長こそ道徳、芸術こそ最も道徳的 クーン、ロールズデイヴィドソン

 

1 連帯としての科学

 *科学と人文学 2つの真理 人文学は擬似科学か価値など別基準かを選択 高級と低級、堅い事実と柔らかい価値 科学者は世俗化した聖職者か 2つの合理性、弱いと強い クーンとプラグマティズム 新ぼかし主義 間主観的合意 相対主義か 確かに自文化中心主義的見解だ ※限界をもった仮説的真理論 そもそも絶対的真理などあるかどうかもしれないしどちらでもよい ※まさにプラグ7マティズム 啓蒙思想の政治社会思想は科学同様に自然=本性に基づいた普遍的知識をめざす しかし自文化を超えられるのか ※彼岸か此岸か、革命か改善か、永遠の真理か現実の最適解か 文化の違い クワイン ※理性同様、和解できない文化があると考えるかどうか われわれは進歩、前進しているか 後付でなんとでも言える 科学は芸術運動と同様に錯綜している 固定した真理観はわれわれが真理に対して責任があることを放棄すること ※客観的真理観は何かに誰かに神に頼ること、無神論こそ責任ある世界観 ※プラグマティズムは行動するための哲学、環境の中で改善していくための哲学、観念論は動かず内省し観想する哲学、自他の区別をつけた哲学 啓蒙主義のレトリック、近代科学に伝統哲学の用語を使ったミス(古代ギリシア本質主義) デューイ ぼかし、あいまいさに耐えること

 

2 テクストとかたまり

 *文芸批評と哲学 精神科学と自然科学 真と実在 事実の堅さ:約束・ルール・予言・仮説 ハーシュ:テキストの意味と意義の発見の区別 全体論的戦略、デューイ・ウィトゲンシュタインデイヴィドソン・クーン流のプラグマティズム テキストとかたまり(物質)、人為的人工的なものと自然的なもの、創造・発明されるものと発見されるものの区別、解釈と解明 テキストとかたまりの断絶、作者の意図、人為物にはあって自然にはないもの 啓蒙主義実在論哲学の失敗は自然に神の代理をさせようとすること 実体・自然は主体・人間の投影、物理科学は精神科学を模倣する テキストの意味と意義、解釈と批評(メタ解釈) 知識は心と対象との関係ではない、対象について語るとは別のテキストや自然との関係について語ることでありこれしかできない メタレヴェルに拘泥する意味はない、唯一の実体を追う羽目になるだけ 分析哲学と大陸哲学、反解釈学と反実証主義 

※すべては仮説的、実はわれわれは一般理論ではなく、特殊理論しか持てていないのかもしれない 伝統や歴史を探究する者はそうすることで実は伝統や歴史を自ら作り出している、自分自身の影を追っているにすぎない

 

3 方法を持たないプラグマティズム

 *プラグマティズムの2つの側面 対一般向け、科学的・脱宗教・迷信 対哲学者向け、全体論・反分析的 中庸、日和見主義の哲学 フック、科学主義と自然主義 ※言葉に呑まれないこと(その言葉遣い自体に価値が含まれている、仮説、ぼかし) 同じ神を語るデューイとティリッヒハイデガーの継承者) フックとハイデガー デューイのハイデガー解釈 現象学は非実体・非本質学 ハイデガーの存在、存在的ではなく存在論的、人間と自然との結びつきの感覚 後期は沈黙へ、欠陥は非ヒューマニズムプラトンや技術を全否定 ハイデガーティリッヒ・デューイの存在とは自然主義ではなく、ある芸術、ある宗教 プラグマティズムの2側面 伝統的理性哲学に対する科学主義的な暴露(フックら) 自然科学に対する全体論的な暴露(ジェイムズら) カルナップ実証主義ヘーゲル主義 真善美は別物ではない、連続的 アメリカ伝統の反イデオロギー自由主義 ドイツ人の深さ、フランス人の繊細さ 本当の哲学という陥穽

 

哲学史の記述法―4つのジャンル

 一 合理的再構成と歴史的再構成 

 *学説を現代において論じるか、過去において論じるか 科学史では過去の誤りを誤りとするが、哲学史では見解の相違だとし誤りとしない 一方で、同時代人として聞くことも必要(現代の知識や文脈で語れない) また、現代の再教育を経た哲学者との対話 合理的再構成に先立ち歴史的再構成が必須ではない ∵歴史は発掘ではなく再配置だから 

全体論:メタ的、自己言及的、循環論的見方 プロセス的、すでにわれわれは問題の中にある、無関係ではない

 二 標準リストを形成するものとしての精神史

 *歴史的再構成、合理的再構成、精神史的再解釈(哲学や哲学史についての再解釈、哲学とは何かという尊称的問い、つまりは文学) 哲学の尊称的用法、標準リスト、自己正当化 ヘーゲルニーチェハイデガー哲学史 精神史家が作る物語 ブルーメンベルク、ライヒェンバッハ

※科学も哲学もつまるところ、文学である

 三 学説史

 *4つ目の哲学史 寄せ集めの通史、最も退屈 自然史 バラバラの哲学(多様な問い、同じテーマではない、問いは変わる、基体−実体−主体等)、哲学者たち(自身で認めたわけではない、神学者等) 同じ問いに答える必要はない ※問い方こそ問題、時代の問い方 哲学史と知の歴史 共同体の前提常識としての知識、その内部での意見 学説史の無効性

 四 知の歴史

 *時代思想史、社会思想史 哲学ではない分野や事柄、哲学者と呼ばれない人々 哲学史も勝者の歴史 3つの歴史弁証法 ヘーゲルフーコー フーコーの精神史の試み ※自己正当化や文脈を放棄すれば、のっぺらぼうのむじな、ラッキョのヨーロッパでは?

 

5 哲学に対する民主主義の優先

 *ジェファーソン 政治的統合と宗教の自由(狂信的でない限り) マルクス国家は宗教放棄を要求 公民としての良心(人権・良識・理性)とその制限、宗教的自由と公民としての制限 唯一の正解、啓蒙主義の理性による自然淘汰 二極分裂:絶対主義と相対主義プラグマティズム、ロナルド・ドゥウォーキンとデューイやロールズ 第三の立場:共同体主義、ベラー、マッキンタイヤー、サンデル、チャールズ・テイラー、自由主義啓蒙主義の死 ∴プラグマティズム啓蒙主義の1つ、自由主義は非道徳的、後天的歴史的な基礎づけの必要 プラグマティズムは哲学のための哲学ではなく、政治が先行しそのための哲学を作る 啓蒙主義的理念的個人主義より人間の相互依存性に依拠した歴史的共同体主義が民主主義に適しているのか、われわれの民主主義が1つの歴史的特殊であるならこれも正しい ロールズ:現在の民主主義政治は歴史的宗教的政治的経済的社会的な多様な諸条件から成り、一般的な道徳観念が正義観念の基礎とはならない、各員で相矛盾し共約不可能 かつての宗教同様、多くを寛容領域として取り扱うべき 重なり合う合意はやがて淘汰される 歴史主義的、反普遍主義的態度 民主主義に哲学(啓蒙主義、新カント派)は必要か不必要か サンデルのロールズ批判 自文化中心主義と相対主義への恐れ 好みでも理性・本性でもなく ニーチェロヨラを狂気と見なせる教育や歴史的状況 徹底したカント的二元論の排除(ヘーゲルやデューイは克服者) 形而上学批判:デューイ、ハイデガーデイヴィドソンデリダ 歴史的自我 人間は歴史的な網目でできたラッキョか中心のある梅干しか ただしニーチェロヨラの排斥はあくまで政治的なもの(公私、自他は別) 民主主義を哲学に優先させること、問いの順序、恣意性ではなく誠実さ ※すでに決められている 社会制度は実験である

 

プラグマティズムデイヴィドソン・真理

 一 慎みは金

 *デイヴィドソンの二元論の拒絶 ジェイムズ デューイ

 二 パースの不徹底な処置

 *探究の終着点 観念論的真理論と物理主義的真理論

 三 デイヴィドソンとフィールド言語学者

 *世俗的な立脚点 非還元的自然主義 真理論はいらない 解釈学的循環、翻訳の基盤ではなく結果 第三の見方、主客統合の神の視点を捨てること

 四 非還元的物理主義者としてのデイヴィドソン

 *パトナム ※二極を揺れ動く思考、中間・中庸・第三項を容れない、中間物はみそくそにして両極へ散らす 自然主義道具主義 

 五 デイヴィドソンとダメット

 *プラトン〜ロック〜クワイン、ダメット

 六 デイヴィドソン実在論反実在論

 *デカルト的な心 形而上学的思考の遺物 図式・内容の二元論 ※内面も外部もない、連続的な状況があるのみ ウィトゲンシュタイン、意味と呼ばれる存在者に用心せよ(古い形而上学的衝動を克服せよ) これまでの観念論vs物理主義の不毛の形而上学的な争い(実在論vs反実在論)→20世紀初にプラグマティスト(脱形而上学志向)vs反プラグマティストのメタ哲学的な争い デューイの重要性はヘーゲルダーウィンを1つにしたこと ハイデガーvsデリダ

 

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デューイから。

 

事実とは何か

 関東大震災朝鮮人が井戸に毒を入れたとのうわさ その仮説を正しいと見なすかどうか 科学もニュースも同じ、真理・事実は1つで発見されるべきものとしてあるという信念が誤謬 単純多数決ではないが客観的多数がより正しいと認める間主観的最適仮説が現状での「事実」 練習問題:日本海か東海か 慰安婦問題を慰安婦像に表象させるなどは感情的訴求は有力な論証テクニックの1つ 

 

世界には問題しかない

 真実も全体もない 起源も運命もなく、ただ渦中の問題しかない 真実や全体などについておしゃべりはいくらでも可能だが、たいして意味はない 現実は突然問題として現れ、これをどう解決するかがすべて

 

先験的ア・プリオリの論理や道徳を保障するのは神(カントを想像せよ)

 後天的経験的歴史的とは神の後ろ盾をはずすこと

 

ヨーロッパ思想の秘密

 絶対思想 絶対神 客観的時間空間 神の絶対軸を認識できる理性、神と人間をつなぐもの 先験的超越論的

 

 

 

哲学と自然の鏡

哲学と自然の鏡