ノート: 人間学命題集

人間学命題集

人間学命題集

 

※インターネット普及前。

 

序―人間学への案内 *人間とは何か。

 

I 生成の人間学 

 *宇宙における人間の位置。人間の物質性、自然との同質性や連続性。ピュシス的世界、コスモスあるいは唯物論(斉物論)。人間の創造性の秘密、二項対立の弁証法的乗り越え。

 

1 ニヒリズムに抗して(F.W. ニーチェ)  須田 朗 

悲劇の誕生 (岩波文庫)

悲劇の誕生 (岩波文庫)

 

  *真理において―「真」とはプラトンイデア。対になるのは「仮象」の生。西洋哲学の二元論。/没落しないために―超感性的な、最高の諸原理。イデア、神、定言命法、理性、進歩などの形而上学。この転倒の自覚がニヒリズム。真・仮象の二元論を超えて自然(ピュシス、根源的生命原理)の復権。それが力への意志。/われわれは芸術をもっている―ヨーロッパのニヒリズムとしての宗教・道徳・哲学。対抗原理としての芸術。超越的でない真理認識の新しい方法。芸術モデル。鑑賞者中心(女の芸術)から芸術家、創造者主体に。固定した作品(不変、存在)ではなく創作、生成の価値。絶えず超えていく超人。力への意志に最終目的はなく、超越と生成を繰り返し、永遠に回帰する。

 

2 持続する生命(H. ベルクソン)  作田 啓一

時間と自由 (岩波文庫)

時間と自由 (岩波文庫)

 

 *二項対立の運動。持続と空間。感情や心理は空間のように分割、統合できない。深い自我と表層の自我。意志決定は深い自我、人格全体から生まれ、そこに人間の自由がある。純粋記憶と純粋知覚、記憶と知覚のせめぎ合いの中に行為がある。物質の抵抗と知性、自由。知性と本能、直観。生命進化、創造のダイナミズム。閉じた社会と開いた社会、道徳・宗教。神秘家。

 

3 純粋経験と宗教経験の理論(W. ジェイムズ)  桐田 克利 

宗教的経験の諸相 上 (岩波文庫 青 640-2)

宗教的経験の諸相 上 (岩波文庫 青 640-2)

 

 *純粋経験、反省以前の直接的な生の流れ、知覚、直接知。意識の流れから概念、間接知、非連続、不変。主体、純粋自我、主我と客我。純粋経験、神秘体験、宗教的経験。1度生まれと2度生まれ。2つの回心、意識的と無意識的な方法。

 

4 コスモロジーと人間経験(A.N. ホワイトヘッド)  平田 一郎

 *コスモロジー。世界を構成する現実的実在(原子、モナド的な「こと・生起」)。モデルとなるのは根源的な人間経験。物質も心性、観念性を持つ主体。万物が生きている世界。意識は後発で経験が先立ち、今現在の経験には人格もない、非感覚的知覚。

 

5 歴史的身体をもつ存在(西田幾多郎)  大橋 良介

善の研究 <全注釈> (講談社学術文庫)

善の研究 <全注釈> (講談社学術文庫)

 

  *純粋経験―思惟・意志―知的直観。神人同性、神人合一。神と人との逆対応(集合論群論、一対多)、群=場所。場所的論理、行為、身体。創造され創造する世界。身体は働くと見るが結合する行為的直観の当体。人間のみが持つ歴史的身体。

 

6 生と形式 (G. ジンメル)  高橋 由典

 *生は表現のため形式を作り出し、形式は生を固定化しようとする、精神文化の悲劇。生が新しい形式を次々に生み出していくダイナミズム、発展形式の神秘化か。形式社会学生の哲学

 

7 哲学的人類学(M. シェーラー)  木田 元

 *宇宙における人間の位置を見定める哲学的人間学(人類学)。ユクスキュルの「環境世界」適応論。人間だけが「世界」開示的に生きる。ハイデガーの世界内存在、メルロ=ポンティのシグナル行動、シンボル機能。精神、唯心論、汎神論。

 

8 意識のドラマトゥルギー(J.P. サルトル)  菅野 盾樹

 *人間学としての伝記。透明な意識、明晰な言語はヨーロッパ人のドグマ。フロイトの無意識はナンセンス。意識は対自存在、他者や事物は即自存在で、「自我」は存在の無。ボードレールの人生は、自由な意識の選択で出来ている。サルトル人間学は、意識が自由に選択すること、闘いで自由を回復し救済すること。自己欺瞞、前反省的コギトのパラドックス、意識を祀る巨大ピラミッド。知性中心主義、20世紀版デカルト的二元論。

 

9 生成変化とマイノリティ(G. ドゥルーズ)  宇野 邦一

 *差異の肯定。同一性、総合、予定調和を前提せず、現実的な潜在性、分割できない強度や深さとして、また多様な分子と微粒子、マイノリティとして差異を捉える。資本主義の脱領土化・コード化と、偶像崇拝ナショナリズム原理主義・家父長制的価値の両義的な運動。マイノリティとしての分裂症。資本主義は帝国やコードを解体して差異を開放し、多様な分子と微粒子、マイノリティを生み出す。分裂症的な作家は新しい言語や身体の文学を作る。潜在性と強度のモデルとしての形態発生や卵(器官形成以前の身体のねじれや移動)。固定した形態、主体、同一性のマジョリティから逸脱する微粒子群の動きが生成変化(ねじれや移動)。マイノリティ問題はアイデンティティの保持より生成変化する(差異を生む)ことが重要。マイノリティからマジョリティは生まれる。※正統と異端。

 

10 創造的人間(S. アリエティ)  亀山 佳明

 *一次過程は無意識領域、夢や精神病の世界、未開人や子ども、古論理的思考。独創性。二次過程は日常的な通常の論理的思考。テスト、概念形成。三次過程、魔術的な統合。機知(ハイネの醜女とヴィーナス)、詩(ブレイクの薔薇)、科学的発見(ニュートンのりんごと月)

 

II 自己組織性の人間学 

 *アメリカ的。認知・情報・行動心理学。生命システム論。生命としての人間。プラグマティズム分析哲学。環境の中の人間。

 

11 制度と自由(A. ゲーレン)  宮嶋 秀光

 *人間は欠陥動物。制度は外部化・社会化された本能。例:過剰な性衝動―結婚の制度。自然的衝動の結晶化、物件化(転倒、物化、疎外化も)。トーテミズムなど宗教的理念によって、人間の文明や制度が生み出され、また自由も生まれた。人類史の晩年に生きる現代人の惨めさ。

 

12 自己主張的感情と自己超越的感情(A. ケストラー)  高橋 由典

 *ホロン概念。上位には部分、下位には全体(器官系ー器官ー組織ー細胞ー器官ー分子ー原子)。自己主張的/自己超越的傾向。自己超越は集団/超集団(大洋感情、自然・芸術・神)の方向。自己主張的感情は攻撃的、自己超越的感情は浄化的。国家や民族など集団への自己超越的感情が危険(社会、集団のため、道徳的で、自己主張だと気づかれない)。では、超集団への自己超越は? ホロンには究極の全体はありえないはず。還元論全体論もないのがホロン。※プロセスとしての世界

 

13 生成のコミュニケーション(G. ベイトソン)  矢野 智司

精神と自然―生きた世界の認識論

精神と自然―生きた世界の認識論

 

  *サイバネティックスのフィードバックシステム、自己ー環境の循環回路としての精神プロセス。論理階層論、パラドックス。情報に関する情報(コンテクスト、メタ・メッセージ)とメッセージのダブルバインド分裂病、一方でソクラテス対話法、禅問答。病理の一方で、回心や覚醒をもたらす。遊び、メタファー、ユーモアはパラドックスのコミュニケーション。

 

14 暗黙知と存在の階層性(M. ポランニー)  織田 年和

 *顔つきと誰か、諸細目と包括的全体。二種の感知を同時に行う。諸細目を暗黙的に統合し、包括的全体を創出している。知覚なども同じ。主体が統合を行い、知は人格的力による統合。コンピュータと違い、誤りと上達がある。統合を深めたり、諸細目に焦点を当てることも可能。暗黙知の階層構造。生命の階層的世界(物理化学的物質ー動物生理ー社会的道徳的存在)に境界制御の原理。生命活動自体が身体を諸細目として統合し、包括的全体としての目的を達成すること。包括的全体としての生命、精神。生命進化、人格変容も、諸細目を再統合し、新たな包括的全体を創発することか。※無限のテキスト解釈。コロンブスの卵

 

15 オートポイエーシス (H.R. マトゥラーナ、F.J. ヴァレラ、N. ルーマン)  正村 俊之

 *自己組織化。※自己言及的。生命は同時に同一性と差異性、統一性と多様性を持つ。構成要素でありネットワークでもある循環構造。4特徴:自律性、個体性、境界の自己決定、入力・出力の不在。ルーマンが社会、人間に適用。開放性と閉鎖性を備えた自己準拠的システム。社会システムはコミュニケーションの自己組織化(行為へ縮減する自己観察が媒介)。心理システムは意識の自己組織化(自己観察が媒介)。意味の自己準拠性、トートロジーと脱トートロジー。意識が意識を反省する。

 

III 超越の人間学(聖の人間学

 *人間の立つ所、存在のあり方。人間の独自性、意味の世界。主体。

 

16 絶望という跳躍板(S. A. キェルケゴール)  鳶野 克己

 *絶対の他者である神は、つまりは人間は生の理由、生きる根拠を問う者。絶望とは神から離れ、自己を問わないこと。①問いに気づかない、気づこうとしない者。②不幸な自分から逃げ出す者、閉じこもる者。③絶望、不幸に居直り、神を拒む者。背中合わせに神。

 

17 至高性一赤裸の現存の輝き (G. バタイユ)  西谷 修

 *フレイザー『金枝編』の森の王ディアヌス。前王を殺して現王となり、やがて次王に殺される。始まりと終わりが見えない中間者、ウロボロス、死にさらされた至高者。内的体験、脱存・恍惚・忘我の神秘体験、主体の外、主客からの離脱。ヘーゲル批判。死に身をさらさぬ主人に自由・主権はない。

 

18 超越の人間学(M. ハイデガー)  木田 元

  *前期の存在了解。人間だけが動物としての種の特有環境を「超越」してあらゆる存在者を「世界」として見ることができる。世界内存在の働き。人間だけが動物の現在を超えて、過去や未来という時間の次元、時間化作用をもつ(「存在と時間」の視点)。世界とはこのような高次の構造。『存在と時間』段階では思い違い(存在了解には人間の自由があり、時間化のし方、つまり生き方を変えることで世界を変革しうる。ナチズムの夢)。後期は存在の生起。存在は人間の意志とは無関係に生起するものへ。※「革命は起きる」という若気の至り、先走り。

 

19 我-汝、我-それ (M. ブーバー、E. レヴィナス)  皇 紀夫

 *人間のあり方を語る2つの根源語。互換不能。「汝」の「それ」化。レヴィナスのブーバー批判。 他者・汝の優越。

 

20 供犠と集合暴力(R. ジラール)  織田 年和

暴力と聖なるもの (叢書・ウニベルシタス)

暴力と聖なるもの (叢書・ウニベルシタス)

 

  *共同体、王の支配の起源。共同体内の相互暴力を1人の犠牲者への集合暴力に転化、解消する。集合暴力、魔女裁判、人身供犠。デュルケムの集合沸騰、フロイト『トーテムとタブー』の原父殺し。山口昌男スケープゴート論は集合暴力肯定論。オイディプス神話。暴力と聖。聖は外部化された暴力。汚れと聖。近親相姦の禁止(外婚制)と特定食物の禁止のトーテミズムは暴力の外部化が目的。デュルケムとウェーバーのカリスマ論。

 

21 魂における存在(C.G. ユング)  河合 俊雄

 *人間の現実は、生物や物質、観念に基づくものではなく、魂(anima)の活動、心理においてある。現実性は魂が日々作り出すファンタジー神経症も1つのファンタジー)。魂における存在、「esse in anima」、魂の中に人間がいる。自我中心主義の否定、集合的無意識。元型の統合・結合、自我中心ではない個性化や自己実現、物と精神の出会い、コスモロジー。三位一体の教義には女性性、身体性が欠如。錬金術やマンダラは統合モデル。

 

22 地表を覆いつくす労働者の〈根こぎ〉(S. ヴェイユ)  冨原 眞弓

 *1909-43年、34歳の生涯。労働者の幸福とは何か。

 

IV 表現の人間学(身体と性の人間学)(芸術・スポーツの人間学

 *表現する人間。身体、言語、芸術。シンボル、神話、遊び。文化・表現の源泉、発生の構造。

 

23 語る主体と野生の存在(M. メルロ=ポンティ)  加國 尚志

メルロ=ポンティ・コレクション (ちくま学芸文庫)

メルロ=ポンティ・コレクション (ちくま学芸文庫)

 

  *世界への実存的基盤、前意識的な知、非人称的存在としての身体。表現や言語も所作的意味、受肉した身体の上に語る主体がある。言語の制度・語る主体・新たな表現。握り合う両手の可逆性、画家の身体性における交差。「私が森を見ているのではなく、森が私を見ている」。野生の存在、世界の無尽性。

 

24 異文化としての自文化、「ひと」としての女(九鬼周造)  坂部 恵

「いき」の構造 他二篇 (岩波文庫)

「いき」の構造 他二篇 (岩波文庫)

 

  *白茶色。いきは媚態の円熟、武士道の意気地と仏教の諦めによるところの。道教の無の要素もあり。苦界、女への共感。

 

25 根源的現象としてのリズム (L. クラーゲス)  西村 拓生

 *拍子(人為的な分節化)とリズム(分節と持続が調和した分節的持続性)は異なる。リズム、例えば波の反精神性(上下運動の転向点、無限運動)。精神と魂(生)の敵対。測定可能時間と生命的な時間(ベルクソンとの共鳴)、表現としての生(ディルタイとの共鳴)。生と精神、リズムと拍子の融合、リズム的脈動。デリダ的なロゴス中心主義の批判、世紀末時代の文化批判・新教育運動の一環。

 

26 内なる生の神話としての芸術(S.K. ランガー)  西村 拓生

 *サイン(シグナル。稲妻→雷鳴)とシンボル(コンセプション。多様な観念・記憶・イメージ)。論弁的シンボル(言語。線形配列)と現示的シンボル(芸術。感情のように語りがたいもの)。芸術とは現示的シンボルによる感情の客観化、論理的表現、一般的形式、本質・原理。芸術は人間の感情の普遍的なパターンの経験、内なる生の神話。

 

27 シンボルと文化的多元性の復権(E. カッシーラー)  村岡 晋一

シンボル形式の哲学〈1〉言語 (岩波文庫)

シンボル形式の哲学〈1〉言語 (岩波文庫)

 

  *19世紀の実証主義・科学主義の破綻、世紀末からのシンボルの復権。新カント派的な理性批判から、言語・神話・芸術・宗教・科学に及ぶ文化批判へ。表情・表出・意味のシンボル機能。文化的多元性の復権の試み。だが、理性を信じる19世紀思想家。

 

28 遊びと文化(J. ホイジンガ)  井上 俊

  *ホモ・ルーデンス、「遊ぶ」ひと。義実的な仕事ではなく、自由意志によって選択された余暇活動。真面目な「プレイ」。神聖行事と祝祭競技。19世紀は真面目の世紀。カイヨワの聖・遊の分離、聖・俗・遊の三元論。ホイジンガは遊びではなく遊びの精神の研究。文明・現代社会・ナチズム批判。

 

29 個人と集団における隠蔽記憶(S. フロイト)  岸田秀

モーセと一神教 (ちくま学芸文庫)

モーセと一神教 (ちくま学芸文庫)

 

  *フロイトは宗教や文化など集団心理から個人心理を考えた。「モーセという男と一神教」。ユダヤ教選民思想は多民族の神。エジプト王のイクナートンの一神教に由来。割礼はエジプトの風習。

 

30 昇華という問題(ノーマン・O. ブラウン、P. リクール)  作田 啓一

 *性欲(本能)が文化・芸術の源泉・エネルギーとなる昇華。性欲は神経症、倒錯、創造的行為となる。リピドーの配分か変換か。リクールは対象リピドーの自我リピドーへの変換を主張。ブラウンはエロスとタナトス、依存と独立。死からの逃走、文化的業績による不死など。ブラウンは西欧哲学批判、リクールは西欧哲学にフロイトを組み込む。

 

31 ポリロゴスー構造と外部との対話(J. クリステヴァ)  西川 直子

 *ポスト構造主義記号論構造主義は記号も閉じた構造としたが、外部へ開かれている。意味作用から意味生成へ。意味の生成〜解体。他者と多声的な対話を行う相互テクスト性。詩的テクストの多重多義的意味生成。フェノ(現象)テクストとジェノ(生成)テクストとの多層性。フロイトラカン精神分析理論。意識と無意識、語る主体の分析。ル・サンボリック(記号象徴態)とル・セミオティック(前記号態)。象徴界・超越論的主体、現実界・創造界・前エディプス的様態・『ティマイオス』のコーラ(母子一体)。ヘーゲルの否定性をフロイトの「死の欲動」で唯物論化。アブジェクション(両義的なおぞましいを棄却し対象化する運動)。テクスト、詩的言語のポリロゴス性。

 

V 人間形成の人間学・病の人間学 

 *教育、成長。科学物質文明全盛の20世紀における人間学・教育学。二元論的思考を超えて、現実・全体性を求めて。人の一生、死。精神の病、生とは。実存と苦悩。

 

32 経験と成長(J. デューイ)  矢野 智司

 *教育に目的はなく、成長する過程のみ。経験あるいは状況は有機体と環境の相互作用。主客二元論的思考に入らない。問題状況から解決し(状況変容させ)再び統一状況する探究。環境変容、意味生成する探究の力の拡充が成長。成長が生の目的(※ニーチェ)。変転する状況としての自然。哲学は確実性の追求(基礎づけ主義)史だが、このゲームはリストラすべき。哲学は経験の自己言及史、成長パターンの道具に。形而上学の実体化や二元論的思考が偽のカテゴリーを作り世界分割する。教育問題も子ども中心か教科中心かなど二者択一でも弁証法的統合でもなく、無数の差異、個々の経験の再構成の問題。教育の目的は道徳的人間など外部化するとそれに従属しニヒリズムとなる。それは偽の言語ゲーム。成長に向けた個々の教育経験・実践を解放すること。状況を離れていかなる目的もない。

 

33 宇宙とともに進化する人間(R.シュタイナー)  木戸 靖

 *内側の世界へ。肉体(物質、鉱物)、生命体(植物)、アストラル体(動物、感情)、自我。7年ごとの成長段階。性的成熟、自我の目覚めを経て、宇宙進化の中の課題の理解と自覚へ。生死の前後も宇宙とともに進化する人間。教育、芸術、オイリュトミー。

 

34 子どもと大人の人間学(M.J. ランゲフェルド)  伊藤 一也

 *方法としては現象学的、方向としては人間学的。子どもと大人の呼応、愛。

 

35 新しいイメージはいかに誕生するか(W. ベンヤミン)  今井 康雄

ベンヤミン・アンソロジー (河出文庫)

ベンヤミン・アンソロジー (河出文庫)

 

  *肉体と身体、肉体の身体化(習慣的世界へ)、模倣や遊び、肉体は身体の太古の層。子どもは事物を新しく再認識し、新たなイメージを生み出す。ピアジェではイメージは思考の前段階にすぎない。「隠れ遊び」、幽霊・神殿・仮面、肉体が明確な境界を持たない。『ノーライフキング』の身体的なイメージ。教育は子ども、子ども時代と出会う回路。そこは人類のイメージの宝庫。教育は世代間に不可欠な秩序。

 

36 アイデンティティとジェネラティヴィティ (E.H. エリクソン)  西平 直

 *人生選択と世代継承。幼年期(育てられる)、青年期(モラトリアム)、大人(子を育てる。愛することと働くこと、世代をつないでいく)、老年(子育て後。孫と子、自分と親)。老年期から後ろ向きに人生をたどり直す視点。自分の人生に折り合いをつける。

 

37 死の受容(E. キュブラー=ロス)  田中 毎実

 *5つの段階。行く者の成熟として、送る者の教育としての死の受容。成熟の相互性。独り立ちと1人発ち。生は死にいく過程、人生は小さな死の受容と再生のくり返し。医療体制の物象化への対抗。臨床的人間学

 

38 模倣から表象へ(H. ワロン、J. ピアジェ)  麻生 武

 *ともに発達心理学者。イメージから表象的思考の発生をめぐる議論。ピアジェは人間の認識も生物の環境適応と機能的に同一とする発生学的認識論。個体論的、生得的発達(社会性や歴史性を無視)に還元。ワロンは言語共同体の社会を前提に、表象におけるイメージと名前(言語)の結合を重視。人間の多様性や複雑性に着目し、トータルで具体的な人間把握を主張。ピアジェは人間の全体性をあえて問わない方法論的「断念」で知のフロンティアを生産的に切り開いたが…。

 

39 にせの自己と狂気(R.D. レイン)  亀山 佳明

 *科学としての精神医学批判。実存的現象学で狂気の患者も見るべき。分裂病質は母子関係、依存を介した分離の満足度による。身体的誕生、生物学的生存、実存的誕生。自己と世界の間に断層、アイデンティティと自律性が不安定。自己防衛に、外部の自己(外界につながる身体性)と内部の自己(無身体性)、にせの自己(欺瞞・虚偽、無能)と真の自己(誠実・正直、万能)に分裂。逆説的、両義的な関係、悪循環。分裂病は真の自己が突出したり、にせの自己が真の自己を殺そうとしたりする。真の自己がさらなる分裂を繰り返すこともある。自己内外の、自己他者の区別がなくなる病。※この逆が「正常」。

 

40 欲望の倫理学 (M. クライン)  椿田 貴史

 *フロイト派の児童分析、象徴的解釈。良い乳房(快感、母親との一体感)、悪い乳房(攻撃性、死の本能)、良い乳房の破壊と喪失。発話と運動の快感を通じて、象徴的な世界へ原初的昇華(罪の意識、感謝や償い)。

 

41 苦悩と無意識の精神(V.E. フランクル)  桐田 克利

 *意味への意志。ニヒリズムヒューマニズムの危険。人間の内在性(実存性)と超越性の人間学・精神療法。身体・心理・精神(意味、自由と責任)。強制収容所での価値体験、美しい日没の光景。無意識の精神性は心情・感情、反省不可能性、良心・愛・芸術。創造・体験・態度価値。苦悩する人間は充足と絶望の次元にある。人間が人生の意味を問うのではなく、人生が人間に問いかけている。未定の未来に希望がある。内在的な自我、無意識の精神性の背後・根底に、超越的汝・無意識の宗教性・意識されざる神を見出す。人間は意味への意志を持つものであり、受難し苦悩する者。

 

VI 記号・規範の人間学 

 *倫理・自由、欲望の根拠・由来。言語のトポロジー。論理の論理。

 

42 定言命法(I. カント)  宮武 昭

 *倫理的相対主義の克服。主観的な格率と客観的な法則、仮言命法定言命法。幸福を追求する自然的人間、道徳法則・理性・自由。経験的性格と英知的性格。定言命法は抑圧的イデオロギー超自我強迫神経症に結びつく。

 

43 他者の欲望(J. ラカン)  新宮 一成

 *フロイト思想の理論的精錬(心理学化現象学化に抵抗)。『トーテムとタブー』、主体の起源と欲望の対象(禁忌)。自己の起源と生存の欲望、自己言及の無力の苦悩(どこから来たか語りえない。自己根拠の消失。受け身の生)。芥川『河童』、選ぶ生、生き続ける選択。事後的な生、それ以前は無意識の生。エディプスの自覚の瞬間。受動の能動への変換、母から父への同一化、父になる「エディプス・コンプレックス」、自分を生ませた他者の欲望を自分が生む欲望へと構成する。自己の他者による認知、疎外、父の名(不在の大文字の他者=普遍者、神、イデア?)による認知。死んだ父・原父という象徴界の座、個別の生が普遍の視覚を得る場。愛や憎しみのパラノイア的関係。精神分析の倫理、対象α、転移、人間の欲望。

 

44 形式としての言語(F. ド・ソシュール)  立川 健二

 *音や文字の表現実質、意味や概念の内容実質ではなく、関係ネットワーク、形式=構造。諸科学とは独立に、内在的に言語学固有に自律的科学として成立。2つの同一性、実質的と形式的。イェルムスレウによる6層化。内容素材・内容実質・内容形式・表現形式・表現実質・表現素材。言語学記号学化、あらゆる文化現象が記号学の対象に。

 

45 倫理から論理へ(C.S. パース)  野口 良平

 *思索、記号、宇宙の理論。デカルト批判と新しい思索方法。思索とは、生きた問い-疑念-推論-信念。行為、習慣。固執(自己願望)、権威(共同体)、先験(形而上学)、科学の方法(事実との一致、相互判断。検証、追体験可能性)。記号学:記号(イコン、インデクス、シンボル)、対象、解釈項(感情、努力、論理)。論理的最終的解釈項は習慣変化へ。直接経験の流れ(媒介の働き、実在的な力、思いつき・強引な力)。演繹、帰納、仮説原理。宇宙論:科学的形而上学。準備としての現象学(感触の性質、事実、法則・習慣)と規範学(美学、倫理学、論理学)。連続主義(例:聴覚とそうでなかったもの)と偶然主義(偶然にできた習慣が法則)。

 

VII 風土の人間学・空間の人間学 

 *硬直的思考の打破。男性的から女性的?原理の優位へ。科学主義から詩的思考や夢想へ。モノローグから対話思考へ。垂直孤独時間から水平庇護空間へ。細分化から総合化へ、短期的から長期的な見方へ、微分的から積分的思考へ。

 

46 科学と詩による弁証法的生成(G. バシュラール)  渋澤 孝輔

水と夢 〈新装版〉: 物質的想像力試論 (叢書・ウニベルシタス)

水と夢 〈新装版〉: 物質的想像力試論 (叢書・ウニベルシタス)

 

  *独学者。科学哲学者&誌的評論家、アニムス&アニマ、精神と魂。詩や夢想による科学的意識の包摂。

 

47 カーニヴァル的世界感覚(M.M. バフチン)  桑野 隆

 *ラブレーにおける民衆のカーニヴァル、グロテスク、笑い。17世紀以降解体し、近代モノローグ原理へ。ドストエフスキーによる対話原理、ポリフォニー小説。

 

48 住まうこと一新しい庇護性(O.F. ボルノウ)  毛利 猛

 *ディルタイハイデガー、解釈学の現象学的展開と現象学の解釈学的展開。人間の空間性。住まうこと、人間的空間。被投性と庇護性、不安と安心、新しい庇護性。内部と外部空間、うちとそと、逸脱は故郷喪失と引きこもり。住まう、存在する。存在信頼、母の庇護。庇護性は被投性に対して発生的に事象的にも優位に立つ。

 

49 時空の多元的認識へ(F. ブローデル)  福井 憲彦

〈普及版〉 地中海 I 〔環境の役割〕 (〈普及版〉 地中海(全5分冊))

〈普及版〉 地中海 I 〔環境の役割〕 (〈普及版〉 地中海(全5分冊))

 

  *断片化・細分化、タコツボ化から人間科学の全体化へ。歴史の3層、多元的時間。長期的環境(地理、生態、地中海)、中期的社会的流れ(海流)、短期的個別事象・人物(波)。学際、国際的共同研究を志向。特長:グローバル、数世紀にわたる視野。諸領域の関連構造や地域差異を踏まえた骨組み。環境生態問題への視点。数量歴史学地下経済(人口・自然など諸条件)・市場経済(交換ゲーム)・世界経済(資本主義)の経済認識で近代生産力中心主義史観を脱中心化。多元的要素が織り成され歴史を作りあげてきたのかの叙述。

 

VIII 社会と文化の人間学 

 *近代社会、市民社会における人間。自由意志、良心、人格。人と人の間。社会と個人。人間の合理性と非合理性。社会的歴史的存在としての人間。啓蒙理性は正しいか?

 

50 孤独と共同体の対立と両立(J.-J. ルソー)  作田 啓一

 *社会契約における全体と個人。ルソーの自由意志はカントの人格へ。祭の民衆は主体であると同意に客体。全体は一般意志・主権者、各個人は個人意志・被治者。社会状態での内面と外観の分離。自己愛と自尊心。社会の孤独者の自然の中での幸福、理想社会の市民の共同の幸福。『エミール』は市民になるためのではなく、人間になるための教育の書。ルソーは近代(啓蒙主義)と超近代(ロマン主義)の思想。

 

51 共同体と個(G.W.F. ヘーゲル)  長谷川 宏

法哲学講義

法哲学講義

 

  *共同体精神、人倫は自由の理念、生きた善。「法哲学」とは正しい生き方を問う学問。社会集団、社会生活の中に具体的な自由や善がある。共同体と個人の交流、共同体精神の成熟度、教育・自己形成、近代社会の弁証法。家族、市民社会、国家。

 

52 〈人-間〉存在の倫理学(和辻哲郎)  米谷 匡史

人間の学としての倫理学 (岩波文庫)

人間の学としての倫理学 (岩波文庫)

 

  *近代批判の倫理学。主客図式を超え、間主体的な行為に照準。人と人の間。ハイデガーと初期マルクスを媒介に、歴史的社会的な人間存在論への転回。相互行為と言語表現の循環。せめぎあい、社会的正義へと向かう、全体と個の相互否定、自他不二の空の弁証法。近代世界の危機を乗り越える近代の超克、日本の世界史的意義と共振。和辻倫理学の解体と再編。

 

53 沸騰する社会と宗教(E. デュルケム、M. モース)  岡崎 宏樹

 *デュルケムの「社会と神」。集合的沸騰の中で、集合的理想や宗教が生まれる。宗教は社会現象であり、社会が宗教現象。人間は個人性と社会性の二元性をもつが、社会性が優位に立つ社会学的還元主義。ジラール(共同体の悪と暴力)、バタイユ(溶解体験と拡大体験)、ベルクソン(閉じた/開いた社会)の視点。モースの『贈与論』も同じ理論的問題に直面。

 

54 合理と非合理(M. ヴェーバー)  厚東 洋輔

 *人類は呪術から合理化へ。死の問題。祟り、浄め。合理化としての宗教。全能で正しい神と現世の矛盾、神義論。さらなる合理化としての科学。世界の機械化、無意味化。新たな二元論、無意味世界vs神秘体験。神秘への通路、人格と自我(ロマン主義、天才・超人)。近代国家、ネーション、ナショナリズム、永遠、死にがい。ナショナリズム後の新たな宗教、生きている救世主(導師)。合理化と非合理的なもの、光と影。合理化の果ては非合理の濃縮、いや知性主義の故郷。

 

55 歴史的自己省察(W. ディルタイ)  塚本 正明

 *歴史的存在としての生、現実。状況内自覚存在。水平軸的広がり・拡散(文化・精神、共同体、空間・時間、歴史)の中で垂直軸的な集中、個的現存が可能となる歴史的・構造的実存。歴史に造られつつ歴史を造るもの。人間は歴史の中での体験者・表現者・理解者、トータルな全人。

 

56 啓蒙の弁証法(T.W. アドルノ、E. フロム)  徳永 恂

啓蒙の弁証法―哲学的断想 (岩波文庫)

啓蒙の弁証法―哲学的断想 (岩波文庫)

 

  *ともにフランクフルト学派。『啓蒙の弁証法』:神話と啓蒙、野蛮と文明。オデュッセウスの物語、神話から啓蒙へ、成熟と自立の神話。同時に、自然と人間を支配する自我へと転化し、啓蒙は神話へと退化する。技術による外的自然、道徳による内的自然(肉体、欲望)の支配。内外の目的の喪失(ナチズムもその1つ)。内外の自然を支配することで確立された主体の哲学史の批判。フロムの『自由からの逃走』は、近代人の自由・主体性からの逃走、啓蒙から神話への退行。サゾマゾ・権威主義的批判はナチスム、アメリ大衆社会批判。

 

IX 歴史の人間学 

 *歴史を通しての人間学、というより、近代のアポリア。近代純粋理性批判。近代科学理性の物神化。近代の権力と主体。主観的意識の誕生。メディアの变容。

 

57 感情移入の歴史学(J.G. ヘルダー)  宮武 昭

 *カントの純粋理性・超越論的主観は世界を超え出て神の高みから理念的に世界を構成し、科学的認識以外の認識(色や硬さなど質感)を排除し、それらを経験的・二次的なものとした。アウグスティヌス以来の救済史観やヴォルテール進歩史観も同様。啓蒙理性がそぎ落としたものの復権。個別性、感情移入、複数の小文字の歴史。比較ではなく多元論。

 

58 自由な人びとの構成する生産共同体(K.H. マルクス)  吉沢 英成

ドイツ・イデオロギー 新編輯版 (岩波文庫)

ドイツ・イデオロギー 新編輯版 (岩波文庫)

 

  *共産主義は共同体(コンミューン)主義。分業自体ではなく、自然成長的自然発生的分業が悪。意識的計画的統制のもとでの分業。アダム・スミスは分業と神の見えざる手(市場機能)。マルクスはグローバル・コンミューンを人間の頭脳(科学・技術)で意識的な計画統制。経済はもちろん、言語の自然成長性も批判し科学的に統制し最適の言語をつくるべし(『ドイツ・イデオロギー』)。科学的社会主義、マテリアリズム。存在は意識を規定する。すべては自然科学として解明できる。思想・観念(イデオロギー)は現実を変えない。『経済学批判』は科学となりきっていない経済学のイデオロギー部分を批判。商品の物神性。商品交換は共同体の異物。商品交換は共同体関係をゆがめ、売買契約を隠蔽した支配・被支配の関係とする。蒙昧な意識はすべて資本主義社会のイデオロギー。だが、果たして商品交換は共同体の異物か。

 

59 主体の転位(M. フーコー)  大澤 真幸

 *考古学とは、事物や言説がいかなる無意識の規則により配置されてきたかの歴史の探究。狂気と理性の区別、知の台座の変遷(類似→表象→人間)。それを規定する権力の系譜学。古典主義時代から近代の権力へ。権力の抽象化・不可視化(パノプティコン化)と、身体のディシプリンによる主体化(=従属化)。西欧の伝統は性の科学。それを可能にする告白という言語行為(語る身体と語られる主語)による個人の主体化。ヘブライズムの牧人権力。そうではないギリシア・ローマに脱出路を探る。キリスト教と古代の性道徳は内容ではなく、論理が異なる。自由な市民・人間・支配者であるための自己への配慮、心の平安。告白や他者を含めた自己吟味は牧人権力へ接近。脱出路である自己配慮(自由、自己統治)は主体化=従属化する権力過程の中に内在している。※あれかこれかではない。同じ自己をいかに育てるかにかかっている。

 

60 意識以前の人間(J. ジャイネ)  高橋 由典 ジェインズ,ジュリアン

 *古代人は神々の声の幻聴により、主観的意識のない意思決定をしていた。二分心、神や死者の声を聴く心と現実の言語を聞く心。『イーリアス』に人間の内面はない。死者への食事供与、メソポタミアの偶像の大きな目が状況証拠。大脳の左右半球の機能、分離脳患者の実験。神は農業社会の出現による共同体の精神。紀元前1千年ごろ、アッシリアによって共同体が世界帝国となり、他人の内面をのぞき込む必要から、初めて主観的意識が発生した。神の声を聞く心は巫女・シャーマン、詩人、歌につながっている。

 

61 メディアと身体技術の变容(M. マクルーハン)  吉見 俊哉

 *声、文字・印刷物、電気メディア。聴覚から線形視覚、さらに触覚的へ。時空間の超越。メディアは二者択一的な移行(ポケベル→ケータイ)ばかりではなく、重層的なプロセス(読書、テレビ、ラジオ)でもある。

 

人名索引

 

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ヨーロッパ思考について。その特長。

・メタ(超越)思想、メタ-メタ思想 自己言及(パラドックス) ギリシア起源?

・二分法(水平分割)や二項対立(二次元化)、さらに上下分割や垂直統合(三次元化) 主・客、自・他、静止・運動、静態・動態(生成、過程)、意識/無意識、構造主義ポスト構造主義ヘーゲル弁証法

・理性、霊魂、神の通底 見えないもの、形而上学 ⇄見えるもの



「ヨーロッパの危機、近代の危機」とは何か

・19世紀末~第2次世界大戦 ヨーロッパの危機、近代の危機

 ニーチェ、シュペングラー、ベルクソンウェーバーフロイトフッサールハイデガー、ジェイムズ、神秘学、ナチズム

 19世紀近代(啓蒙主義、新教主義、科学主義、合理主義、実証主義進歩主義、ヨーロッパ主義)の終焉、挫折

・派生→日本の危機:近代の超克、世界史的意義

 西欧対東洋の図式 明治以来の相克 「近代化=西欧化」の終わり?

 版図や民族の再設定?

 

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ラカン ことば(観念)の功罪 分裂症はことば(観念・精神)の病

    レイン 分裂症から見た正常

 

人間の世界:

言語の多義・多元・多層性、解釈・意味創造の無限性。

数学論理的物質的にも、世界の無限分割性。

 錯覚・エラーも1つの解釈(機械、AIには原理的にできない)

 世界と言語(観念・精神)の齟齬。そもそも対応していない。言語は任意、シンボルにすぎない。

 同じ事も意味が異なる。同じ生き死ぬ人生も人により違う。毎日のそうじ。

 

世界は捉え難い(ただし、カオスやランダムでもない)。

 世界は一義的定義可能と固定することが誤謬。

  社会・思想的には「~主義」、個人は精神症。

  一時的暫定的には可能だし理論的に有用。 仮説、プラグマティズム

  微分積分的断定、うわさ

 真相は過程的、プロセス 相互的、相補的、相克的、総合的。 生成

  ただし、解釈不可能で理論的には使いにくい。

  私たちはあいまいさの中で生きている。すべてグレー、あれかこれかではない。正解はない(複数ありうるし、永久ではないし)。絶対はないし、神はいないし。ただし、カオスやランダムでもない。