採用や教育にあたっての観点と方向性

有精卵/無精卵


企業は生き物である。日々とは言わずとも、年々変わっていく。変わっていかなければ、企業としての成長はないし、環境変化にも対応できず、やがて消滅する道をたどる。その成長は組織という抽象的なレベルで図らなければならないが、ミクロで見ればそれは個人個人の成長に他ならない。

当社の場合、製作部門があるので、そこでの採用は当然その職種に関する知識・技能が最重要の要件となる。だが、果たしてそれだけでよいのか。人間は年を取る。いつまでも「若い新人」では済まないのである。また、環境変化によって以前の経験は古びる。「ベテラン」こそ、新たに学ばなければならない。会社は各個人の成長を助けはするが、成長する主体は各個人自身だ。本人が成長しよう、学ぼうとしなければ、いくら会社が努力しても実は結ばないだろう。

「有精卵/無精卵」という考え方がある。先天的なものとは思わないが、一方から一方への転換は無自覚的な性質だけに至難だ。その「有精」とは何か。自ら新たな自身を産み出す力、学ぶことで自己克服なり自己実現していける力だろう。

私が考える限り、ビジネスや会社では、その方向性は「経営」にある。自ら経営の中心に向かって進むことが、仕事の世界で成長することなのだと思う。もちろん、それは一人ひとりジグザグの道だ。いまの職種やポジションによってずいぶんと違うのは当たり前だ。だが、万人とも経営を、シンボリックに言えば、社長をめざして成長すべきなのだ。

翻って採用について言えば、職種に関わらず「経営幹部としての素質」こそを判断すべきだ。また、入社後の教育は常に経営幹部として鍛えるという観点をもって臨まなければならないのだと思う。